影が現れ音がはびこるアリが現れ音がはびこる
病院の廊下を歩いて、角を曲がった。
突き当たりに窓があり、もうすでに暗いことに気づいた。
けいは窓から見える景色を見た。
「異常はありませんか?」
話しかけられて、けいは振り向いた。医者だ。
「はい!ピンピンです!」
医者は笑って応えた。
「よかったです。頭を打っていたので、、、。今夜、退院されますか?」
「はい!」
スタスタと医者は歩いて行った。
けいは、自分の手の平を見つめた。
そして、力強く握りしめた。
『これまでに栃木県宇都宮市、野木町、佐野市、東京都中央区でも本日、池袋で発生した未確認有機体による集団被害と類似性のある事故が』
居酒屋では、皆食い入るようにテレビに注意を向けている。
店員に誰かが聞いた。
「お姉さん、知ってた?」
店員は首を横に振った。
「知らなかったです、、、!、、、恐ろしいですね。」
オヤジが反応する。
「ねえ?めちゃめちゃ怖くない?」
テレビでは目撃者による未確認有機体の再現画が映されている。
「すっげえデカかったらしいよ?」
「ひどい人は首の骨折られたって。」
「ねえ、、、警察って何してたの?」
ちなつには帰ってもらった。
けいは一人、病院を出た。
街の光はいつも通りのようで、安心した。
おもむろに自販機でジュースを買うと、駅を目指した。
宇都宮へ向かう路線を探し、ホームに下りた。
電車が来た。
けいは髪を下ろしたままである。
ちなつにメールを打ちながら、電車に乗った。
三枝ひなたの言葉を思い出していた。
通り過ぎる駅を越える度、鮮明にひなたの表情と言葉が強く蘇った。
けいはジュースを飲んだ。電車の音を聴いていた。
けいは、
「イシアガン」
と言った。
けいの乗っている車両の電気が二度点滅した。他の乗客は気のせいかと思った。
けいは、夜の灯りを眺めた。
やがて、宇都宮駅に着いた。
頭を軽く撫でると、階段を登り改札を目指した。少し頭痛がした。携帯が震えた。
『着いた〜?』
ちなつからのメールだ。返事を打とうと、改札前で止まった。
改札の向こうに笑顔で立っている三枝ひなたがいた。
けいは、携帯をしまった。




