第十二章 メルビス地底 2
緩やかに右に曲がっているように見えるが、ほとんど真っ直ぐな道が随分よ続いた後、ようやく平坦な道となり、その先にぽっかりと洞窟の入り口が開いていた。するとサジが立ち止って、皆に話し始めた。
「あれがメルビス地底への入り口のようじゃ。メルビス地底の地図は残念ながらデータベースを検索しても見当たらんかった。しかし、何千年か昔、このメルビス地底では珍しい鉱石、メルビス鉱石が採掘出来たそうなんじゃ。元々は自然に出来た洞窟じゃが、採掘のためにホルキンス人が手を加えた部分もあると言われておる。じゃが、その後メルビス鉱石に変わるキリカ鉱石の発見によって、ここでの採掘は行われなくなったと言われておる。キリカ鉱石は簡単に採掘出来る上に加工も容易く、現在も我々が頻繁に利用しておるからのぅ。どちらにせよ、この先は複雑に入り組んでおるじゃろうから、今まで以上に注意が必要じゃ。」
その話を聞き終えると、今度はウォーレンが、
「どうやら、最初から選択肢を迫られるようだ。」
と、入り口の奥に目を凝らしながら呟いた。早川たちも入り口の前まで歩いてその意味が理解できた。入り口を入るとすぐに洞窟内部の道は左右に分かれていた。
「二手に分かれるのは危険ですね。今は出来るだけ一緒に行動する方が利口だと思いますが・・・」
順平がそう提案する。しばらく皆考え込んでいたが、最初にウォーレンが口を開いた。
「私も同じ意見だ。問題はどちらに進むべきか・・・どちらも真っ直ぐに奥まで続いていて先は見渡せない。耳を澄ませてみたが、どこかで水が流れるような音が微かに聞こえるが、どの方向から聞こえてくるのかまではわからない。」
すると佐々木が、
「水の音が聞こえるのは右ですわ。耳だけは人一倍ええんで間違いおまへん。問題は水の聞こえる方向に進むんがええんか、逆に水の音が聞こえへん方に進むんかっちゅうことですけど・・・」
「たしかに、君の言う通り、水の音が聞こえる方向に進むのが正しいかは別問題だ。ここはホルキンス人の考えを聞きたいのだが・・・」
ウォーレンがサジに意見を求めた。サジは少し考えてから、
「残念じゃが、ワシにもわからん。ここは勘に頼るしかなかろう。一度進めば後戻りは出来ん。危険な選択ではあるがやむを得ん。」
しばらくの間、沈黙が続いた。引き返せないとなれば、少しでも可能性のある方を選びたいのだが、情報が何一つないのだ。いくら考えても答えは出ない。と、なればさっさと決めてしまった方が良いと考えた早川は、
「理由は見つかりませんが、いくら考えても答えがわからないのであれば、水の聞こえた方へ進みましょう。」
すると、ウォーレンは、
「では、これまで通り私が先頭を歩く。皆、ついて来てくれ。」
それだけ言うとさっさと歩き出した。
「ここは決断力が大事よ。やるじゃない陸!たまには男らしい所を魅せるじゃない。」
そう言って、肩をポンと叩いた。他の者たちも頷いていた。
「早川はん、俺も右やと思いますわ。根拠はありまへんけど、方向だけを考えたら左は、キャンプから離れていく気がしますし、なんか重い空気が漂うてるっちゅうか・・・まあ、とにかく誰かが言いださなあかんことを、よう言うてくれましたわ。おおきに。」
早川自身、言ったものの不安だらけだった。友香や佐々木がそう言ってくれて少し気が楽にはなったものの、やはりこれだけの人の命がかかっているのだと思うと、やはり左では?という思いも交錯してしまう。ただ、行き止まりでなければどちらの道であっても、なんとかなるだろうとは思う。とにかく、今は自分を信じ先に進む事に専念することに務めた。
道幅はさっきまで歩いてきた亀裂の道と変わりなく幅5メートルくらいだろうか。しかし、ヒカリゴケのような植物の光り方はこちらの方が明るく、地上のように周囲は見渡せた。
壁面にはゴツゴツとした岩のような鉱石が天井まで覆っていた。ウォーレンを先頭に、その後ろは二人ずつ並ぶ形で歩いた。最後尾は順平とサジが務めた。




