第十二章 メルビス地底 7
道は更に少し下っているようだった。壁面には時々水晶のような透明の鉱石が輝いていて、友香と真由はその美しさに見惚れていた。
「これって水晶の一種なのかしら?こんなに大きなものもあるわよ。磨いていないのにこの透明感は凄いわね。」
「ほんと、これで一体いくつ指輪が作れるでしょ。」
そんな会話を横目に、安藤は、
「なあ、早川。これちょっとだけ地球に持ち帰ったら駄目かな?かなり高額で売れそうだぜ!」
「駄目ですよ・・・安藤さん。」
「でも、もしかするとダイヤモンドより高価かもしれねえぜ!」
それを聞いていたサジが、
「持ち帰れるもんなら持ち帰るが良い。但し、持ち帰れるんであればの話じゃ。」
「ほ、本当にいいのか?」
安藤は近くあった大きめの石で大きな透明の塊を叩き割ろうと力いっぱい叩いた。しかし、ゴーンと洞窟内に鈍い反響音が鳴り響くだけで、傷一つ透明の鉱石にはついていなかった。
「く、くそっ!」
安藤は必死に何度も何度も叩き続けたが、持っていた石の方が砕けてしまった。
「やめなさいよ、お兄ちゃん!」
珍しくサジが笑いながら、
「絶対に無理じゃ。その鉱石、アチルフィアはこの周辺の惑星の中でも一番固いとされておる。長い年月・・・そう一万年水を流し続けて、1ミリも削れない代物じゃ。そして、未だアチルフィアを砕く方法は見つかっておらん。もし、砕ける事が出来れば、おまえさんの言う通りかなり高額な取引が出来るんじゃがな。」
「ちくしょう。こんなにいっぱいあるんだから、少しくらいはと思ったが、手が傷だらけになっちまったじゃねえか。先に言ってくれよ・・・」
よく見ると安藤の手には血が滲んでいた。
「ふぁあっはっは。欲を出すからじゃ。そんなことよりのんびりしとる暇はないぞ。」
まだ諦めきれないのか、安藤はアチルフィアを何度も見返しながら歩いていた。しかし、佐々木も安藤とは別の意味で興味があったようで、何度も手でアチルフィアを触っては首をかしげていた。
「こないに固い鉱石が存在したなんて宇宙はまだまだ広いですな。時間があればなんとか砕きたいんやけど、今はそれどころやないさかい、今回は諦めますわ!必ずこの一件が片付いたらこの星を改めて散策したいですな。」
佐々木とは目的は違えど、早川自身も別な形でゆっくりとこの星で過ごしたいと思った。
やがて、周囲の風景はこれまでとは一変して殺風景な茶褐色一色となった。柔らかそうなイメージだったが触れてみるとこちらも固く、ゴツゴツしていた。するとサジが、
「この地層からすると、出口がありそうじゃな。この茶褐色の地層はこの星では地上に近い場所にのみ存在するものなんじゃ。かなり下ってきたから、そろそろ地上との高低差も無いじゃろ。」
それを聞いて、少し希望が見えたように誰もが思った。しかし、その希望は長く続かなかった。最後尾を歩く順平が声を挙げる。
「だ、誰か・・・いや、複数の足音が聞こえます!」
「ほんまや。少なくとも五人以上の足音や。」
佐々木も耳を澄ませて呟いた。
「シーバ達じゃないんですか?」
早川が訪ねる。
「いや、その可能性は低いじゃろ。後ろからシーバ達が来るとは考えにくい。それほど分かれ道があったわけでもあるまい。」
「倉本さんは教授を連れて先に進むんだ!残りは敵に備えるんだ!」
ウォーレンが叫び、順平の隣まで駆けつけた。倉本は青柳と言われた通り先に進む。早川と友香は順平とウォーレンのすぐ後ろで身構えた。
佐々木も前に出る。安藤と真由はサジを守るように最後尾で身構えた。
「くそっ!合流してなんとか逃げ延びれればと考えたが、どうやら奴らの機動力は想像以上だったようだ。」
舌打ちしながらも、一歩ずつ慎重に前に進むウォーレン。並ぶように順平も歩調を合わせ身構える。佐々木は壁を背に身を潜めるように歩いていた。
やがて足音ははっきりと聞こえ、前方に複数の人影が姿を現した。




