第十一章 VS 28
突き当りに来ると、まず左側を覗き込んだ。かなり奥へと通路は伸びており、左右にいくつも扉があった。きっと、人数分の部屋はあるだろう。
今度は右側を見ると、こちらは数メートルしか通路は無く、その先に扉があった。早川たちが扉の前に立つと、ここではセンサーに触れなくても扉が開いた。
中は食堂のようにテーブルや椅子が並べられており、その奥にはカウンターと厨房のようなものが見えたが、今は使っていないので人の姿は見当たらなかったが、その代わりにロボットが4体、忙しなく床掃除をしていた。
カウンターの隣には扉があり、文字は読めなかったが、多分その先に食料庫があるのだろうと、早川たちは奥へ進んだ。
ロボットたちは早川たちには目もくれず、黙々と作業をしていた。
「こいつらは調理は出来ないのか?」
安藤がロボットを見て言う。すると佐々木が、
「さすがに調理出来るだけのロボットを作る技術はないんちゃいまっか?まず、手の形が調理には不向きな構造でっせ。」
「ほんとね。このロボットたちは清掃専門なのかもしれないわね。」
友香もロボットに興味があるのか、ずっと視線はロボットの方を見ていた。
「さすがに文字は読めないけど、この奥が食料庫だと思います。きっと、各自好きなものを取って、あそこのテーブルで食べろということだと思います。」
奥の扉も自動で開き、その先には予想通り食料品が所狭しと棚に並んでいた。
「かなりの量だな。それに、当たり前だが文字は読めないし、パッケージに何も印刷されてないから、どれがなんなのかもわからん。まあ、適当に2~3個ほど頂く事にしよう。」
安藤は、形の違う容器に入ったものを3個手に取ると、そのままテーブルに向かってさっさと歩いて行った。
「たしかに容器の形が違う以外、見た目からは中身がわからないね。俺も適当に・・・」
結局、悩むことも無く五人はそれぞれ3個ずつ手にすると、先に席についていた安藤の近くに腰を下ろした。
「おっ!」
席につくと、清掃していたロボットの一体が紙コップなようなものを五つ運んできてくれた。どうやらお水のようだった。
「気が利くじゃねぇか!それもちゃんと人数分だ。」
「なんだか愛着が沸くわね。ありがとう。」
真由はロボットに向かってお礼を言った。安藤と佐々木は3個の容器すべてをすでに開けていた。
「これはどないして食べるんや?見たところスプーンとかお箸は見当たらへんし。それに、全部ムース状になってるから、容器に口つけて飲む感じなんかな?」
たしかに、どれもムース状のものが容器には入っていた。
「いい香りがしますよ!」
「ちょっと早川、先に味見してみてくれよ。」
「俺・・・ですか・・・。」
何故か毒見させられている気分だったが、皆の視線が早川に釘付け状態だったため、嫌とも言えず、早川は一口食べるというより、飲んでみた。
「う、美味い!いけますよ!こっちの容器のは魚のすり身みたいな味ですけど、全然生臭くありません。うっすら塩味がついています。」
早川が食べたのを見て、一斉に同じ形の容器の物を食べ始める。
「ほんと、美味しいわ。シンプルな味だけど、見た目とは違ってタンパクで、どちらかというと白身魚のような味ね。」
「こら、いけますわ!じゃあ、今度はこっちを俺が味見してみますわ。」
佐々木は一気に魚のすり身っぽいものが入った容器を平らげると、長方形の容器に手を付けた。
「これは!?なんや・・・あの、あれですわ!ほら、じゃがいもの冷たいやつ・・・」
佐々木は必死に料理名を思い出そうと考え込んでいたが、思い出せない。
「ビシソワーズね。」
「そや!それですわ!一度か二度食べたことありますねん。そんな味がしますわ。」
「たしかにじゃがいもっぽい味ね。それに何かの出汁が効いてるのかしら。コンソメのような風味がして、本当にビシソワーズみたいね。」
全員同じもの持ってきたので、残るはあと一つだった。最後の容器は丸い形をしていて、色は紫っぽかった。食べるには少し勇気が必要だったが、これまで二種類共に美味しかったので、最後の容器は、皆、ほぼ同時に口にした。
「あら!これは甘いわ。」
まず、真由が感想を漏らす。
「色は紫だけど、カボチャのような味ね。」
あっという間に五人は食べ終えると、容器をカウンターの近くにあったゴミ箱に捨てて、ひとまず、サジ達のいる部屋に戻ることにした。




