第94話 帰郷は刀とともに
ミラちゃん騒動の後、屋台巡りしてる場合じゃないねってことで、領主邸に戻って領主様に報告することになった。
報・連・相、大事ね。
「……そんなわけで、助けたミラって女の子の護衛の人の名前が、フェンドールという方でして。」
わたしはロリアンさんに後の解説をお願いする。
「恐らくは、ベルカイト王国の黒騎士フェンドール・ジルタナではないかと。前に調べた時は近衛になっていたはずです」
領主様が思案気。
「だとしたら、王族の方が……?来訪の知らせはきておらんから、お忍びということになるのか……。ミラと名乗ったと言っておったな、ならば、ベルカイトの第四王女、ミラナリア王女だろう。年の頃も一致する」
やっぱり王女様だったか、ミラちゃん。
デコピンしちゃったけど、向こうは身分明かしてないし、不敬罪にはならないよね?……ね?!
「あなた、レイティシア殿下の婚姻絡みだと思いますわよ。今、王都にベルカイトの第二王子、エルディーン様がいらっしゃってましたから」
ん?クラリッサ様、何気に強い情報だしてきたね。今、レイティシアちゃんデート中なの?
「エルディーン王子とミラナリア王女は同母でありますから、仲が良いのでしょう。エルディーン王子の婚約者を見に来たのではないかと。反対されないようにお忍びで」
もしそうなら、隣国の皆さん、大混乱だろうね……。まあ、護衛の人が何とかするのか。
あのミラちゃんの様子だと、たんに遊びに行く口実なだけな気もするけど。
しっかし、クラリッサ様なんでそんなに把握してんの?実は元諜報とか?MI6?御庭番?
情報網やばくね?
これ以上は、特に追加情報もないので、推測のまま、報告は終わった。最後に領内の治安強化が指示されただけ。
剣士隊、がんばれ!領内で他国の王族が襲われたとかなったら面目丸潰れだからね!
翌日は、いよいよ故郷の村に向けて出発!
ドレス回避の為に、怖いけど加州清光を持って。
加州清光は王都に戻るときに受け取ろうかなって匂わせたら、使用人の皆さんがコルセットをヒラヒラさせてたから、慌てて腰に差したよ。
さすがに御者台に乗せてもらうわけにいかず、馬車の中へ。クラリッサ様との歓談タイムだ。
当然のようにアマテラスはフードから出てきてクラリッサ様の膝の上で寛いでいる。
その時、馬車が違う馬車とすれ違う。
窓越しに見える。
飾り気はないが丈夫そうな馬車。
護衛が馬に乗って囲んでいる。
目立たないようにするためか、単なる傭兵みたいな格好。
走馬灯がその容姿を捉える。
そのうち一人には、はっきりと見覚えがある。
フェンドールと呼ばれた男の人。
思わず刀に手が伸びる。
鯉口を切る。
なぜか緊張してしまう相手。
たぶん、走馬灯全開にして、加州清光を持っていても、勝てない。そんな直感。
って、随分と幕末京都の武装組織思考になってるな、わたし!いかんいかん。物騒な考えは、ポイッだ。
チンッと刀を収めた音。
これから村に帰るんだから、楽しいことを考えよう!ルカ、大きくなってるかな!




