1話 『スキルガチャ』
仕事をリストラされた。
理由は分からない。
両親は数年前に他界し、友達もおらず、彼女もいない俺に行くあては何処にもない。
「どうしようか……何か人生がガラッと変わるものでも……」
俺はそう呟き、ふと下げていた視線を上げた。
「……何だあれ」
俺の視線の先。
路地に隠れるようにして『それ』は置いてある。
「スキル……ガチャ?」
見た目は完全に子供がよく引いている台と同じだ。
ただ、カプセルが入っているであろう部分は中が見えないように透明ではなくなっている。
そして、注目すべきはその前面。
『スキルガチャ』と刻印されてある紙が貼り付けられているのだ。
まさか、引いたら『スキル』が商品として出てくるのだろうか。
「……いや、誰かのおもちゃか何かだろう」
俺はそのまま立ち去ろうとした。
「……」
足を止める。
スキル。
何故か、その言葉が頭から離れないのだ。
俺は……まだ憧れているのか?
学生時代、毎日妄想していた。
悪い化け物が学校を襲い、それを俺がとんでもない魔法を使って華麗に退治する。
そんな、毎日妄想をするほど使いたかった魔法と同じような『スキル』を使えるチャンスが目の前にあるという。
「これは、引いてみるしかないでしょ……!!」
一回1万円。
ガチャにしてはかなり高い。
ただ、夢への切符だと思えば安いものだ。
おもちゃか何かだった時が怖いが……
俺は財布を取り出し、運良く残っていた1万円を取り出した。
そして、震える手を抑えながらその1万円を、投入口に差し込む。
そのまま容易く中へ引き込まれていくのを見届け、レバーを回す。
「お願いします!!」
俺は手を組み、目を瞑って願った。
仕事を失った俺にとっては1万円を失うのは死活問題だ。
出るならそれなりのスキルが出て貰わないと困る。
「『カシャン』」
……出たのか?
軽い音だ。
少し不安にさせてくる。
いや、一応は出たのだ。
中身はある筈。
俺は恐る恐る目を開け、カプセル排出口から真っ黒のカプセルを取り出した。
そういえば、スキルはどのような感じで入っているのだろうか。
個体? 液体? 気体?
まぁいい。
俺はカプセルをゆっくりと開ける。
「これは……なんだよこれ」
個体だった。
黒い謎の氷のような大きさの物が入っている。
俺は、それに同封してある紙を取り出した。
《【SSR】未来予知》
「はぇっ!? み、み、み、みっ、未来予ッ……え?」
お、落ち着け……落ち着け俺よ!!
紙に未来予知と書いてあるだけで何も効果は無いのかもしれない。
ひ、ひとまず深呼吸。
「スゥゥゥ……ハァァァ……」
俺はその黒い個体に手を触れた。
指先からひんやりとした何かが流れてくるような感覚だ。
「……ッ!!」
落ち葉が、二枚重なったようにしてブレている。
そして、風が吹いたかと思えば、その落ち葉が少し動き、ブレが無くなる。
「や、やったああァァァァァァ!!!!」
見えるのはせいぜい1秒ぐらいだろうか。
しかし、それでも十分。
スキルガチャが本物だということが分かったのだ。
「よぉーし、どんどん引いてやるぞ!!」
俺は最強になることを決意した。
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