巡り行く愛に恋せよ乙女
「まだ事件は終わってない。」
会議室で、水沼、山口、鈴木と共に近藤はこれから同様の事件が起こった際の対処法に関して話し合っていた。
近藤が進める。
「三枝ひなたが、化け物を発生させた手口は謎のままだ。化け物を武器の類に置き換えた時、入手ルートを知る者が、または三枝ひなたの仲間がいた場合、同じ犯行を起こす可能性は充分にあり得る。」
山口が口を開いた。
「入手、、、ルート。」
少し笑みをこぼしている山口に近藤は鋭く告げた。
「おれは真面目だ、山口。」
「違う、馬鹿にしたわけじゃない。外国ではどうなんだろうな、前例はあるのかな。」
鈴木が恐縮そうに、山口に反応した。
「、、、ないと思います。あ、調べた限りですけど、、、。」
水沼が床に目を落としたまま、つぶやいた。
「けいちゃんも劇団員の方も、言っていることにイマイチ具体性に欠けるというか、、、何か隠しているのか、、、。」
近藤が頭を掻いた。
「兎瓦けいは絶対に怪しいんだが、悪人の匂いがしないんだよなあ、わかるだろ?」
山口が諭した。
「それは理由にならんぞ。だが、結局犯人を捕まえたのも、兎瓦、、、か。」
鈴木が声控えめに言った。
「、、、異世界から連れて来たんじゃないすか?あはは、すいませんっ。」
異論を唱える者はいない。鈴木は意外に思った。
「ま、、、魔界、、、とか。あはは。」
異論を唱える者はいない。
ホテルのロビーで、けいは尼李柚宇と会っていた。長身の青年はやはりスーツに身を包んでいる。けいはすでに手にシュークリームを持っている。
「そりゃ大変だったな、けい。お疲れさん。」
けいがいきり立った。
「いや、軽いよ!!マシンガンのこと知ってたんだよ??、、、たくさんの人も巻き込んで、、、。」
柚宇は、アイスティーを飲みながらテーブルに置いてある雑誌を見ている。
「ああ。ま、行ったことあるんだろな、求喰川に。」
「そんな北海道みたいに簡単に行けるとこでしたっけ?」
「いんや。あの頃、お前を連れて行けてたのは、サトザクラが時代を繋げてたからだ。ま、いろんな偶然が重なってたよな。その女がいつでもマウヅに会わせてやるなんて言ってたのも嘘だろ。」
軽い雰囲気に落胆しながら、けいは返事した。
「はあー、なんて軽いんだべ。わたし、頑張ったのに。わたし、びっくりしたのに。」
雑誌をめくった柚宇は思い出したように言った。
「あ!そんなことより、お前!大丈夫なのか?演技の方は。」
けいは怒りを発した。
「もう!!!わたしは大変だったの!!!病院も行ってたの!!!心配してよ、ばか!!!」
「心配するわけねえだろ、最強イシアガン。まあ、じゃあいいや。ここで踊ってみ。」
「張っ倒す!!!こんなとこで踊れるわけねえべ!??っていうか踊りは無理!!みんな笑うもん。」
柚宇はニヤリと笑った。
「舞台の下じゃ笑われるぐらいのことしねえと、舞台の上で人に感動を与えることなんてできねえよ。上出来だ、けい。」
けいは、黙った。
しばらく何も言わなかったが、思い出したようにアイスティーを飲み干す柚宇に伝えた。
「そういえばあいつ、柚宇達のことも知ってたよ?」
「おれ達?」
「巫天のみんな。」
「そりゃ光栄だ。、、、ん?もう一回、その女の名前聞いていいか?」
「三枝ひなた。」
雑誌を置いた。
「ひなた、、、。サトザクラの店の名前か。、、、。その女、サトザクラのことは知ってたか?」
少し考えて、けいは返事をした。
「イルカ達のことは知ってたよ。知ってんじゃね?わかんない。」
「随分、精通してんな。あのイルカどもに面識があって、命があるんならそりゃちょっと妙だぞ。」
「やっと興味持ってくれた?」
柚宇は考え込み始めた。
「ねえ、、、マシンガンは元気かな。」
「いや、知らん。求喰川のクジラどもを統率してんのはあいつらだから元気でいてもらわなくちゃ困るな。」
「なんだべ、その素っ気ない返事。」
柚宇は突然言った。
「会いたいな、そいつに。会えるか?」
「へ?」
けいは、ゆっくり頷いた。
三枝ひなたは名を呼ばれた。冷たく暗い場所から、幾分明るいところへ案内された。
ガラスを隔てた向こう側に、スーツ姿の青年が座っている。見たことのない顔だ。ひなたは目を合わせず、大人しくガラスの前に座った。奥を見てみると、兎瓦けいと警視庁の近藤捜査官が立ってこっちを見ている。
ひなたはけいにウインクをした。無表情のけい。
座っている青年、尼李柚宇が喋り出した。
「三枝ひなたか?」
ひなたは、失礼にも柚宇には目を合わせず、けいの顔を見たまま返事をした。
「そうわかって呼んでるんじゃないの?あなたは誰?」
柚宇は笑った。
「ぎゃっはっは。おれが誰かは別にいいとして、だ。質問がある。」
「化け物の入手ルート?、、、ぷ。」
奥で近藤が真顔だ。
「いや、ダマのことじゃない。サトザクラ。」
ひなたの表情が変わった。柚宇に対して、急に全神経を集中させた。
「お。やっと目を合わせてくれたな。サトザクラ。知ってるか?」
「、、、。」
ひなたは、目の前の人物の狙いを嗅ぎ取ろうとした。だが、できなかった。
「、、、知ってたら?」
「じゃあ知ってるな。なんだ、素直な性格だな、意外と。ぎゃっはっは。」
「あたしが知ってたら、何?あんた何者よ。」
柚宇はくす、と笑い告げた。
「おれは惑星巫天『水素』担当、尼李柚宇だ。」
ひなたが、口をあんぐり開けた。
「へ?」
「いいリアクションだな、長年それが欲しかった。」
「阿修羅様?」
「それが欲しかった。」
ひなたは一回黙ると、まくし立てた。
「んなんで惑星守護色期巫天の阿修羅柚宇が、この時代にスーツ姿で会社員やってんの!??あ、あさ、求喰川の水素は??」
柚宇が意地悪な顔のまま答えた。
「ヨウフに任してる。」
「マウヅ達に??、、、!」
ひなたはけいの方を見て、小声で言った。
「おかしい、、、!兎瓦けいの周りはすべてがおかしい、、、!なんなの?え、本物の阿修羅様なの!?あたしめっちゃ無礼じゃん、どうしよう、、、!」
柚宇がうんうんと頷いた。
「それが欲しかった。」
ひなたは唖然として、柚宇の顔を覗き込んだ。
「ご、ごめんなさい、阿修羅様、、、。あんな口のきき方、二度としません。」
突然、気味が悪いほどしおらしくなったひなたを見て柚宇はもう一度言った。
「それが欲しかった!」




