第十二章 メルビス地底 6
先頭を速いペースで歩くウォーレン。その後ろをサジが歩く。青柳と倉本も疲労を押し殺し必死に着いてゆく。佐々木は見た目には疲労を感じさせない。意外とタフなのだなと早川は思った。
順平はいつものように最後尾を警戒しながら歩く。安藤も後ろの方を歩いていた。友香と真由は並んで何かを離しながら歩いていた。早川は、全員の状況を確認しながら集団の真ん中辺りにいた。
道は左右にくねりながらもしばらく一本道が続いた。道幅は徐々に狭まり、いつしかすれ違うのがやっとというくらい細くなっていた。両サイドの壁は乳白色に輝き、その光が細い道を照らし、幻想的な光景だった。
細い一本道を向けると、道はT字に左右に分かれていた。ウォーレンは立ち止りどちらに進むべきかを考えている様子だったが、サジが迷わず左を指さし、
「シーバと合流するのであれば、方角的にはこっちじゃろ。」
「たしかによほど複雑な構造ではない限り左方向で間違いなさそうだ。」
ウォーレンもその意見に賛同し、再び歩き始めた。左に曲がると壁面は乳白色から、青色へと変化した。
「こんな色の壁は地球ではお目にかかれまへんで!」
佐々木が興奮して壁をまじまじと見つめている。その青さはどちらかというと水色に近い明るい青だった。友香と真由もその珍しい光景に目を奪われていた。
一方で青柳と倉本は壁を見ている元気も無さそうだ。肩で息をしている所を見るとかなりスタミナを消耗しているようだったが、休めそうな場所は無く、今は先を急ぐしかなく、早川もかける言葉が見当たらなかった。
道はさっきより広くなり、足元も平らで歩きやすかった。幅は5メートルくらいはありそうだ。時折天井から水滴がしたたり落ちてくる。その水滴はかなり冷たく、思わず声をあげそうになるのを必死にこらえた。
「首から背中に入るとかなり心臓に悪い。それにしてもこの水滴なんとかならないか?」
安藤が上を見上げながら呟いた。
「本当に冷たいわね。痛いくらいだわ。」
友香は手のひらを前に突き出して、落ちてくる水滴を受け止めて、そう言うと、続けて、
「もしすると0℃以下かもしれないわ。手に平で霜が出来たわ。」
するとそれを聞いていた佐々木が同じように手のひらを突き出すが思うように水滴が手のひらに落ちずイライラした様子で、
「友香ちゃん、キャッチするん上手ですな。俺にはとても歩きながら水滴を手のひらで受けるなんて・・・あっ!出来ましたわ!ほんまや、これは0℃以下や。地球と違って凍ることがないんやろか・・・」
不思議そうに手のひらを見つめながら、相変わらずのテンションで何度も水滴と戯れていた。
「元気ですよね・・・佐々木さん・・・」
「本当に疲れている様子を感じさせない男だな。」
早川と安藤は呆れつつも感心しながら佐々木を見ていた。しばらく歩くと水滴は落ちてこなくなり、佐々木だけは残念そうに見えたが、早川達は肌に痛みを感じるほどの水滴地獄を抜け出して内心はほっとしていた。




