第十二章 メルビス地底 8
「あっ!」
早川は思わず声を上げた。早川たちはノレッセ達だと身構え、覚悟を決めていたのだが、目の前に姿を現したのは、おそらく人間、それも地球人に見えたからだった。それでも、ウォーレンは戦闘態勢を解かず身構えたまま、
「油断するな!知っている奴らか?」
と、大声で早川たちに問いかける。目の前には10人くらいはいるだろうか。その内の一人が両手を上げながら、
「おっと、俺たちに攻撃しないでくれよ!わざわざ地球から遥々やってきたというのに、助けるはずの連中からやられたなんて事になれば、死んでも死にきれねぇ。」
そう言って、にやりと微笑んだ。そして、さらに続けた。
「俺たちは地球から来た援軍部隊。世界各国から集められた地球防衛軍とでも言っておこうか。そっちにいるのが順平君かな?」
「は、はい。」
「先に我々の仲間八人が来ていると思うが、見当たらねぇみてぇだが・・・」
順平は逸れたいきさつなどを簡単に説明した。
「なんだ、あいつらだらしがないな・・・。たしかノレッセとかいう連中があんたたちを狙って追撃しているという話だが、俺たちが来たからにはもう安心だ。この後、次々にこの星に援軍が到着する段取りになっている。」
と、早川が疑問を投げかけた。
「ここに来る途中でノレッセの連中と遭遇しなかったんですか?それにどうやってここまで・・・」
「あんたが早川君か?時代が進んでからの地球の技術力をほとんど知らないだろうが、あんたたちをレーダーで捕捉して最短ルートでここまでやってきたのさ。そう言えば、レーダーにそれなりのスピードで移動する集団も捉えていたな。あれがノレッセとか言うやつらだな。俺たちの任務は、まずあんた達の安全の確保だ。ノレッセ達とやりあうのは、この後に到着予定の部隊。もっとも、俺たちだけでも十分返り討ちにする自信はあるんだが、なにしろ上からの命令には背けないんでな。」
そう言うと、男は大声で笑って見せた。
「と、とにかくこれで助かったんですね・・・」
早川は一気に緊張の糸が切れ、その場に崩れ落ちた。
「おっと、まだ安心するのは早ぇぞ。見ての通り、俺たちは最低限の装備しか備えていないし、八人しかいねぇ。見た所、体力の限界そうなお方もいらっしゃるようだし、ロケットまでは結構距離もある。すまねぇが、若い連中は、自力でロケットまで歩いてもらわねぇといけねぇ。四人を残して、たしか、青柳教授、倉本さんだったかな?その二人は残りの四人でロケットまで俺たちの乗ってきた車で運び込む。」
「どうゆうことですか?」
「車に乗れるのは八人。となると全員は無理だ。かと言って、ここに残る人数を減らせば、ノレッセとやらが襲ってきた時に応戦するには戦力不足になっちまう。そこで、護衛も兼ねて四人が車で二人をロケットへ誘導。残った部隊であんた達を護衛しようという訳だ。・・・そう言えば、まだ名乗っていなかったな。俺はこの第3部隊の指揮官、葛西 義人だ。俺もあんたたちと共に行動することになる。よろしくな!」
葛西と名乗る男、年齢は見た所20代後半。背は高く、一見すると痩せているように見えるが、よく見ると肩幅も広く、腕の筋肉もかなり鍛え上げられていることが見てわかった。葛西は他の四人に指示すると、青柳と倉本を両サイドから挟み込む形で、誘導し始めた。青柳は振り返りながら、
「皆、気を付けてな。私も最後まで行動を共にしたかったが、一緒にいてはお荷物になるばかり・・・すまない。」
「教授こそ、気を付けて下さい!」
他にも色々言おうと早川は言葉を探したが、それ以上の言葉が見当たらなかった。早川たちは青柳の姿が見えなくなるまで見送ってから、
「で、これからどうするんだ?どうやら我々の知らないルートがあるようだが・・・」
と、ウォーレンが疑問をぶつけた。すると葛西は、
「その通り。少し洞窟に穴を開けちまったがロケットまでは最短ルートだ。あの四人がロケットに戻った後、他の連中をロケットまで誘導するために再び動いてくれる段取りになっているから、あんたたちは自分たちの事だけを心配すればいい。ホルキンス人にも危害が及ばぬよう、後続部隊が各方面に配備される予定だ。」
「後続部隊はいつごろ到着するんですか?」
順平が訪ねる。
「今頃到着していると思う。最終的には地球人だけで200人程の人数がこの星に降り立つ事になる。同時に近隣の星々にも連絡を取っているから、そっちも合わせると相当の数になるだろう。それまでなんとか持ち堪えなきゃいけねぇが、俺がいる限りもう安心だ。」
かなり自信家のようだったが、それでもその自信が早川たちを少しでも安心させたこともまた事実だった。
「さて、少しお疲れの様子みたいだから、少し休んでから出発するか?」
そう言って早川たちを見回した。すると、安藤が、
「そうだな。ちょっと安心したら一気に疲れが噴出した見てぇだ。少し休ませてもらえると有難ぇ!」
思わず、友香が笑い声を上げた。
「なんかおかしい事でも言ったか?俺・・・」
安藤が首をかしげる。
「だって、葛西さんと安藤さん、喋り方が同じ・・・もしかして遠い血縁関係にあるのかもしれないわね?」
「こんな男と俺を一種にするんじゃねぇ!」
安藤が息巻くと、葛西も、
「おいおい、この程度で疲れたとか言ってる奴と俺が血縁関係とかありえねぇだろう?」
再び友香が笑い声を上げた。つられて早川や真由も笑い出す。安心したせいもあるのだろうか、久しぶりに心から笑ったような気がした。結局、安藤の提案をウォーレン達も聞き入れ、しばらく休憩してから出発することになった。




