第十一章 VS 16
「なんだか、どんどん背後にノレッセ達が迫っている感じがするんだけど。」
友香が歩きながら不安な事を言う。
「突然なんだよ。さすがにまだ気づかれていないと思うよ。それにセルゲス達と合流したかどうかだってわからない。」
「そうだと良いんだけど、背後に何か強力な殺意のようなもの感じてね。気のせいだと良いんだけど・・・」
そう言いながら何度も後ろを振り返る。早川は振り返ってみたがそこにはウォーレン達の姿以外見えない。かなり遠くまで見渡せたが、何度確認しても同じだった。
「やっぱり気のせいだよ。それにウォーレン達は警戒心も俺たちより強いだろうし、そのウォーレン達が特に気にする様子もないようだし、何かあったら先に気付いて知らせてくれるだろう。」
すると、今度は真由が、
「でも、女の勘は鋭いわよ。私もなんだかさっきから変な感じがするわ。ノレッセ達かどうかはわからないけど、そうね・・・うまく言えないけど、強力な何か・・・」
「真由まで何を言い出すんだよ!気のせいだって!気のせい!そうに決まってる!なあ、早川!」
安藤は自分に言い聞かせるように、早川を見た。
「いや、案外彼女たちの勘は当たってるかも知れまへんで!この星の生物についてはまだまだ俺たちは知らへん事だらけですし、ノレッセと俺たちだけがこの星におるわけでもないんやし・・・」
たしかに佐々木の言う通りだった。セルゲスやノレッセに気を取られてばかりいたが、地球でも人間以外の生物はたくさんいるし、生身の人間では太刀打ち出来ない、熊やライオン、水中ではサメなど、それに昆虫だって猛毒を持ったものは数多く存在するのだ。ここに来てそれほど多くの生物を目にしてはいないが、そう言った生物が存在してもおかしくないのだ。
不安になった早川は歩く速度を速めてシーバの元へ近づいた。
「あの、ちょっと聞きたい事が・・・」
「どうかしましたか?」
早川はシーバに歩く速度を合わせ隣に並ぶと、
「実は、友香と真由さんが嫌な予感がすると言うんですが、この星には危険な生物とかっているんですか?」
きっと、そんなものはいないと言う返事を期待していたが、その期待はあっさりと裏切られた。
「実は、地下でホルキンス人が生活をする理由には環境が適さないということ以外に、恐ろしい生き物が生息していることも理由なんですよ。その生き物は滅多に姿を現すことはありませんが、これまで何度かホルキンス人が襲われ、死亡するというケースがありました。他にも危険な生物は存在しますが、特に危険なのがバズーと言う生物です。」
聞き耳を立てていた安藤や佐々木もかなり近くに来て興味半分、恐怖半分と言った表情でその先を聞きたがっている様子だった。
「それ、どないな生き物ですねん!」
間に耐えられず佐々木が後ろから声を上げる。
「そうですね。大きさは私たちの10倍はあるかと思われます。私は直接見たことはありませんが、外見はゴツゴツした岩のようなもので覆われていて、動きは遅いですが、凶暴で動くものを見つけると執拗に追いかけて来ます。まあ、動きが遅いので逃げることは可能ですが、万が一、捕まれば命は無いものと考えた方がいいですね。ただ、ここ何十年も目撃情報はありませんし、もしかしたら絶滅したのかもしれませんが。」
すると、サジが、
「バズーよりやっかいなのがおるじゃろ。」
「それはどんな生き物ですのん?」
いつしか佐々木は恐怖より好奇心で目が輝いていた。
「メリーじゃ!」
早川は一瞬、聞き間違えかと思い、思わず聞き返してしまった。
「だから、メリーという生き物じゃ!」
「メ、メリー?」
佐々木の表情が緩む。安藤も今にも笑い出しそうな表情をしていた。早川はさすがに笑うのは失礼だと思いながらも、
「なんだか、可愛らしい名前なんですね・・・そのメリーという生き物は危険なんですか?」
すると、今度はシーバが、
「発音がどうやら地球人には可愛らしく聞こえるのかもしれませんが、ホルキンス語ではメリーというのは・・・そうですね・・・地球の言葉に置き換えると屍というのがもっとも近い意味かもしれません。つまりメリーが通った後には屍しか残らないという感じをイメージして頂ければわかるかと思いますが・・・」
それでも、やはり早川たちにはピンとこなかった。




