第十一章 VS 29
部屋に入ると、まずサジに、
「ご馳走様でした。」
と、告げると、まだそれほど時間は経っていなかったが、もう一度竹下と牧野の事を聞いた。しかし、サジは首を横に振るだけだった。
「俺はちょっと外へ出て探索してきますわ!」
佐々木はそれだけ言い残すと部屋を後にした。
「相変わらず好奇心旺盛ね。佐々木さんは。」
友香が笑いながら佐々木を見送った。しばらくの間早川たちはモニター画面を見ていたが、安藤が少し休みたいと仮眠を取りに行った。ウォーレンと順平はどうやら食事をするようで、食堂へ向かうとサジに告げた。
「お前さんたちは休んでおかなくて良いのか?」
残った早川たちにモニター画面を見つめたままサジが言う。
「疲れているんですが、とても眠れそうもありません。」
友香と真由も同じ意見だった。
「無理もなかろう。じゃが、ここも確実に確実に安全とは言い難い。調べてみたが地底へとつながる道は閉ざされておった。つまり、攻め込まれると本来は地底へと避難するんじゃが、それが出来ん。門は四方にあるから、囲まれん限り逃げ道は残されておるが、それでも逃げ切れるかはなんとも言えん。このまま地球からの援軍が先に到着してノレッセの連中を捕えてくれることを祈るより他ない。」
「それなんですが、地球からの援軍との交信はやはり出来ませんか?」
「それは、ここに着いてすぐに順平とやらが、ワシに頼んで一緒に試みたが、駄目じゃった。地球の交信技術では高速移動中は電波を掴みにくいのかもしれんし、傍受されぬよう通信をきっておる可能性もある。」
「そうですか。では順平さんと一緒に来た兵士とも連絡はつきませんか?」
「それも試みた。しかし、繋がらん。奴らは自ら電波を切っている可能性が高い。決してやられてしまったんではなかろう。ただ、ノレッセの方が数は多いじゃろうから、迂闊に手は出せんはずじゃ。どこかで身をひそめてチャンスを窺っているのかもしれん。」
たしかに兵士の人数は八人しかいない。それに対してノレッセの援軍がどのくらいいるのか想像もつかない。武器などの戦力も未知数なのだ。相手の戦力がわからないまま戦うのは無謀としか言えない。早川たちが見た限り彼らは無謀な行動は取らないとだろうと思った。
真由と友香はテーブルの席について、なにやら話し合っていた。早川は、サジの隣に腰を下ろすと、一度背伸びをして、再び4つのモニターを交互に見た。今のところ動きはない。
モニターと睨み合いながら10分ほど過ぎただろうか。順平とウォーレンが食事を終えたのか、再び部屋に入ってきた。
二人はサジに礼を言うと、異常が無いか確認した後、友香たちのいるテーブルの方へ歩いていき、腰かけた。順平は無線機を取り出して確認している。ウォーレンは目を閉じたまま何か考え事をしているようだった。
佐々木はまだ地上で探索しているのだろうか。戻ってきた気配は感じられなかった。と、突然サイレンに似た音が部屋中に鳴り響く。
その瞬間、テーブルに居た四人は立ち上がる。
「どうした!ノレッセか!」
ウォーレンが叫ぶ。サジはモニターを見ながら、忙しなくボタンを操作している。
「まだわからん。たしかにセンサーは何かを捉えたようじゃがモニターには何も映っておらん。」
順平とウォーレンが近づいてきて、モニターを注視する。早川も必死で目を凝らした。
「おかしい。どの方向にも何も映っていない。故障って事は考えられませんか?」
順平がサジに聞いた。
「ワシもここを使うのは初めてじゃ。長い間放置されておったから故障している可能性も否定は出来ん。とにかく監視を続けるほか無かろう。」
友香と真由も加わり六人でモニターを凝視した。かなり鮮明にモニターは各方面を映し出していた。手元で操作することによって、各カメラはかなりの角度まで見る事が出来た。もちろん完全に死角が無いわけではないとサジは言う。
しかし、早川たちはこの建物に入り、このモニターを見るまではカメラが設置されている事さえ気づかなかったのだ。それに気づいたとでも言うのだろうか。一気に周囲は緊張に包まれた。
やがて、安藤達も部屋へ飛び込んできた。その中には佐々木の姿もあった。
「ノレッセでっか!?それとも他の連中でっか?」
佐々木は息が上がっている。きっと全力で戻ってきたのだろう。友香が、状況を佐々木達に説明してくれた。




