第81話 演習終了!でも、野営
ファングボア騒動、いや、アマテラス騒動が一段落し、演習は終了となった。もともとの予定は二泊三日だったけど、怪我人もそれなりにいるのと、メンタル的に危うい生徒もいるので、切り上げることになった。
ファングボアに跳ね飛ばされた人もいたしね。
わたしは、今、めそめそしながら、マリーちゃんに抱きしめられている。
いや!怖かったもん!
向かってくるトラックみたいだったよ!
走馬灯回ったもん!…常に回ってるけど。
マリーちゃんも泣いてる。
泣きながらわたしの頭を抱えて、撫でてくれてる。
号泣が、しゃくりあげるような呼吸に変わり、そして、鼻を啜る程度に、しだいに収まっていく。
マリーちゃん、暖かい、柔らかい、いい匂い……
わたし、ここに住むぅ……。
落ち着いてくると、疲労が表に出てくる。
最後、全力で動いちゃったし。
筋肉が痛い。汗、気持ち悪い。
このまま、温もりに包まれて眠っちゃおうかな、って思ってたら、横から声をかけられた。
誰だ!無粋な輩め!
「マリー。助けてくれてありがとう。ルナも、そんな小さい身体で、立ち向うなんて、とても素敵だったわ。あなたに救われたのはこれで2回目ね」
あ、レイティシアちゃんだった。
さすがに無視はできない。
至福の温もりが離れていく……
「レイティシア様、ご無事で何よりです。マリーの魔法がなければ、わたしも危ないところでした。マリーのおかげですね」
マリーちゃんが顔を真っ赤にしてあわあわしてる。
「い、いえ!私も、こ、怖くて固まってしまっていたのです!ただルナが前に立った瞬間に、頭が真っ白になって……、なんとかしなくてはと…。」
いつもしっかりしてるマリーちゃんが動揺……
レアスチルだわ……。
で、だよ。
この騒動の落とし前は、どうつけてくれるのかね、アマテラス。
しれっと、いつの間にかフードの中に収まってるけどさ!
「な〜?」
何も知らにゃいよ?じゃないよ?
ファングボアなんて危ういモノ引き連れてきおって、死ぬかと思ったよ?
まったくもう、大人しくしててよ……。
乾燥肉をフードにぽいっと入れる。
レイティシアちゃんが、屈んでわたしの耳元で囁く。
「やっぱり、これ精霊様が?」
わたしは軽く頷く。
「いなくなったと思ったら、森から出てきたので、たぶんそうだと思います」
フードから顔を出した気配。
肉咥えたまま。
あんた、王族の前だよ?普通、不敬罪だぞ?
マナー講師が激怒するよ?
「ふふっ、可愛らしい精霊様だこと。お母様が言っていた通りね。お母様の時よりも手加減して頂いたのかしら?」
可愛らしい?見た目はね。
やることはエグいよ?
…って王妃様の時は何をやったのよ。
王妃様は大吉の方のアマテラスよね?
大吉でもこれより酷かったって……?
頭にハテナマーク飛ばしているわたしに、レイティシアちゃんが続ける。
「わたくし、地竜が見れるかと思って、少し期待してましたのよ?」
やめて?ほんとに、地竜ってなによ。
こんな学生沢山いるところに、地竜なんて、死人がでるよ?
アマテラスも呼ばないでよ?
「ぅ〜……なっ!」
その、思い出した!もしくは、それがあったか!みたいな声もやめようか、不穏だから。
ほら、もう演習終わりだし、街に帰るよ!
ほら皆も、準備!準備!
「では、今日はここまで。ここに野営するからな。天幕をたてるぞ!」
あぁ、空気が読めないゴリラめ……。
皆、え?って顔してるぞ?
帰りたいんだよ。
「ふふふっ!お外でお泊りなんて、久しぶりだわ!楽しみね、マリー、ルナ!」
……楽しみにしてる人がここにいたわぁ…




