第72話 着々と悪化してる気がする
ひっそりと(わたし的に)過ごす日々。
マリーちゃん、レイティシアちゃんと戯れながら、学院に通う。他には何もしていない。
ただそれだけなのに……。
ついにクラスの女子全員が、『王都学院恋物語』の読者となっていた。
主人公が誰とくっつくのかで、休み時間の度に激論が交わされている。
いやいや、作者のわたしすらしらん設定を追加しないでね?
さすがに、レイティシアちゃんから、「ルナ!これ読んだかしら?あなたはどの殿方がこのみ?」
なんて言い出した時には、やばいって思ったよね。
我、作者。その殿方達は、我が生み出した存在ぞ……。
そして、剣術授業では男子も薩摩藩士になってしまった。響く怒号のような『ちぇすと』。
さすがに騎士志望の生徒はそうはならなかったけど、平民男子の大半が薩摩示現流を使っている。
噂では、学年を越えて初等部にも広がっているらしい。ゴリラめ……、やりおる。
あれから、アマテラスは、表面上は大人しい。
暗躍していてもおかしくはないけど。
さて、目下の問題にとりかかろう。
ベッドの上で正座するわたしの目の前には、アマテラス。
「アマテラス、わたし、明日と明後日の休みにグラナド家に行くのだけど、あなたはどうする?ここにいるなら、お肉置いておくけど?」
そう、実地討伐演習の武器の相談の手紙を書いたら、作るから戻ってこいと言われたのだ。
本来、初等部を終えて、中等部に上がるときに作るつもりらしかったが、いきなり中等部になったことで、大慌てだったよ。
そして、そこにアマテラスを連れて帰っていいものなのか……。さすがに手紙にも書けなかったのよね。連れてくるなと言われても、アマテラス次第だからね。
アマテラスは、首を傾げ、何を言っているのか、わからないとでも言うような顔をした。
……え?それどういう反応?
軽く鼻息を鳴らして、肩に跳び乗った。
「あ、はい。着いてくるってことね、アマテラス」
グラナド家、燃えないといいな……
翌朝、学院にグラナド家の馬車がやってくる。
見覚えのある、御者。
ナイスミドルのマクスさんだ。
「おはようございます、マクスさん。今日はマクスさん直々に迎えにきて下さったんですね」
多分、グラナド家の中でもかなりの重鎮のはずなのに。なんだろ、要管理案件なのかな。
「ルナちゃんのお迎えなら、喜んでしますよ。ホッホッ。クリストフ様も、顔つきが変わってきましたね。とても良い傾向です」
そう、隣にはクリストフがいる。
毎回、クリストフは用はないはずだけど。まあ、それを言ったら、またクリストフの従者論議になるしね。
ちなみに、クリストフはアマテラスに引っ掻かれた。乱暴しないでね?両方とも。
燃えるよ?屋敷。
馬車の中では、アマテラスはわたしのフード付きマントのフードの中に収まっている。
おかげで、背もたれに背中をつけられない。
中々にキツイ。
「ルナ、その猫……。本当に…本当なのか?」
疑うよねぇ……。
わたしもイマイチ信じられていない。
でも、戸締まりした部屋から、本を持って抜け出せるくらいのイリュージョンはこなすのだ。
「たぶん、そうらしいです。なので、粗相のないようにしてくださいね。屋敷燃えるかもしれないので」
わかりやすくクリストフの顔が引きつる。
うんうん、だから誠実にね。
馬車がグラナド家に到着する。
相変わらず勢揃いで待ってるよ。
使用人さん、今回は新作ないからね?
馬車から降りて、グラナド伯爵と、クラリッサ様の前に来たとき、フードからアマテラスが顔を出した。
「えーと、領主様。あの……、精霊様、連いて来ちゃいました。えへ!」
グラナド伯爵は、さっきのクリストフと同じ顔をした。さすが、親子だね!




