第77話 出来ちゃったよ
ノートに書き足し、ついでに思い出した、鞘や柄の事も書いてたら、その日は時間切れとなった。
馬車に押し込まれ、学院の寮へと向かう。
アマテラスはガゼムさんのとこで作業見てるかなと期待したけど、馬車に乗る頃にはフードに収まっていた。
それから2週間、ガゼムさんは試行錯誤を繰り返したようだ。毎日のように届く手紙、もとい質問書には、焼き入れしても反らないだの、ヒビが入っただの、鉄がだめなのかだのと、わたしにもわからないことを書き連ねていた。
そこからは、職人の勘だよ、と書き記して返した。我ながら酷いと思う。
ガゼムさん、ガンバ!
この間、学院は入学からの騒動が嘘のように平和だった。
まぁ、相変わらず推し論争と、ちぇすとの怒号が鳴り響いているけど、平和。たぶん。
実地討伐演習の話題も増えて、班分けも行われた。マリーちゃんと一緒の班になりたかったけど、剣術組と魔法組は別班になるのでかなわなかった。
半ば当然のように、薩摩班に組み込まれてしまった。わたしは示現流しないよ?
さらに2週間が経ち、実地討伐演習が1週間後に迫ったある日、グラナド邸から手紙が届く。
明日の休みに帰ってこいと、演習の準備だと。
そう言えばここ最近はガゼムさんからの手紙が来ない。出来たのか、諦めたのか。
諦めたにしても、何かしらの知見は得たに違いない。職人とはそういうものだ。知らんけど。
翌日、再びグラナド邸へ。
今回はクリストフはいない。初等部の友達と遊ぶのだそうだ。いいなぁ、今度マリーちゃんと遊びに行きたい。
グラナド邸につくと、真っ先にガゼムさんが駆けてきた。
「嬢ちゃん!!できたぜ!」
「出来たの?!すごい!ガゼムさん!」
二人して鍛冶場へ駆けていく。
取り残された領主さま、ごめんね。
鍛冶場に入ると、そこには一本の刀が鎮座していた。しかも拵に収まった状態で。
「この短期間で拵まで作ったんだ……、すごい……」
漏れる感嘆の呟き。
「嬢ちゃん、抜いてみな。理想通りかどうか、確認してくれ」
ガゼムさんや他の鍛冶師さん達が見守る中、鞘から引き抜いていく。
鏡の様な刀身が炉の炎の光を反射する。
細やかな板目、刃文との境目が匂い立っている。
刃文もキレイに入り乱刃、丁字を描く。
長さは所謂、脇差くらい。
わたしが振るには丁度いい。
鞘を台の上に置いて、構え、振る。
木刀とは違う、空気が切れる音。
重さも重すぎなくて、違和感なく振れる。
刀身が妙な迫力を醸し出し、目を捉えて離さない。
初めて持つ、日本刀の真剣だからか、刀自体が何かを宿しているのか……
「……ガゼムさん、すごいの作っちゃったね……」
ガゼムさんが、少し涙ぐんだように、話しだす。
「何本も失敗したけどな、焼入れなんか絶対成功できねぇなんて諦めかけたぜ。でもな、こいつが、鳴いてタイミング知らせてくれたんだよ」
アマテラス、最近大人しいと思ったら、ここまで出張って来てたのか!
まぁ、でもありがとう、感謝!肉、いっぱい買ってあげるぞ!
「な〜っ」
アマテラスが一声鳴いて、わたしの肩に跳び乗ってくる。
危ないよ!刀持ってんだから!振っただけでわかるくらいの切れ味だよ!
慌てて鞘に刀を収める。
ふぅと一息。
こんな凄い一振りにはちゃんと名前つけなきゃだね。
アマテラスが手伝ってくれたのだから…、猫か精霊に由来するものがいいかな……。
確か御稲荷さんが手伝った、小狐丸ってあったけど、狐じゃないしね……
猫…猫…
頭に浮かぶ刀剣男士。
彼の逸話、なんだっけな……。
まあ、いっか。名前カッコいいし!
「君の銘は、『南泉一文字』にしよう!」
この世界の最初の日本刀は、『南泉一文字』になった。




