第86話 卒業の為の実力行使
年に2回の実力試験。
この試験の結果で、昇級が決まる。
中等部の上は高等部になるけど、専門教育になるので、そこに行かなければ実質、中等部の試験は卒業試験だ。
とは言っても、筆記はまるで問題にならない。
なんたって初等部入学の時の試験で満点とったし。
というより、前世で高校生やってると、簡単なんだよ、これ。
数学なんて、精々簡単な方程式モドキ程度までしか出題されないのだから。
作文は、毎回、小説だ。
書くたびに、女性教官が回し読んでいるらしい。
リーンさんはもう諦めたように、感想を伝えてくれる。
書いてるのは、『王都学院恋物語 異聞』。
男性側からの視点で本編を俯瞰する作り。試験毎に違う人物の視点にした。
今回は、わたし調べで最も人気のあるキャラ視点だ。賛否巻き起こるだろうな。
一連の最終作だから、タイトル横に、署名もいれた。
卒業して逃げるから問題はない。卒業できれば、たぶん。
美術は相変わらず、色の名前とお絵描きだ。
毎回、色の名前、答える必要あるの?
そう思ってたら、たまに適性が増えたり、変わったりするケースがあるらしい。
色覚特性って生まれつきだと思ってたけど、ここじゃ違うんだね。
ちなみに、わたしは最後まで、全部の色がわかった。ショボン。
お絵描きは、風景画は初回だけで、それからは人を描いてた。諜報からのお誘いとか怖すぎて。
レイティシアちゃんとかマリーちゃんとか。
一回だけ、マリーちゃん描いてた時に、マリーちゃんが見てしまったらしく、解答用紙が返却されたら欲しいって言われたことがある。
カンニング、だめよ?マリーちゃん。
ここ最近は、アマテラスを描いてる。
ちゃんと影もつけてね!
今回も、もちろんアマテラスだ。
不穏な笑い顔にしてあげよう。学院、燃やさないでね?
筆記はこれで問題はない。
手加減なしの全力でやりきった。
やり過ぎたかもしれないけど、大丈夫。
問題は実技だ。
剣術は問題ない……、と思う。
マナーも、クラリッサ様に仕込まれてるから、大丈夫。
一番の問題は……、『ダンス』なんだよね……。
走馬灯って、ダンスにほんと向いてないんだよ。
どんなに鋭くて早いリズムも、ぼんやりした音の塊にしか聞こえないから、タイミング取りにくいし、早く動けばいいってもんでもない。
誰がパートナーになっても、動きがあわない!って嫌がられるんだよね。
一度だけ、侯爵家のポッチャリマンとパートナーになったけど、露骨に嫌そうな顔をしやがったし。お前だって、どっこいどっこいだろうに!
わたしも汚物を見るような顔をして差し上げた。
今回のパートナーはと……。
君か、クリストフ。
嬉しそうな顔をして、君、ホントにわたしのことが好きなんだね。
でも、それはきっと麻疹のようなものだよ。
クリストフには、ちゃんと相応しい女性が現れるよ、わたしみたいな、ちぐはぐな女の子じゃなくてね。
でも……
これで卒業したら、君と踊る機会はなくなるね。一応今は、主従関係なんだけど、わたしはこの後、レイティシアちゃんに仕えることになる。
隣国で過ごすことになる。
今だけが、こうやって手を取れる猶予期間なんだ。この時間だけは、君の初恋に付き合ってあげようかな。
行こうかクリストフ。
モラトリアムなダンスフロアに。
パートナー、しっかり勤めてよね。




