てづかよ
「わたしとひなた、どっちがいいの?」
不思議な光景だった。まず場所は不思議ではない。ホテルのロビーである。御茶ノ水駅にほど近い。
男女が向かい合って喋っている。これも不思議ではない。
不思議なのは、その男女のかもし出している感情の温度差である。
片や兎瓦けいは、真剣に何かを問い詰める表情である。真剣具合が握りしめられた拳に、にじみ出る。
一方、向かい合って座っている尼李柚宇は、涼しげな顔で漫画雑誌を読んでいる。休日のカフェを一人で満喫している様子と言って、差し支えない。そして、相手のけいの怒りメーターが上がってしまうのである。
「あ!!!答えないってことは」
「うるせーな、ウサギ。うるせーよ。だまれ。」
カン、と強い力でアイスティーの入ったグラスをテーブルに置いたけいは、顔を真っ赤にして怒っている。
「『おれの喜ぶことがわかる』とかひなたに言ったんだべ!???あのさあ!そういうこと言うとあの子勘違いするからさあ!」
「何の勘違いでもねえぞ?単にそう思ったから言ったんだよ。おい、けい。あとで拭いとけよ?そのお茶。」
すぐ隣りに座っていた中年の男性が席を立って、どこかへ行った。特に振り返ってはいないが、うるさかっただろうか。
「どっちがいいってなんだよ。ひなたとお前をなんで比べんだ?」
「いや、いいです、もう!オッケーです!仲良くしたらいいよ、うん。よかたね!ヨロコブコトガワカルコトメグリアエテ!」
「しょうがねえなあ、、、ほら。」
柚宇は突然、けいの顎を下からくすぐり始めた。けいはそれをどかさないまま、聞いた。
「それは何ですか?」
「なんかこれやったら喜ぶって本で読んだんだよ。鬼女のあの、よくお前らが飼ってんだろ。」
「ネコと一緒にしないでよ、ハゲ阿修羅。」




