第92話 嘘が苦手な少女
ロリアンさんが持っているお肉の匂いが届くや否や、少女はガバッと起き上がって、ロリアンさんが差し出す肉を奪い取るように飛びついて、がっついている。
よっぽどお腹すいてたんだなー。
でも……、なんかチグハグなんだよね、この子。
薄汚れた服だと思ったけど、肌艶や髪の整え方は貧民のそれじゃない。
あきらかにいいとこの子だ。
迷子になったにしては、服がボロすぎる。
ちなみに、影があるのは真っ先に確認した。
精霊様ではない。
家出かな?
でも、家出だとしたら、このカンギルの街で、誰も知らないってことはないだろうしね。
「何よ、ジロジロ見て。私はただの貧民よ!」
うん、貧民じゃないのは確定。
「あなたのお名前は?わたしはルナ。そのお肉はわたしが買ったものだけど、御礼、いえるかな?」
少女は何を言っているのかわからないという顔をする。アマテラスがよくする顔だからよくわかる。
「ふん!私は、ミラナ……、ミラよ!そう…、これ貴方のなのね。わかったわ!じゃあ、貴方にこの街を案内させてあげるわ!」
んん〜、お貴族様の子かなぁ〜、それなりに高位のぉ〜。平民に対してこういう態度とる子、学院によくいたよねぇ、終わり際は修正されてたけど。
「ロリアンさん、知ってる範囲でこの子がどこの貴族家の子かわかる?」
ロリアンさんが少女をまじまじとみる。
少女がぶつぶつ言いながら、居心地悪そうにする。ロリアンさんはそんなに強面じゃないけど、怖いのかな?
「ん〜、赤みがかった金髪、ブルーグレーの瞳……。憶えはないなぁ」
んー、街の案内頼むってことは、この街の住人ではないんだね。
「ねぇ!無視するんじゃないわよ!」
あ、いかん、無視してたわ。でも、その言い分はね、ちょっとお仕置き。
「いたぁぁい!」
すっと額に右手を出して軽くデコピン。
「御礼をいいましょうね、ミラお嬢様?」
自称ミラちゃんは、おでこを押さえて、ハッとした顔をする。
「な、なんでそれを?!」
うん、自白いただきました。
お嬢様確定。
「お付きの人、いるでしょう?置き去りにしてきちゃったの?」
ミラちゃんはフンッと鼻息をして、よそを向く。
「あんな奴ら、ちょっと変装して、走り回ったらすぐ見失うのよ……!!違うわ!私は貧民なのよ!」
嘘つけない子だなぁー!
なんか面白くなってきた。
「それじゃあ、こんなにかわいい貧民の子はこんなところウロウロしてると人攫いに会いますからね。孤児院にいきましょうか」
ちょっとの脅し。
わかりやすくオロオロしだした。
「そ、そんなの、あなたとそのデカいのが追い払えばいいのよ!街を案内しなさいよ!」
もう一回、デコピン。
「あぃぃい!」
「あのね、お嬢様?わたしたちは、あなたの家来じゃないのよ?誰でもあなたの言うことを聞くなんてことはないのよ?そこは勘違いしないで」
それにだね
「あなたのお迎えが来てるみたいよ?」
囲まれてる、5人に。
皆腰の剣に手を当ててる。
一度目のデコピンの後くらいから、視線を感じはじめてたけど、5人もいたか。
少なくとも1人は凄く強い。
囲まれるまでわからなかった。
「お嬢様から離れてもらおうか。事の次第によっては、斬る」
刃傷沙汰を仄めかすとは穏やかじゃないね。
でも、どうしよう?




