第66話 平民の女子は逞しい
残響が静まり、沈黙に包まれた演習場。
腰が引けてる男子ーズ。
唖然としつつも面白そうな顔をしているゴリラ。
予想を上回る揃い具合に苦笑いを浮かべるわたし。
その空気を作り出した当人達は、振り下ろした姿勢のまま動かない。
目だけがキョロキョロと動きはじめ
肩が小刻みに震え
弾けるような笑い声が漏れはじめた。
「すごい!なんか、楽しい!」
「みんな揃って同じように振るって、気持ちいいね!」
「ちぇすとー!っていうのも、力入る感じでスッキリする!」
口々にそんな言葉が場を彩っていく。
……ふふっ、やって良かったかも。
「はい!一回で満足しちゃダメですよ?!髪の毛一本分でも、相手より早く剣を届かせるために、反復練習です!」
はしゃぎ回る女子ーズに声をかけると、みんないい顔で、構えをとる。
「ハイ!」「「「「「「ちぇすとー!」」」」」」
「ハイ!」「「「「「「ちぇすとー!」」」」」」
……
10回くらい繰り返したところで、女子ーズに限界が来た。まあ慣れないと全力で振るって、そんなに回数できないよね。
それだけ、真剣だったってことだ。
みんな、肩で息をしたり、座りこんだりしてる。
休憩、大事。今日の剣術授業、もう終わりでいいんじゃないかな?
なんでか、わたしが教官やったけど。
「ルナ、彼女達にやらせたのはなんだ?」
きたなゴリラ!ガルルルるる…
まあ、7歳児が威嚇したところで、歴戦の個体であるゴリラは怯みもしないが。
「皆さん平民の出身ということで、彼女達に適した流派の振りをお伝えしただけですよ?」
歴戦ゴリラは、腕を組んで、何かを思い出そうとしてるのか、顎に手を当てて考えてるふうな仕草。
「以前、ヒテンミツルギ流と言っていたが、あれか?」
ん…?なんで流浪人?……あっ!実技試験の時に適当に言ったやつ、覚えてたのか!
「えーと、それではなくて、ほら、平民が学院をでて剣を持つ場面なんて、試合とかじゃなくて、もう実戦じゃないですか。だから、より実戦的な一撃必殺の流派、薩摩示現流の基本をお伝えしました」
「……サツマジゲン流……。聞いたことがない流派だが……、なるほど理には適っているのか。あの構えからの振りを突き詰めれば……。ルナ、他の流派にも詳しいのだな」
漫画だよ?会得はしてないよ?
名前だけなら、北辰一刀流とか、天然理心流とかもしってるけどさ。
あれよあれ。空手動画見て、できる気になってる中学生男子と変わらんレベルよ?
「書物でチラっと見たことがあるだけですよ。それを伝えただけです。モノにできるかどうかは、彼女達次第ですね」
だから、ちゃんと指導しなさいよ。
本職の教官が!
「お前は、優れた剣術家であると同時に、教官としての素質も持ち合わせているのだな。もし、学院の教官を目指すなら、声をかけてくれ。推薦しよう」
まてまてまて。
お前は何か思い違いをしているようだ、ゴリラ。
わたしのおふざけを、本気にしないでほしい。
「目指す進路はもう、決めておりますので。お気持ちだけ、受け取っておきます」
わかるよね、もう、関わってくんなってことが。
「そうか、それは残念だ。まぁ、もしまた機会があったら、手助けしてやってくれ。平民達にどう教えればいいかは、悩みの種でもあったのだ」
うん、マニュアル作れ?
流派関係なく、何のために彼女達がここに来たのかを汲んでやってちょうだいな。
まあ、ここにいる女子ーズには、もう必要なさそうだけど。
7歳児に教えを請わないといけないなんて、この世界の平民達は過酷なんだな。
でも、とっても逞しい。
レイティシアちゃんや、マリーちゃんとは違う魅力が溢れてる。




