第76話 説明と経験の不足
おそらく、またアマテラスが何かやったのだ。
ガゼムさんじゃない誰かが鉄を打っている夢を見せた……。そんな事もできるのかね、君は。
アマテラスが作刀について、知っていたわけじゃないだろう。もしそうならもっと早くに刀があってもおかしくないし。
いや〜な、予感。
もしかして……いや、まさか……。
「ガゼムさん…。その夢の人ってどんな人、どんな格好してました?」
ガゼムさんは見上げて記憶を探るように唸りながら、声を絞り出す。
「たしか……、異国の服、青い色の。作業しやすそうだったな……。俺よりもだいぶ年上って感じだったな!そこにいる他の誰かと話してる雰囲気だった」
確定。わたしが見てた動画だ。
何してくれてんの、アマテラス。わたしのプライベート、聖域たる記憶を勝手に公開するんじゃないよ。
個人情報漏洩事故だ、バイトテロだ。
まあ、わたしの記憶とか誰も思わないで、変な夢で終わるんだろうけど。
お願いだから、ダイアには見せないでね?
もう手遅れな気もするけど。
いざとなったら、知らぬ存ぜぬで通すしかあるまい……。
ガゼムさんは、これから鉄を組合せて接合し、形を作っていくとのこと。
といってもひたすら熱して叩いてを繰り返すだけだ。退屈なので、許可を貰って他の人の作業も見せてもらうことにした。
こういう職人さんの仕事を見るのは初めてだ。
武具を作る人もいれば、家具や、何に使うのかまったく想像できないのもある。
皆さん、仕事に集中してるから声かけれない。
だんだん大物から、小物へと作っている物のサイズが小さくなっていく。
その時、一人の小柄なお爺さんが、おいでおいでと、わたしに向けて手を振った。
お爺さんの手元には、アクセサリーっぽい細工品。バングルとチャームかな?
「お嬢さんに、これをあげようかの。昨日お嬢さんを見て、孫娘の小さい頃を思い出してほっこりして作ったんじゃ。余り物の端材で作ったもんじゃがの」
きゃーーーー!前世も含め、男性から初めてアクセサリー貰ったわ!!
お爺さんだけど!でも、嬉しい!!
「お爺さん!ありがとう!とっても嬉しい!」
思わず抱きついちゃったよね。
お爺さん、ふぉっふぉって、笑ってる。
これはアマテラスの幸運側のイベントかな?
それなら、ちゃんと還元せねば。
「このチャームとバングル、同じ花のモチーフだよね?チャーム、この子、アマテラスのリボンに着けてもいい?」
足元にいたアマテラスを抱えて、お爺さんに聞いたら、好きにすればええ、との言葉を頂いたので、アマテラスのリボンに着けてあげた。
うん、いいとこのニャンコになった。
精霊様だけど。
アマテラスも満更でもない様子で尻尾をユラユラと振る。
そんなこんなでしばらく見物しながら、ガゼムさんのところに戻ると、鉄の塊は見事に刀の形になっていた!
あれ?でも……。
「……ガゼムさん、これ、長すぎ……」
そう、太刀くらいの長さ。
絶対抜けない。手の長さ足りない。
一々鞘を捨てるわけにもいかないよ?
ガゼムさんは、こんなに伸びるとはと、苦笑いしながら弁明する。経験不足は仕方ない。失敗は付き物だしね。それとこれも……。
「反りはこの段階ではいらないよ?水に突っ込んだ時に刃の部分が膨張して反りになるらしいよ」
沈黙するガゼムさん。アマテラスがふぅ、とため息のように声をだす。
そういや、ノートに書いてなかったかも?
「……嬢ちゃん…、それも、あれに書いといてくれ……な?」
説明不足、すまぬ。




