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第82話 野営すなわちグルキャン

焚火の火を囲む生徒達。

薪の爆ぜる音と共に、火の粉が舞い散る。

火を見ていると、心が落ち着くらしい。


別の物が無ければ。


火を囲む生徒も、教官も、皆、目をギラつかせている。漂う匂いに唾を飲み込む音がする。


ファングボアの肉。

切り分けられ、枝に突き刺し、焚火の側で火に炙られていた。


わたしと、マリーちゃんで倒した二頭。

特に、首を落とした方。いい感じに血抜きがされて、食用に耐えると判断されたのだ。

どおりで、ゴリラが嬉々として野営を宣言したわけだ。帰ると、解体する時間も調理する時間もないのだから。

(ゴリラが倒したのは、内臓とごちゃ混ぜになってしまっていたので、忌避された)


魔法で土煙が拡散されたので、誰が倒したのかは見られておらず、美味とされる肉の前に有耶無耶にすることができた。

グラナド家には悪いけど、刀は無計画に公にするのは危険だ。最悪、ガゼムさんが誘拐されかねない。


本来は、携行食だけの味気ない野営の食事に、脂の乗った肉が加わる。

野営で不満を述べていた生徒も掌を返したように、今か今かと肉の焼き上がりを待っている。

なんと、レイティシアちゃんもソワソワしてるのだ。こんな野性味溢れる食べ方には縁がないだろうから、珍しいのかもしれない。


遠火でじっくりと熱を通され、ゴリラが焼き上がりを確認し、合図がされると、皆が一斉に肉に手を出す。


湧き上がる喜びの声。

熱さで火傷しながらも、笑い合う声。

酒がいるな!という、教官の声。リーンさんにちくってやろう。


わたしも自分の分に手を伸ばし、食べようとして、止める。

腰からナイフを取り出し、少し厚めに切っていく。

切り出した肉片を、綺麗な皿に乗せ、声をかける。

「アマテラス?食べるでしょ?」


フードから頭を出し、スンスンと周りの匂いを嗅ぐアマテラス。わたしの頬を一舐めすると、切り出した肉のところに降りた。


「まだ熱いと思うから、しっかり冷めてから食べなさいね?」


「な〜」


アマテラスは一鳴きして、端の方を確かめるように舐めながら食べ始める。

それを見ながら、わたしも一口。


……美味しい。村でも食べたことあるけど、住んでる環境の違いなのか、脂が載って、臭みもない。


ひょっとしてアマテラスは、これを食べたいからファングボアを連れてきたのかな?


食べられないような状態で倒してたら、また連れてきてたんだろうか……、恐ろしい。


アマテラス分を切り分けつつ、食べていると、マリーちゃんとレイティシアちゃんがやってきた。


向かい合って食べるのかな、と思ってたら、三人で背中を合わせ、もたれるように座った。

びっくりしたわたしの様子に、二人がクスクスと笑う。

王女様がこんなことしていいのかな?

でも、なんだか楽しい。

伝わる体温。

友達、仲間、大切な人達……


ああ、わたしはもう、この二人が大好きなんだな。どうしたって、この二人を最優先に考えちゃうんだ。


はじめは、巻き込まれた感じだったけど、関わり、交わり、危険も、楽しみも共有した。


「……アマテラスのおかげかな。これは大吉でいいよ……」


この後は、少人数用の天幕で、一緒に寝ることになる。


たぶん、三人して眠れないだろう。

ガールズトークの時間だ。


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