第十一章 VS
「とにかく、皆を集めて、万が一に備えた方が良さそうだ。きっと兵士たちは気づいているかもしれんが、順平君は、念のためこの事を伝えてきてくれないか?彼らなりのやり方があるだろうから、そちらの行動は任せるとしよう。」
「わかりました。すでに無線端末にて連絡はしてありますが、どういう作戦で動くのか確認してきます。では、そちらはお願いしますね!」
順平は、そのまま司令室を飛び出して行った。
「教授たちは起こした方が良いですか?起こした方が良いのであれば、このまま起こしに向かいますが・・・」
「いや、倉本さんはともかく、教授はかなり精神的にも肉体的にも限界にきているはずだ。もう少し彼には休んでいてもらおう。倉本さんだけ、申し訳ないが呼んできてくれないか?私は反対側を見張っている、山本さんと牧野さんに知らせて来よう。」
「わかりました。では、後ほど。」
ウォーレンが飛び出して行ったのを見送る形で早川も司令室を出た。友香たちは中央に集まって、まだ、空を見上げていた。サジとシーバも騒ぎを聞きつけたのか集まってきていた。
早川は、友香たちに事情を説明してから、倉本の部屋に向かった。たしか、教授と隣同士だったはずなので、教授に気づかれないように静かに近づいた。倉本の部屋の前でノックすると、しばらくしてドアが開いた。まだかなり眠そうだった。
「何かあったのか?」
「教授を起こしたくないので、外でお話しします。表で皆集まってますので、準備が出来たら出てきてください。」
「わかった。顔を洗ったらすぐに出る。」
「お願いします。」
小声でそう言うと、友香たちの元へ向かった。どうやら、光る物体は大きくなっているようで、皆同じ方向を見上げていた。
「く、首が痛いわ!もうええかな・・・早川君。」
佐々木が冗談半分に、早川に愚痴をこぼす。
「何も、首が痛くなるまで見なくても・・・」
「あかん!あかんわ!もうちょっと気の利いたツッコミが欲しかったなぁ。」
「な、なんでやねん!」
「照れたらあかん!照れたら。まあ、東の人間にツッコミを求めた俺も悪いねんけど・・・」
隣でクスクスと友香や真由が笑っていた。場が和んだのなら、とにかく良かった。そう言い聞かせ、ウォーレンが戻ってくるのを待つことにした。しばらくすると倉本が先にやってきた。
「空を見上げて何をしているんだ?」
早川は簡単に状況を説明した。
「なるほど・・・やはりウォーレンの言うとおり、ノレッセというのは一筋縄ではいかない連中のようだな。」
倉本と話していると、ウォーレンが竹下と牧野を引き連れて戻ってきた。
「かなり近付いているようだ。あの速度だと、着陸まで二、三時間って所か・・・。」
竹下が上空を見上げて呟いた。
「まさか、ここへ直接着陸なんて事は無いよな?」
安藤が不安を漏らす。それには、ウォーレンが、
「まあ、この星も地球の四倍ほどの大きさがある。現状、ノレッセと直接連絡は取り合えないだろうし、どこに着陸するかは、奴らの気分次第。となると、よほどの偶然でも重ならない限り、見える範囲には降りて来ないだろう。場合によっては、かなり離れた場所に着陸してくれるかもしれん。そうだと、有難いんだがな。」
「見たところ、1機だけのようですね。今のところは・・・。」
ずっと空を見上げたままレイニーがそう言うと、
「1機でも、相手の戦力、人数などはわからんから油断は出来ん。ましてや、向こうは戦闘のプロだ。セルゲスもこれまでは油断もあっただろうが、次は確実に我々を仕留めに来るだろう。」
「今更言っても始まらんが、武器の無い今こそ、チャンスだったのかもしれんな。」
珍しく無口なロジャーが会話に割り込んできた。続けて、
「しかし、深追いしていたら奴らの罠にかかっていたかもしれない。とにかく、全員無事なのだから、今はこれからの事を考えるとしよう。」
すると今度は竹下が、
「さて、これからどうしたものか、まずはウォーレンの意見を聞く事にしよう。やはり、彼がノレッセに関しては一番詳しいだろうし、これまでも的確な指示のお陰で数々の危険からも回避出来ているからな。」
と、言いウォーレンを見た。これには全員が同じ意見だった。そして、全員がウォーレンに注目した。ウォーレンは軽く咳払いすると、
「たしかにノレッセに関しては皆より、詳しいかもしれないが、今度ばかりは正直どうして良いかわからない。さっきも言ったが、現時点では相手の戦力もわからない。まさか丸腰で乗り込んでくるような馬鹿な真似はしないだろうから、丸腰同然の我々には、まともに戦っても太刀打ち出来ないだろう。それに、今からまた移動しては体力が奪われ、戦う前に倒れてしまう恐れもある。」
「たしかに、少しは休めたけど、体中が痛い。」
そう言って早川は軽く腕を回してみたが、一回転させるだけで、何度か激しい痛みが走った。
「順平君が連れて来てくれた兵士達はかなりの戦力だが、それでも、正直武装したノレッセには、今の人数では敵わないだろう。私の知る限りでは、ノレッセは最低でも二十人1グループで行動している。と、なるとこの星にいるノレッセと合わせたら、人数でも向こうの方が優勢になる。」
ウォーレンも、さすがに今回はかなり状況が不利だと、落胆した様子だった。早川も必死に何か良い案は無いかと、頭をフル回転させてみたが、何も浮かばなかった。そして、自分の無力さに唇を噛んだ。気づかない内にかなり強く噛んでいたのだろうか・・・友香が、
「唇から血が出てるわよ。大丈夫?」
と、言われて、なんだか下唇がズキズキする事に気づいた。
「大丈夫。大した事ないよ。」




