第97話 村の異変
なんで起きてこないのよ!パパ!
こうなったら、私が起こしてやる!
胸に飛び込んで、匂いを嗅いで身体を擦り付けてやる!むふっ!
家に駆け込もうとしたら、ママに止められた。
「ルナ、待ちなさい。パパは毎日、夜通し働いてて疲れてるのよ。寝かせてあげなさいね」
……え?夜通し?
そんな毎日夜勤しないといけないくらい、実家困窮?てか、時給制じゃないか。獲物取れないの?
その割にはママもルカもレナもそこそこ綺麗な格好してるけど。
「ルナさん、急に駆け出すのは淑女のすることではありませんよ」
おおっと、クラリッサ様が追いついたようだ。
えーと、紹介しなきゃ…
「貴方はナタリーですね。初めまして、グラナド伯爵の妻、クラリッサです。クララでも、リッサでも好きにお呼びになって?とても利発な息子さんと娘さんね、羨ましいわ」
無表情なのにフレンドリーといういつもの自己紹介ありがとう、クラリッサ様。
そして、ママの名前がナタリーっていうの、初めて知ったよ。
我ながら薄情な娘だ、まったく。
「クララ様、お初にお目にかかります。ナタリーです。ルナが大変お世話になっているようで、ありがとうございます」
ママ、お貴族様相手に動じないんだね……。
ひょっとして学院にいってたのかな?
「こちらは、息子のルカ、こちらは娘のレナです。お見知りおきを……」
「ルカ、です!」
「れな、たよ〜」
子役オーディションかな?
クラリッサ様、目に見えて上機嫌だね、頬がピクピクしてる。
「貴方達には、お土産があります。受け取ると良いでしょう。ルナさん、今日は家族水いらずに過ごしなさい」
そう言って踵を返して馬車に戻っていった。
不器用だな、クラリッサ様。
本当はもっと話をしたいって顔に書いてあるのに。気を使ってくれたんだな。
ロリアンさんが山ほどの荷物を持ってきた。
あれ、全部お土産……?
「それで、なんでパパは夜通し狩りをしてるの?」
ママは少し不安げ。
なんだろう、ここで『夜型になったの』とかだったら滞在中に矯正するけど。
「最近ね、夜に魔獣が現れて、農作物を荒らすようになったの。子供くらいだと襲われちゃうのよ」
なんですって?
「昼間はこないんだけど、夜になるとね、数が多くて、パパ一人だと追い払うのが精一杯らしくて……」
なんということだ……
許さん……
畑を荒らし、安眠を妨害する獣どもめッ!
駆逐してやるッ!チェストゥ!!
向こうが数ならこっちも!
「ロリアンさん、手伝ってもらえないかな…?夜に魔獣がでるの。パパだけじゃ対応できないって」
荷物を置いたロリアンさんに、上目遣いでお願いする。
「わたしも、頑張るけど…、不安で…。パパも毎日仕事で、身体壊さないか心配だし……」
ロリアンさんは私を見て、ちょっと顔を赤らめて顔を背ける。あれ?ダメ?
「じょ、嬢ちゃんの頼みは断れないな!クラリッサ様に確認はとるけど、あの方は駄目とは言わないだろう」
ロリアンさんの分厚い手が頭に乗せられる。
顔は背けたまま。
「それとな、嬢ちゃん!自分の見た目、自覚したほうがいいぞ。嬢ちゃんのその顔で上目遣いされるとな、破壊力やばいんだよ」
え?わたしそんな壊滅的な顔してた?吹き出しそうなの我慢してるの?
変顔はしてないよ?!
「美少女って自覚、持っておけな。狂う男共が現れちゃうから」
え……?び、しょうじょ…
うそ!ほんと!?え、え、ええっ!
顔が、顔が………熱い!!




