第93話 嵐の前触れ
事の次第っていってもねぇ……。
倒されたとこみて、肉串食べさせて、デコピンしただけなんだけど。
「ミラちゃん、この人達はあなたの知り合い?」
これだけは確認しとかないとね、リアル人攫いなんてこともあるかもだし。
「彼らは、私の護衛……ううん、知らないやつらよ!」
あ、保護者たちね、オッケー、オッケー。
手を挙げて抵抗しない意思を見せて、後ろに歩いていく。ロリアンさんも同じ様に。
ミラちゃんも。
……なんでついてくんの?ミラちゃん?
「あの〜、皆さん、この子のお迎えですよね?何とかしてくださいます?」
一番偉そうな人が腰の剣に手をかけたまま、一歩前にでる。
私も思わず腰に手をかけるが、今日は丸腰だ。手が宙を泳ぐ。
さすがにロリアンさんが反応して、わたしよりも一歩前に出て制する。
「その方ら、お嬢様を拐かして連れ去ろうという腹か?」
なんでそうなる!!
「突き飛ばされて倒れるところを見たから、駆け寄っただけですよ!お腹空いてたみたいで、肉串食べさせましたけど、それだけです!!」
デコピンのことは言わない。
ややこしくなる。
「またも食べ物で懐柔したのか……なかなかやってくれる……」
過去に一体何があったんだよ。
お前らちょっと、頭冷やせ。
それからミラちゃんも、わたしを盾にするのやめてもらえるかな?
「ねぇ、なんで帰りたくないのよ、ミラちゃん」
ミラちゃんが説明して帰ったらそれで終わりなのよ?わたしの屋台楽しむ時間がどんどん削れていってるのよ?
「だって、遊びたいし……。勉強とか、嫌…。じゃない、えと…帰るところないから……よ!」
正直だな。なんだか憎めないぞ。
「と、おっしゃってますので、少しはハメ外す時間作ってあげたら、こういうことは無くなると思いますよ?」
あ、なんか袖口、ギュって握られた。
言えなかった事を言ってくれたって感じ?
「ミラお嬢様、こちらへおいでください。ちゃんとミラお嬢様の話も聞きますから……」
その言葉に、ミラちゃんは私の顔と護衛の人の顔を交互に見上げたあと、ゆっくりと護衛の人のところに歩いていって。
「……本当に?フェンドール?」
護衛の人達に緊張が走る。
またミラちゃんが逃げ出すのを警戒してるのかな?
でも、これくらいの護衛を撒くなんて、ミラちゃんも大概よね。
なんでかロリアンさんも緊張してるっぽい。なんで?
フェンドールと呼ばれた人が、ミラちゃんの手をつなぎ、こちらを向く。
「誤解があったようだ、申し訳ない。事情は話せないが、ミラお嬢様に手助けいただいた事は感謝する。礼は後日必ず……」
「お礼なんていいですよ〜。大したことしてないし。ミラちゃん、気をつけてね、大人を困らしたらダメだよ」
こういうのは後腐れなく、ここで終わりにしたほうがいい。
手を振りながら、ロリアンさんと、その場を離れた。
ていうか、ロリアンさん、ちょっとは護衛らしいことしてよ!
見上げると、いつになく思案気なロリアンさん。
ん、どうした?
「……嬢ちゃん。またすごいの引いたね」
え?なに?不穏!アマテラスまた何かしたの?!
「フェンドール。聞いたことがある。フェンドール・ジルタナ、隣国、ベルカイト王国最強の黒騎士。有名なんだよ。今は近衛をしてたと思う」
え?
「近衛ってことは……」
ロリアンさん、天を仰いでるよ……。
「ミラって子は、王女さまかそれに近い立場だね……」
……王族はもういいよぉ…。レイティシアちゃんだけで……。




