第99話 居間の作戦会議
パパの温もりを感じる。
あんな話を聞いた後だからか、今こうやって抱きついていられることが、とても安心する。
わたしの中の不安も、解けていく気分。
「ねぇ、パパ?夜の魔獣退治、わたしも手伝うからね。」
パパの手がわたしの頭を撫でる。
優しさ、それと、葛藤もその手の震えが伝えてくる。
「ルナにあまり危険なことはさせたくないんだけど……、頼もしくなったね。前みたいに、一緒に狩りをしようか」
パパからの『頼もしい』が、とても嬉しい。
でも、今だけ甘えさせて。
懐かしい匂いに浸る。
小さな手が、わたしの頭を撫で始める。
ふふっ、レナちゃんも、お姉ちゃんが守ってあげるからね。
しばらくすると、ロリアンさんが家にきた。
使用人1stを伴って。
「嬢ちゃん、クラリッサ様の許可は出たよ。でも無理は厳禁だって。それと、……」
1stが前に出て頭を下げる。優雅な仕草だなぁ。
メイド服姿なのに、足だけ、黒光りする金属があしらわれたブーツ履いてる…。
かっ、かっこいい……。
「私もお手伝いいたします、ルナさん。クラウディア、と申します。クラウドでも、ディアでも構いませんので、好きに呼んで下さいませ」
1st……クラウド……。
うん、ディアさんだな!!
「ロリアンさん、ディアさん、ありがとう。これから、パパに詳しい話、聞くから一緒にいて?」
三人でパパに向き合う。
「パパ、魔獣のこと教えて。あと、これまでどう対処してきたのかも」
パパはあらかじめ頭の中で整理していたのだろう。手短にと前打って、必要なことを話し始める。
それによると、やはり相手はデヴォアインプ。数は30以上はいるだろうとのこと。それに加え、魔獣ではなく、猿型の獣。
デヴォアインプは社会性を持つから、群れの中に獣も取り込んでいるのだろう。
村の作物を襲い始めたのが、一カ月程前。
それから毎晩やってくるとのこと。
村の男衆が壁を作って追い払おうとするが、大人を避けるらしく、数が減らせない。
一度、様子を見に来たやんちゃな子供が襲われ、あっという間に引き摺るようにして連れ去られたらしい。
パパは、弓で少しずつ仕留めているが、キリがなく、次第に村の男衆が疲弊していっている状況だ。
「では、いかにして逃さず仕留めるか、という問題になりますね。ルナさん、学院ではどの様に習いましたか?」
ディアさんが、私に振る。
「んー……、罠、囮、あとは魔法で行動阻害、なるべく複合して、一回で仕留める。知恵はあるから、学習しちゃって二回目は効果が薄れる……だったかな」
パパが首を振る。
「罠は何度か使ったけど、もう引っかからなくなってる。それに仕掛ける時間も資材も乏しい」
それじゃあ、囮か。
潰していい家畜があればいいけど、この村、畜産やってた記憶ないな……。
「じゃあ、魔石でもばら撒こうか。魔獣は魔石を食べるから、囮になるんじゃないか?」
ロリアンさんの提案。
一箇所に集めて、囲む。村の男衆をかき集めれば、無理な案じゃない。
あとは、囲みの内側で、わたしたちが仕留めていけばいい。
ディアさんが軽く頷く。
「現状取れる手段としては、それくらいでしょう。これで無理なら、領主様に兵を出してもらうしかないですね」
そうなると、時間がかかりすぎる。
それまでに村が甚大な被害を受けることになる。
「やろう、パパ。今はパパ一人じゃない。ロリアンさんとディアさんが居てくれる今が、その絶好の機会だよ」
眉間にシワを寄せ、考えを巡らせているパパ。
その視線が、ルカとレナ、ママに飛ぶ。
頷くママ。
鋭くも優しい視線がわたしを貫く。
「それでいこう、皆を守るために。ルナ、手伝ってくれるかな」
もちろんだ!
パパはこの村の凄腕ハンターで、わたしはそのパパの娘なのだ。そして、ルカとレナのお姉ちゃんなのだ。
わたしは力強く頷いた。




