第十一章 VS 17
「それで、そのメリーの特徴は?やはり大きいんですか?」
「それほど大きくありません。私の半分もありませんよ。それに普段は大人しく、私たちを襲ってくることはありません。」
「ほな、一体何が恐ろしいんでっか?」
「この星の軌道は不規則で、地球で言う所の夜が訪れるのも地球で言う3~5日くらいに一度の割合です。ちょうどその夜、つまり暗くなった時、その温厚な性格は一転して凶暴化します。四足歩行で行動するメリーの動きは二足歩行の我々では到底太刀打ち出来ない程の機敏な動きで、襲いかかってきます。そして手足の鋭い爪には、猛毒があり、九割くらいの確率で死に至ります。3~4時間以内に解毒剤を飲めば助かるのですが、解毒剤を調合できるのはごくわずかなホルキンス人だけです。ただ、ホルキンス人はメリーの習性をよく知っているので、まず襲われることはありません。それに地底までは彼らも追ってくることはありませんからね。」
早川たちはノレッセの事ばかり考えていたので、これまで以上に警戒しなければならないと思うと、先が思いやられた。
「ところで、その夜は今度はいつ訪れるんですか?」
友香が訪ねる。そう言えば、たしかここ随分と夜を見ていなかった。そろそろ訪れてもおかしくはない。
「実は我々にもわかりません。正確にはこの場所ではわからないのです。というのも、ある植物や、特定の川の水の色の変化などである程度の予測は可能ですが、今進んでいる場所にはそれらが見当たりません。なので、なんとも言えないのです。」
「でも、空に輝くマドラスの位置でわかるんじゃないんですか?」
早川は地球と太陽の関係と同じでは無いのかと思った。
「ところが、マドラスの動きではわからないんです。何故ならあそこに見えるマドラスは我々の想像も出来ない程遠くに存在するのです。その大きさもとても想像がつく次元の大きさでは無いようです。それなのでマドラスの光が実際にこの星に届くまでの時間も1億年かかるとも言われており、そんな大昔の光の状況なんてとても予測出来ません。すでにマドラスは消滅しているのではないか?という説まで存在します。」
「なんだか、あまりにも数字が大きすぎて混乱してしまいますね・・・そんな大昔の光が今届いているなんて・・・それも光の速度でそれだけの時間とは想像もつきませんね。」
「ただ、さっきも言ったように3~5日に一度は必ず夜は訪れます。その事からすでにいつ夜になってもおかしないということです。」
早川たちに一気に恐怖が走った。それを見てシーバは、
「そこまで心配しなくても大丈夫ですよ。夜になったからと言って必ずメリーが現れるわけではありません。」
そう言われても、不安になり、早川や安藤は執拗に周囲を見回した。するとサジが、
「心配せんでも、この付近でメリーが現れた話は聞かん。むしろバズーの方がこの辺りに現れる可能性は高い。奴なら昼も夜も関係ない。一つ注意しなければならんのは、奴は岩と同化しておる。そのまま何年もじっとしていることもあり、なかなか気づかんのじゃ。体に木が生えたり、植物が生えたりしとるからのぅ。それこそ、その辺の岩がもしかするとバズーという事だって考えられるんじゃ。そしてそれを言い出すとキリがない。その時が来たら考えるまで。今はくだらんことは忘れて、目的地を目指すことだけに集中するんじゃ。」
「わかりました。」
サジの一言で、この話題にこれ以上触れるのは止めて、歩くことに専念した。




