第333章 南側の突破口
南側へ向かう途中、主人公は通信機を通じて救出されたチームに連絡した。
「今どこにいる?」
『中央基地の南側通路だ。負傷者を休ませている。戦闘には戻れない』
「そのままでいい。敵がそちらへ向かっている。通用口を使って基地内部へ移動してくれ。ただし、扉の前に集まらず、別々の遮蔽物を使って待機してほしい」
『敵が来たらどうする?』
「交戦は避けてくれ。こちらが到着するまで、敵の人数と進行方向だけ確認してほしい」
通信を切った直後、同行者が口を開いた。
「負傷者がいるチームを、また敵の近くに置くのか?」
「だから戦わせない。あの場所に留まるより、基地内部へ移動した方が安全だ。ただし、全員が一度に通用口へ集まると、敵が来たときに逃げ場がなくなる」
「敵がすでに通用口を押さえていたら?」
「その場合は、別の入口を探す」
主人公は答えたものの、確信があったわけではない。
基地の南側には複数の通路がある。しかし、どれも内部の防衛区画につながっているとは限らず、敵が先回りしていれば、移動するほど危険が増す。
彼らは速度を落とさず、南側の外壁へ向かった。
角を曲がる直前、先頭の隊員が手を上げた。
全員が足を止める。
通路の先に敵が二人いた。
一人は通用口の方向を見張り、もう一人は外壁沿いを移動している。さらに奥から、複数人の足音が聞こえた。
「思ったより早いな」
同行者が小声で言った。
主人公は壁の陰から通路を観察した。
敵の先頭は通用口へ進んでいる。しかし、全員が同じ方向へ向かっているわけではなかった。一部は外壁に沿って別の経路へ進み、基地の南側を広く探っている。
「敵は通用口だけを狙っているわけじゃない。南側の出入口を探しているんだ」
「なら、ここで止めるか?」
主人公はすぐには答えなかった。
正面から交戦すれば、敵の進行を遅らせられるかもしれない。だが、相手の人数はまだわからない。こちらが足止めされている間に、別の敵が通用口へ到着する可能性もある。
そのとき、通信機が鳴った。
『敵が見えた。通用口の前に三人いる。こちらは内部へ入れない』
救出されたチームからだった。
主人公は地図を開いた。
通用口を使えないなら、彼らを基地内部へ移動させるには、外壁沿いの別の扉を確保する必要がある。しかし、その扉の位置は、今まさに敵が探している方向と重なっていた。
「全員、ここから動かないでくれ。二人は敵の移動を監視する。残りは俺と一緒に、別の入口を確認する」
「敵の背後を通るのか?」
「背後を通るとは限らない。敵がどこまで外壁を回っているかを確認してから決める」
主人公たちは遮蔽物を使い、外壁の角から少しずつ視界を広げた。
別の入口は、十数メートル先にあった。
だが、扉の前には敵が一人立っていた。
しかも、その敵は周囲を見張るだけでなく、扉の横に設置された端末を操作している。
「何をしているんだ?」
同行者が尋ねた。
「わからない。だが、あの端末を操作している間は、扉を使えない可能性がある」
主人公は通信をつないだ。
「中央基地、南側の別入口を確認した。扉の横に端末がある。外から操作されているように見えるが、内部から解除できるか?」
『確認する。少し待ってくれ』
主人公は敵の様子を観察した。
敵は端末を操作したあと、扉から離れ、外壁の角へ移動した。扉を監視し続けるつもりらしい。
数秒後、基地から返答があった。
『その入口は内部から開閉できる。ただし、外側の制御端末がロックされると、内部からの操作も制限される』
「解除する方法は?」
『制御室から解除できる。ただし、北側の接続設備を補修しているため、今すぐ人員を回せない』
主人公は唇を結んだ。
北側を守るために制御室の人員を残した。その判断は間違っていない。だが、その結果、南側の入口を解除できない。
どちらか一方を選べば、もう一方に影響が出る。
「端末を破壊すれば、扉は開くのか?」
『わからない。壊した場合、扉がロックされたままになる可能性もある』
「了解。こちらで対応を考える」
通信を切ると、同行者が言った。
「敵を倒して端末を操作すればいいんじゃないか?」
「端末を操作できる保証はない。敵が離れたあとに、別の敵が来る可能性もある」
「じゃあ、どうする?」
主人公は通用口の方向を見た。
救出されたチームは、まだ外にいる。負傷者もいる。時間をかければ、敵がさらに増えるかもしれない。
彼は一つの案を考えた。
「敵に、こちらが別入口を狙っていると思わせる」
同行者が眉をひそめた。
「どうやって?」
「二人に、外壁の反対側へ移動してもらう。敵がそちらを警戒するようになれば、俺たちが端末へ近づく時間を作れるかもしれない」
「敵が動かなかったら?」
「その場合は中止する。無理に突破する必要はない」
二人の隊員が反対側へ移動した。
わざと大きな音を立てることはしない。敵に姿を見せ、別の方向から接近しているように見せるだけだ。
しばらくすると、端末を操作していた敵が顔を上げた。
敵は反対側へ目を向け、無線で何かを報告した。
やがて、別の敵が一人、そちらへ向かって移動した。
扉の前にいた敵も、端末から少し離れた。
「今だ」
主人公たちは遮蔽物から出た。
同行者が敵の注意を引き、主人公は端末へ近づいた。
しかし、画面にはロックを示す表示が出ていた。解除操作には基地内部の認証が必要らしい。
主人公は操作を試みたが、扉は開かなかった。
「駄目だ。外からは解除できない」
その瞬間、離れた場所にいた敵が振り向いた。
こちらに気づいたのだ。
「戻れ!」
主人公は仲間に叫んだ。
同行者が敵を押しとどめ、主人公たちは遮蔽物の陰へ退いた。敵は追ってきたが、こちらが狭い通路へ入ると、それ以上は踏み込まずに距離を取った。
突破には失敗した。
しかし、敵が別入口を警戒している間に、通用口の前から一人が離れたことがわかった。
主人公はすぐに救出されたチームへ連絡した。
「通用口の状況は?」
『三人のうち一人が離れた。残り二人はまだいる』
「こちらが引きつける。通用口へ向かう必要はない。負傷者を連れて、外壁の内側へ移動できる経路を探してくれ」
『内部へ入れないのに、どうやって?』
「基地の外周には、整備用の通路があるはずだ。無理に扉を開けず、まずは通路の位置を確認してほしい」
主人公は地図を見た。
南側の敵をすべて排除するのは難しい。ならば、敵の防衛線を正面から崩すのではなく、その隙間を利用して味方を移動させるしかない。
だが、敵も同じことを考えている可能性がある。
主人公は右手の痛みを確かめるように、指を軽く動かした。
まだ、力を込めることはできない。
自分が前へ出て敵を押し切る方法は選べなかった。
「通用口の敵を追い払うのではなく、移動できる道を作る。まずはそれだ」
彼は仲間に告げた。
その直後、基地全体に警告音が響いた。
『防衛設備の稼働率が低下。北側の接続経路に再度異常。補修作業を中断できない』
主人公は目を閉じず、地図を見続けた。
南側では味方が外に取り残されている。
北側では設備が止まりかけている。
そして、中央基地の正面入口には、まだ敵がいる。
残り時間は、確実に減っていた。




