↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
観客のいない世界  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

288/450

第288章 開かないはずの扉

保管区画の扉が動き始めたのは、封鎖から二十三分後だった。


施設の監視映像には、扉の周囲に人影がなかった。


開閉装置も停止状態を示している。


それにもかかわらず、扉は数センチずつ内側へ滑っていた。


現地の管理担当者が遠隔操作を試みたが、応答はなかった。


「電源を切れ。駆動系統を止めるんだ」


指示を受けた技術員が、保守回路を遮断した。


扉の動きは止まらなかった。


むしろ、直後に内部から衝撃音が響いた。


一度。


二度。


三度目の音と同時に、扉の隙間から細い光が漏れた。


現場責任者は、退避を続けていた作業員を別の通路へ誘導した。封鎖された出入口を無理に開けようとする者はいなかった。誰かが中にいる可能性がある以上、隔壁を不用意に動かせば、内部の人間を危険にさらしかねない。


だが、保管区画へ向かった三人の姿は、監視映像から消えていた。


映像が途切れたのは、扉が動き始める直前だった。


女性運営責任者は、複数の監視画面を並べて確認した。


「通信障害ではありませんね」


「はい。施設内の映像系統は稼働しています。ただ、三人が通った区画だけ、記録が残っていません」


「映像が記録されなかったのか、それとも記録そのものが削除されたのか」


担当者は、すぐには答えられなかった。


調査班は、保存領域に残った断片を復元しようとしていた。しかし、欠落部分の前後には不自然な時間の飛びがある。単純な上書きとは違う可能性があった。


女性運営責任者は、施設の封鎖を維持するよう指示した。


「救援班は外側から進入経路を探してください。扉を開けるのは、内部の状況を確認してからです」


そのころ、主人公は直人から届いた情報を読んでいた。


北側廃棄施設は、数年前に一部の設備を移設したあと、管理区画を縮小している。保管区画もその際に整理されたはずだった。


だが、登録情報には移設前の配置が一部残っている。


「古い図面と、今の構造が違うのか」


主人公が尋ねると、直人は短く答えた。


「そういう可能性がある。少なくとも、公開されている図面だけで中へ入るのは危険だ」


直人は、施設の外周を確認できる知人に連絡を取っていた。主人公にも、現地へ向かわずに待つよう伝えている。


主人公は、その指示に従った。


今の自分が現場へ行っても、状況を変えられる保証はない。右手の回復も途中であり、内部の構造も分からない。焦って動くことは、相手に利用される可能性を増やすだけだった。


そのとき、匿名の通知が再び届いた。


『扉が開いても、中へ入るな』


主人公は、すぐに返信した。


『お前は誰だ。なぜ、この施設の状況を知っている』


既読表示はつかなかった。


数秒後、三通目の通知が届く。


『保管区画にあるものは、廃棄部材ではない』


主人公は画面から目を離さなかった。


それが事実なら、管理側の登録内容が間違っているだけでは済まない。誰かが、保管区画の中身を意図的に別のものとして扱っていたことになる。


だが、通知だけでは裏付けにならない。


彼は、届いた文章を直人にも転送した。


その直後、施設の監視画面に変化が起きた。


扉が完全に開いた。


内部は暗く、照明は点灯していない。


しばらく何も動かなかったが、やがて床に影が伸びた。


一人の人物が、保管区画の内側から姿を現した。


防護服は着ていない。


片手には、小さな金属製の容器を持っていた。


人物は扉の前で立ち止まり、監視カメラを見上げた。


そして、カメラの方向へ容器を掲げた。


次の瞬間、映像が途切れた。


女性運営責任者は、画面が黒くなったことを確認すると、担当者へ向き直った。


「現地の救援班を急がせてください。ただし、単独で入らせてはいけません」


その声には、先ほどまでとは違う緊張があった。


廃棄施設の内部で何が起きているのか。


そして、あの人物が持ち出したものは何なのか。


まだ誰にも分からなかった。


ただ一つ確かなのは、保管区画の扉が開いたことで、封鎖前と同じ状態には戻せなくなったということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。