↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観客のいない世界  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

331/470

第331章 残された時間

中央基地の入口を押さえていた敵は、三人だった。


一人は正面の遮蔽物に身を隠し、残りの二人は少し離れた位置から周囲を警戒している。


主人公は建物の陰から様子をうかがった。


敵の数だけなら、突破できない相手ではない。


だが、ここで交戦すれば、音を聞きつけた増援が来る。部品を運ぶチームが到着する前に入口を取り戻せなければ、任務そのものが失敗する可能性があった。


「東側へ向かった組から連絡は?」


「まだない」


同行者が答えた。


主人公は通信機を確認した。中央基地の内部にいるチームからも、追加の情報は届いていない。


「正面を突破するのはやめよう。入口を守っている敵が三人なら、ほかにも近くにいる可能性がある」


「南側の壁沿いに進めば、裏の通用口に出られる。ただ、そこから入れるかはわからない」


「確認しよう。入口を守る敵を動かす必要はない」


二人は外壁沿いに移動した。


南側の通用口に到着すると、扉は閉じていた。鍵がかかっているわけではない。しかし、内側から重い資材が積まれているらしく、外から押してもほとんど動かなかった。


主人公は扉に手をかけ、すぐに離した。


右手に力を入れると、まだ痛みが走る。


無理に押し続けても、扉を動かせる保証はなかった。


「俺がやる」


同行者が扉を押した。


金属が軋んだが、隙間はほとんど広がらない。


「中から何かをどかさないと無理だな」


主人公は通信をつないだ。


「中央基地、こちらだ。南側の通用口に到着した。内側に資材が積まれていて、外から開けられない。そちらから動かせるか?」


しばらくして返答があった。


『動かせる。ただし、こちらの人員は防衛設備の準備に回っている。扉を開けるには二人必要だ』


「二人を回したら、設備の準備は止まるのか?」


『一時的に止まる。すでに必要な部品は届いているが、接続作業が終わっていない』


主人公は時計を確認した。


残り時間は少ない。


扉を開けてもらえば、中央基地の内部へ入れる。しかし、設備の準備が遅れる。正面から突破すれば、交戦によってさらに時間を失う。


「扉を開けるのに、どのくらいかかる?」


『二分は必要だ』


「わかった。二人を回してくれ。ただし、作業を始める前に、設備の準備をどこまで進めておけるか確認してほしい」


通信を切ると、同行者が尋ねた。


「二分も待つのか?」


「待つだけじゃない。東側の組から連絡が来れば、敵の位置もわかる」


「もし連絡が来なかったら?」


「その場合は、こちらで決める」


主人公は通用口から離れ、周囲を警戒した。


一分ほど経過したところで、通信機が鳴った。


『東側の経路を確認した。敵が二人、基地の外周を回っている。北側へ移動中だ』


「正面入口の敵とは別か?」


『断定できない。ただ、こちらの姿には気づいていない』


主人公は地図を見た。


北側へ移動する敵が正面入口の三人と合流すれば、南側の通用口へ回り込む余裕はなくなるかもしれない。逆に、北側へ向かった敵が別の部隊なら、基地の外周そのものが包囲される可能性もある。


「東側の組は、そのまま監視を続けてくれ。敵と接触する必要はない」


『了解』


その直後、中央基地の内部から物音がした。


通用口が、わずかに開いた。


内側にいた二人の隊員が資材を動かし、通路を確保していた。


「通れるぞ!」


主人公たちは扉を押さえ、内部へ入った。


基地の中では、数人の隊員が防衛設備の接続作業を続けていた。部品はすでに届いていたが、接続部の一つがうまく固定できず、作業が止まっていた。


「何が問題なんだ?」


主人公が尋ねた。


「固定具が変形している。予備はあるが、交換すると接続を最初から確認し直す必要がある」


「今の固定具を使ったまま稼働させることは?」


「できるかもしれない。ただ、負荷がかかったときに外れる危険がある」


主人公は接続部を見た。


彼は整備の専門家ではない。見ただけで安全性を判断できるわけではなかった。


「誰が交換を判断する?」


「設備担当だ。ただ、今は別の場所にいる」


「呼び戻すのにどのくらいかかる?」


「三分は必要だ」


残り時間を考えれば、待つ余裕はない。


しかし、危険な状態で稼働させれば、設備が途中で停止するかもしれない。その場合、これまでの移動も救出も、すべて無駄になる可能性があった。


「固定具の交換を始めてくれ。設備担当には通信で確認してもらう。俺たちは入口を警戒する」


隊員はうなずき、作業を再開した。


主人公は同行者とともに、基地内部から正面入口へ続く通路を確認した。


外から銃声が聞こえた。


続いて、通信が入る。


『北側の敵が動いた。こちらの位置に気づいた可能性がある』


東側の組からだった。


「交戦は避けてくれ。敵がこちらへ向かっているなら、距離を取って離脱していい」


『了解。ただし、北側の通路を通ると、正面入口の敵と接触する可能性がある』


「なら、南側へ戻れ。通用口から基地へ入れる」


主人公は通信を切った。


すぐに別の隊員が駆け寄ってきた。


「正面入口の敵が移動した。三人のうち二人が北側へ向かったらしい」


「残りの一人は?」


「確認できていない」


主人公は正面入口へ向かった。


二人が北側へ移動したのなら、入口を取り戻す好機かもしれない。


だが、残った一人がどこにいるのかはわからない。


彼は入口の手前で足を止めた。


遮蔽物の向こうから、かすかな物音がした。


一人ではない。


主人公は手で同行者を制止した。


その瞬間、入口の奥から敵が姿を現した。


敵は主人公たちを見ると、すぐに射撃を始めた。


主人公は遮蔽物へ身を隠した。右手に衝撃が伝わり、痛みが走る。反射的に手をかばいそうになったが、今はその動きさえ危険だった。


「正面は無理だ!」


同行者が叫んだ。


主人公はうなずいた。


敵は一人ではなかった。入口を守っていた三人のうち、少なくとも二人はまだ近くに残っていたらしい。


北側へ向かった敵が別の部隊だったのか、それとも移動を偽装していたのか。今の情報だけでは判断できない。


通信機が鳴った。


『設備の接続が終わった! 固定具も交換できた。いつでも稼働できる!』


主人公はすぐに答えた。


「稼働させてくれ。ただし、こちらが入口を取り戻せるとは限らない。設備を守れる位置に人員を配置してほしい」


『了解!』


基地内部で機械が動き始めた。


低い駆動音が響き、設備の表示灯が一つずつ点灯する。


しかし、正面入口の敵は退かなかった。


主人公は遮蔽物の陰から、敵の射撃の間隔を数えた。


今、入口を突破することだけを考えるなら、味方を集めて突撃する方法もある。だが、それでは設備の防衛が手薄になる。入口を奪えても、敵が別の場所から侵入すれば意味がない。


「入口は捨てる」


同行者が主人公を見た。


「せっかく設備が動いたのに?」


「設備を稼働させることと、入口を奪うことは別だ。今は内部を守る方が先だ」


主人公は基地内部へ戻るよう指示した。


その判断を下した直後、中央基地から全体通信が流れた。


『防衛設備、稼働を確認。ただし、北側の接続経路に異常あり。稼働時間は予定より短縮される可能性がある』


主人公は足を止めた。


設備は動いた。


だが、敵の攻撃が終わったわけではない。


そして、残り時間も戻ってこない。


彼は通信機を握り直した。痛む右手には力を入れず、左手で地図を開く。


次に守るべき場所は、もう決まっていた。


北側の接続経路。


敵がそこを破壊すれば、せっかく稼働した設備も停止する。


主人公は仲間たちを見た。


「入口を奪い返すのは後だ。全員、北側へ向かう。今度は、敵に先回りされる前に動く」


彼らは基地の内部を走り始めた。


背後では、正面入口からの射撃がまだ続いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。