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ひなた  作者: Hiro
なかむら
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3/28

かまうなはまるな暴れるな闇の声

「なので、まあ、兎瓦さんにはまた後日、本庁までお越しいただいてもいいですか?その時は近藤、水沼、そして山口、鈴木という者がおりますのでこれからの対応に関して。」

けいは背筋を伸ばして答えた。

「はい。」

警視庁を出ると、最寄りの駅を目指した。

けいは携帯を見た。誰かからのメール、着信はない。携帯から視界を前方に移した。

地下鉄駅へ続く入り口に誰かいる。

けいは、はっとした。先ほどの女の子だ。

三枝ひなた。

「鶴の恩返しという話を知っているかね。」

ひなたははっきりとけいに向かって発した。

けいは、バッグを落とした。

「マシンガン?」

けいがか細い声で言うと、それに対しひなたが大声を出した。

「きゃっははははははは!」

我に返ったけいは、身をよじらし笑うひなたを見た。宝石を散らすようなきれいな声で笑う彼女。とりあえず状況に困惑しているけいである。

「かわいい!!今の顔!なに、ちょっとピュア過ぎ!」

ひなたはそう言うと、固まっているけいに一歩歩み寄った。

「こんにちは、けいちゃん。三枝ひなたといいます。ご機嫌いかが?」

急ににこやかな表情になったひなたを見て、けいは初めて発す言葉が見つかった。

「マシンガン知ってんけ?」

ひなたはさらに一歩寄った。近い。

「ちょっと遊びに行こうよ、あたしと。」

質問に答えていない。


「増渕部長!!!!!」

近藤の叫び声がフロアに響き渡った。座ったまま無表情で近藤を見る増渕。

何人かの視線が集中する。

「兎瓦けい帰したんですか!?」

必死の形相だ。

「ああ。、、、なんだ?」

「いや、おれも話が!」

増渕は表情を変えない。

「お前が出てきても尋問にしかならんだろ。絞っても何も出て来なかったという報告は嘘か?」

「違いますけど!ずっと監視していれば何か怪しい行動が!」

「何を理由にあの子を監禁するつもりだ。できるわけないだろ。」

近藤は黙ったが、目力(めぢから)は保っている。

「発生と関連はあるだろう。間違いなくな。ただあの子が故意に出現させているかは別だ。」

近藤は同調した。

「わたしもそう思います。」

「どうしたもんかねえ。」

増渕の眼鏡が光った。


池袋駅を降りたけいとひなたは、不思議な距離を保って歩き出した。というか、けいがやや後ろを歩いている。ひなたは特に気にしている様子ではない。

けいはちらちらとひなたの様子を窺っている。振り向いてひなたがコロコロと笑った。

「いやいや、なんで?一緒に行こうよ。」

「、、、。」

「ほらあ!」

ひなたはけいの腕を巻き込んで、引き寄せた。ごった返す人波の中で二人は密着した。戸惑うけい。

「ひ、ひ」

「、、、ひ??」

「ひ、、なたちゃんは」

「ひなたでいいよ!あたしもけいって呼ぶから!」

「ど、、どうだべ。」

ここまで唐突に自分の領域に入って来る人間は初めてだと、けいは思った。横目で見ると、ひなたは笑顔で歩を進めている。まったく何を考えているのか、わからなかった。

地上に出ると、ひなたは尋ねた。

「ねえ。ちょっとけいの力、試していい?」

けいは自分の首元に気配を感じた。

「きゃあああ」

どこから現れたのか、誰も確認できなかった。

湧いて出るには余りにも巨大すぎる鳥の形をした化け物が、突如、人混みの中で もがくように暴れ出した。人を跳ね飛ばし、長い首をくねらせては行き交う人の脇腹や、首を尋常ではない体重を乗せ突いた。悲鳴とどよめきが、血と舞った。

最初に思いっきり吹っ飛ばされたけいは、地面に頭を打ちつけ動いていない。

「きゃあ!」

「はやく!、、ひ!」

何メートルもある怪物は、口を開け鳴いた。

雷鳴のような音圧が、近くの人間の鼓膜を潰した。

鳴り響く人の悲鳴とクラクション音。

鳥はコンクリートに足をめり込ませると、再び鳴いた。

倒れたまま動かない人が、数人いる。

首を含めない地面からの体長で、3m近くありそうだ。

鳥は足を上げ、そばにいたけいを踏み潰そうとした。

無くなっていた。

見ていたひなたは笑みを浮かべた。

鳥の足が突然無くなっていた。そして、そのまま後ろに倒れた。地面で待ち構えていたのは、三匹のサメである。鳥の足をくわえ、一匹が裂くと、隣で同様に横這いになっている別のサメがそれを丸呑みにした。三匹目のサメがのたうつように地面を滑ると、倒れている鳥の頭部を食いちぎった。同時に二匹も追いつき、鳥の腹に噛みついた。鳥はビクビクと体を揺らすのみで、すでに意思が宿っている様子はない。

想像を絶する光景を前に、大勢の人間が一言も発していない。

池袋の中心街で巨大な鳥の死骸を、サメが三匹で食らっているのだ。誰が想像した休日だろう。

ひなたは、倒れたまま動かないけいを見ながら言い放った。

「あんたの力を見せろっつったのに。なめてやがんな。」

しかし、満足した様子だった。

出所が不明な鳥を食らったサメ三匹は、粒子に還るように大気に消えた。

ひなたは、けいを見つめたまま言葉を振り下ろした。

「あたしが犯人だよ、兎瓦けい。捕まえてみな。」

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