第75話 猫と鍛冶師
さて、一通り吐き出せる知識は吐き出しきった。
あのノートに書いてない知識は、有名どころの刀剣名と逸話と擬人化したときのビジュくらいだ。
作刀には必要ないだろう。
ガゼムさんを含む三人の鍛冶師がノートを囲んで、あーだこーだ言ってる。
この分なら、前世ではとても手にする機会が無かった日本刀が今世で持てるかもしれない。ワクワクする!
侍女になっても、腰に差してていいのかな?
ところで、なんで君もノートを囲んでいるのかね、アマテラス?
クラリッサ様にじゃれついていたんじゃなかったのかな?ここは、炉とかできたての剣とかあって危ないから、部屋で待ってなさいよ。
そんなわたしの想いをよそに、アマテラスは鍛冶師の話を聞きながら、「なっ、なっ!」と、声をあげ、ノートをピシピシと叩く。
ガゼムさんは、叩いているそのページを見て、「お、そうだった!それだな!」と何か納得のご様子。指でアマテラスの首筋を撫でてる。いや、そこに猫がいることについて、疑問持とうね?
しばらく、鍛冶場で待ってた。
ここめっちゃ暑い。当たり前だけど。
アマテラス、干乾びちゃうんじゃないかな?わたしより炉に近いとこにいるし。
「アマテラス、そこは暑くて身体に悪いから、こっちにおいで」
アマテラスは、こっちを見てまた、「何言ってんの?」みたいな顔をした。心配してんだよ!。
でも、鼻息を鳴らして、わたしのところに寄ってきて、肩にのった。
「おお!嬢ちゃん、悪い、ずっとここにいるのは大変だからな。ちょっと試しでやってみるぜ。また明日、来てくれ」
そう言うガゼムさんに頭を下げて、鍛冶場を後にした。
その日の夜は、領主様とグラッドさんが、討伐演習について、あれこれ教えてくれた。
一番の脅威は、ブッシュウルフではなくて、無謀な生徒なんだとか。
特に魔法を使える生徒。
他の生徒を巻き込んでしまって、演習後、関係が悪くなったりすることはザラなんだそう。
怖い怖い。なるべく後ろの方にいよう。
剣士が後ろに下がってたらだめかもしんないけど。
でも、やっと魔法が見られそう!
魔法があるって知ってから、なんでか目にする機会、無かったからね!
翌朝、朝食を食べた後、鍛冶場に向かう。
今日は昼過ぎにまた学院に戻らないといけないからね。
鍛冶場に着くと、ガゼムさんがゲッソリしてる。
もしかして、徹夜?ダメだよ、ちゃんと寝ないと。
「ガゼムさん、おはようございます。ひょっとして一晩中頑張ってたんですか?」
ガゼムさんの前には、小さめの鉄のインゴットが並んでいる。
「いや、そうじゃねえんだがな。寝てたらよ、俺じゃねぇ誰かが、鉄を打ってる夢見てな。やたら上手く作るもんだからよ。ちぃとばっかし早めに起きて仕事してたんだよ。なかなか上手くいかねぇけどな」
ガゼムさんは、そう言いつつも満足そうに鉄を見てる。いい出来だったのかな。
その時……
それまで、スンスンと鉄の匂いを嗅いでいたアマテラスがわたしを見て、笑ったような顔を見せた。
……なんかやったわね、アマテラス……。




