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観客のいない世界  作者: 亀


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第327章 敵が変えた順番

合同任務当日。


主人公たちが集合地点に到着すると、作戦区域の立体地図が空中に表示された。


今回の任務では、三つの輸送拠点から部品を回収し、中央基地まで運ばなければならない。中央基地の防衛設備を稼働させるには、最低二種類の部品が必要だった。


参加するのは、前回と同じ六チーム。


それぞれが別の経路を担当し、最終的に中央基地で合流する予定だった。


「俺たちは第一拠点から部品を運ぶ。途中で敵に遭遇した場合、状況に応じて経路を変える」


主人公は仲間たちに地図を見せた。


「正面の街道と東側の迂回路。この二つを使えるようにしておく。ただし、最初から分かれる必要はない。片方が使えなくなったときに、もう片方へ移る」


「また、逃げ道の話か」


隊員の一人が言った。


「前回は二つとも使えなくなっただろ」


「だから、今回は経路だけじゃなく、途中で隊列が分かれた場合の対応も決めておく」


主人公は地図の上に三つの印をつけた。


「ここで敵に止められたら、車両を無理に前進させない。ここまで戻れたら東側へ切り替える。どちらも使えない場合は、部品を持って徒歩で離脱する」


「部品を捨てる場合もあるのか?」


「全員が動けなくなるよりはいい。状況によって優先順位は変える」


彼はそこで説明を終えた。


以前の自分なら、考えられる状況をすべて予測しようとしていたかもしれない。しかし、実際の戦場では、予想していなかったことが起こる。


必要なのは、すべてを予測することではない。


予測が外れたとき、次の行動を選べるようにしておくことだった。


開始の合図が鳴った。


第一拠点までの移動は順調だった。敵の姿は見えず、部品の回収も予定どおりに進んだ。


主人公たちは部品を輸送車両に積み込み、中央基地へ向かった。


最初の分岐点に到着したとき、別チームから通信が入った。


「第二拠点を確保した。部品の回収も完了。ただし、北側から敵が接近している」


主人公は地図を確認した。


第二拠点から中央基地へ向かうには、北側の道路を通る必要がある。東側にも細い道はあるが、輸送車両が通過できるかはわからない。


「敵の数は?」


「確認できたのは四人。だが、後方にも動きがある。正確な人数は不明だ」


通信が途切れた。


主人公はすぐに仲間へ指示を出した。


「俺たちは予定どおり中央基地へ向かう。ただし、第二拠点のチームが動けなくなった場合に備えて、南側の経路を残しておく」


「救援には行かないのか?」


「今の情報だけでは判断できない。向こうが自力で離脱できるなら、俺たちが戻る必要はない」


彼は通信担当に再度呼びかけるよう頼んだ。


しかし、返答はなかった。


その直後、今度は中央基地から連絡が入った。


「北側の輸送路で敵を確認! 別チームの車両が足止めされています!」


主人公たちは足を止めた。


第二拠点の北側と、中央基地へ向かう道路。


離れた二つの場所で、ほぼ同時に敵が動いている。


偶然かもしれない。


だが、敵がこちらの輸送経路を把握しているのなら、単に道路を塞いでいるのではなく、各チームを別々の場所に留めようとしている可能性もあった。


「中央基地へ向かう道は、ほかにもあるのか?」


仲間が尋ねた。


「徒歩ならある。ただし、車両は通れない」


「じゃあ、車両を置いていく?」


「まだ決めない。車両を放棄すれば、部品は運べても時間がかかる。まずは、足止めされているチームがどこまで動けるか確認する」


主人公は通信を試みた。


しばらくして、短い返答が届いた。


『車両は動かせない。敵が道路の両側にいる。こちらから攻撃すると、後方の別部隊が動く可能性がある』


主人公はその報告を聞き、地図を見直した。


道路の両側に敵がいるなら、正面からの突破は危険だ。後方にも別部隊がいるなら、迂回したチームが挟み込まれる可能性もある。


しかし、敵が本当に後方から攻撃するつもりなのか、それともそう思わせたいだけなのかはわからなかった。


「二人は、中央基地へ続く徒歩経路を確認してくれ。残る二人は俺と一緒に、北側の道路を見に行く」


「敵がいる場所へ近づくのか?」


「交戦するつもりはない。敵の位置を確認できれば、救援するか、別の経路を使うか判断できる」


四人は二手に分かれた。


主人公は仲間とともに建物の陰を移動し、道路を見渡せる場所まで進んだ。


そこで見えたのは、予想していた光景とは少し違っていた。


敵は道路の両側に展開していたが、全員が車両を狙っているわけではなかった。数人は道路の奥を警戒し、別の数人は、迂回路へ続く建物の入口を監視していた。


つまり、敵は車両を止めるだけでなく、護衛が別の道を選ぶことまで想定している。


「どうする?」


仲間が小声で尋ねた。


主人公はすぐには答えなかった。


敵の配置を見る限り、北側の道路を強引に突破するのは難しい。かといって、東側の迂回路へ全員で移動すれば、そちらにも敵がいる可能性がある。


そのとき、遠くで爆発音が響いた。


第二拠点の方向だった。


続いて、通信機に雑音が走った。


『こちら第二拠点……敵が……裏口にも……』


そこで音声が途切れた。


主人公は通信機を握り直した。


中央基地へ向かう道は塞がれている。


第二拠点では、離脱しようとしていたチームが追い詰められているかもしれない。


そして、自分たちが動ける時間も限られていた。


彼は地図を見た。


中央基地へ向かう道と、第二拠点へ戻る道。


どちらか一方だけを選べば、もう一方で起きている問題への対応は遅れる。


「まず、第二拠点の状況を確認する」


主人公は決めた。


「ただし、全員では戻らない。二人は中央基地へ続く別の経路を確認してくれ。俺たちは第二拠点へ向かう途中で、敵の配置をもう一度見る」


「中央基地への進行はどうする?」


「経路が確保できたら、すぐに合流する。無理なら、車両を運ぶ方法そのものを考え直す」


仲間たちはうなずいた。


四人が動き始めた直後、主人公の端末に別チームから新たな連絡が届いた。


『中央基地の西側でも敵を確認。こちらは交戦中。増援を求める』


主人公は足を止めた。


北側だけではない。


西側にも敵がいる。


複数の場所で同時に起きていることが、どこまでつながっているのかはまだわからない。


ただ一つ確かなのは、こちらが一つの問題を解決するたびに、別の場所で新しい問題が発生しているということだった。


主人公は通信機をしまい、仲間たちの後を追った。


今回の敵は、こちらの進路を塞ぐだけでは終わらない。


こちらが何を優先し、どこへ人員を動かすのか。その判断によって生まれる隙間まで利用しようとしている。


ならば、必要なのは、最初に決めた計画を守り抜くことではない。


計画を変えたときに、何が失われるのかを理解したうえで、次の判断を下すことだった。

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