第十二章 メルビス地底 9
早川達は、少しでも体力を回復しようと、その場に腰を下ろした。すると、葛西が、残った三人を指さして、
「紹介しておこう。左側にいるのが、第三部隊指揮官補佐の寺田 真、真ん中にいるのが我が第三部隊の紅一点、林 リン、そして右側にいるのが我が部隊一の怪力、北川 銀河だ。防衛軍は多国籍軍だが、基本的には同じ国籍同士で一つの部隊を構成していることが多い。」
寺田、林、北川の三人は軽く会釈した。皆、20代くらいだろうか。寺田は大きくもなく小さくもない、特に特徴のない容姿をしていた。一方、部隊一の怪力と評された北川は慎重こそ小柄ではあったが、戦闘スーツの上からでも筋肉の厚みが見て取れた。
一方で紅一点の林はとても兵士とは思えないスラッと細身で女性としては長身で165センチくらいはあるだろうか。長い髪は綺麗に結われており、思わず早川と安藤が見惚れていると、
「ちょっと、ジロジロ見ていやらしいわね!」
と、友香が怒ったように大きな声で言った。早川は慌てて視線を逸らしたが、安藤の方は、
「林リンという事はリンリンちゃんだな!よろしく!」
と、他の兵士達には見向きもしないで林に手を差し出した。
「勘違いしないでちょうだい!私たちはあなた達を助けに来ただけ。いわば任務でここへ呼ばれたの。馴れ馴れしくしないでくれる?それに私は強い男が好みなの。と言っても私より強い男なんて滅多にいないけどね。」
友香と真由は安藤を見ながらクスクスと笑っている。安藤は顔を真っ赤にしながら、
「女だからって調子に乗るんじゃねぇ!それに俺が救援を頼んだわけじゃねぇし、別に助けなんてなくても、なんとかなったんだよ!」
「あら、口だけは一人前のようね。ただ、私が嫌と言っても国からの指令で来ている以上は責任を持ってあなた方を護衛し、地球へ連れ帰るわ。だから、大人しくしていてちょうだいね!」
「くっ!言わせておけば!」
と、葛西が手で制して、
「おいおい、リン。聞き捨てならねえな。私より強い男は滅多にいねぇだと?ここにいるじゃねぇか!」
「上官だからって威張らないでよね。くじ引きで決めただけで実力、キャリア共に第三部隊のメンバーは全員同等のレベルなはずよ?」
「なんだと!それが上官に向かって・・・」
すると、それまで黙って聞いていた佐々木が笑いながら、
「まあまあ、落ち着きなはれ!せっかくの休息が口喧嘩で台無しになりますがな!どっちが強いとかどうでもええですやろ?それにしてもリンはんは綺麗な顔していう事はキツいでんなぁ・・・」
「下品な関西弁で、気安くリンはんとか呼ばないで欲しいわ!」
「これまたキツいお言葉で・・・」
そのまま林は少し離れた場所まで歩いていくと壁を背にもたれかかって、目を閉じた。怒りの収まらない安藤を佐々木が必死でなだめていた。
そして、もう一人怒りの収まらない葛西を、こちらは寺田と北川がなだめていた。
「なにやら騒がしい連中だな。」
「そ、そうですね・・・」
飽きれた様子でウォーレンが呟き、順平もそれに同意するように苦笑いを浮かべていた。
「地球人のこういう所はワシには理解出来ん。これは争っておるのか?それとも楽しんでおるのか?」
不思議そうにサジが早川たちに訪ねた。
「い、いえ、多分その両方だと思いますよ・・・」
早川が申し訳なさそうにそう答えると、サジは、
「ある意味羨ましい光景じゃよ。ワシらホルキンス人はあまり感情をぶつけ合う事が無いんでのぅ。笑ういう感覚も持ち合わせておらん。悲しみというものは理解しておるが、そういった感情をどう表現すれば良いかもわからんのじゃ・・・」
そう言えば、笑うというのは地球上の生物の中でもヒトだけだと言っていた気がする。改めて、違う生き物だと、感情表現なんかも違うのだなと早川は思った。
葛西は落ち着きを取り戻したらしく、周囲に目を配り、もしノレッセが襲ってきてもすぐ対処できるように四人で陣形を作りそれぞれの持ち場についた。
「あれで指揮官が務まるのかねぇ?それにあの高飛車な女。これなら、まだ俺たちだけでウロウロしてた方がマシだったんじゃねぇのか?」
「お兄ちゃん!いい加減にしてよ!」
まだブツブツと文句を言う安藤に、さすがに腹を立てた真由が一喝する。普段は大人しく控えめな真由の怒鳴り声には、早川も驚いた。安藤も真由の怒鳴り声に、安藤もそれ以上何も言わなくなった。
それから15分ほどすると葛西がこっちに歩いて来て、
「そろそろ出発するとしようか。四方を俺たちで囲うように進む。四人の距離は広めに取るから、あんたたちはその円の中を歩いてくれたらかまわねぇ。もしかしたら視界から消える事もあるかもしれねぇが、気にせず前進してくれ。必ず俺たちで死守するから安心してくれ!」
そう言うと、四方向に四人は散らばっていった。前には葛西と林、後方に寺田と北川がそれぞれの持ち場のようだ。早川たちはとりあえず言われた通りその四人の中を歩き始めた。




