2話 『大魔鎧』
貯金していた50万の内、40万を下ろした。
有り金のほとんどを使うのは気が引けたが、後悔してからでは遅い。
明日になれば消滅してしまう可能性だってあるのだ。
俺はガチャのある場所へ向かった。
ガチャは建物の視覚にあり、昼間ですら見つけにくい。偶然昼間に会社からリストラされたことが不幸中の幸いだ。
それに、見つかったとしても。
あのガチャはネジやらそういうのが全く見当たらないのに、まるで道路の一部であるかのように張り付いている。
俺が何処かに行ってしまったとしても、誰かに持っていかれたりはしないだろう。
「よし……、引くか」
その『ガチャ』はまるで俺に「引いてください!!」と言っているかのように太陽光を反射しててかっている。
「分かってるよ」
俺はそんな独り言を言いつつ、投入口に入るだけのお札を差し込み、レバーを回した。
カラカラと音を立てて、十数個のカプセルが落ちてくる。
15万ほど使っただろうか。
食費、家賃等、払えなくなるのを覚悟しよう。
もちろん、『未来予知』レベルのスキルが欲しいが……あれは【SSR】だ。
さぞかし珍しい物に違いない。
たったの40回で【SSR】が出ないことになる可能性が高いのは百も承知だ。
俺は黒いカプセルを開け、紙に書かれた文字を一個ずつ読んでいく。
《【SSR】大魔鎧》
「え、エエぇ〜〜??」
まさかの1個目で【SSR】の文字を見てしまった……俺、明日死ぬんじゃないか?
だけど。
大魔鎧ときた。
名前からして……防具の一環だろう。
『未来予知』と比べると、明らかに一般生活に必要のない物だ。
「まぁ、試しに使ってみるか」
俺は黒い個体に触れた。
……何も起こらない。
何か、魔力とかなんやらの力を込めないとスキルが使えないのだろうか。
恐る恐る全身に力を込めてみる。
「う、うおっ!!」
力を込めた瞬間、体中に真っ黒の液体が覆い始めた。
「な、液体!?」
2秒ほどして黒い液体が、顔を避けて頭の先まで全身を覆う。
「……これが、鎧なの――――」
『「「「ガキッッッッッッン」」」』
金属音。
とてつもなく硬そうな音。
音源は……全身の黒い液体だ。
いや、「元」黒い液体と言ったほうがいいだろうか。
何の模様や形もしていなかったただの黒い液体がガチガチに固まり、漫画でよく見た西洋風の鎧を形作っている。
そして、その表面を走る赤い血管のような模様と、いつの間にか手に握られた黒い剣。
「う、うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
体そのものが喜びを感じているのだろうか。俺は意図せずに、そんな声を上げていた。
この『大魔鎧』とやら……俺が高校生だった頃に思い描いていたものそのものだ。
俺は、泣いていた。
初めて、生きていて良かったと思った瞬間だった。
視界がぼやけていながらも、次々と、カプセルの紙の文字を追っていく。
【N】炎球
【N】水球
【N】風球
【R】魔力上昇×3
【R】身体能力向上×4
【R】体力向上×3
【SR】魔力探知
「うっ、うぐっ……最高じゃないか……!!」
俺は涙を抑えながら、黒い個体に触れていった。
れ、冷静になれ……
一回、これらのスキルを試してみよう。
泣くのはそれからだ。
俺は路地から出ようとした瞬間、その場に氷ついた。
目の前に……緑色で、小さい小人のような物が3匹立っていたからである。




