第63話 厄災を呼ぶ精霊様
精霊様って、リーンさんを助けた時に、ポルタさんが何か言ってたな。魔人か精霊かって。
懐かしいな、ポルタさん元気にしてるだろうか。この世界で初めての甘味はポルタさんがくれたんだよね、また会いたいなぁ。そしてパンケーキをまたいただきたい。
そんな事考えてたら、肩に乗った猫がその手で頭をペチペチ叩いてくる。
痛いって、爪立てて叩かないでよ!痛っ!
肩から剥がして抱っこにしようとしたら、スルリと躱して頭の上に鎮座する。爪をたてたまま。
痛たたたたっ!
頭皮に爪が食い込むぅ!
「ルナちゃん、ちょっとそのまま動かないでね、ご機嫌損ねないように」
そんな!御無体な!
せめて、爪をしまってほしい!
「あ、あの、猫ちゃん精霊様?爪はちょっとぉぉ……」
あいだだだだ!
余計に食い込ませてきやがった!
なんだよう、勝手に着いてきてこの仕打ちは酷いよ?
その時扉がノックされて、開いた扉から、事務員さんが、顔を出す。
「お連れしました!」
誰?飼い主?精霊の飼い主って誰よ?
飼い主責任として、頭の治療費を請求してやる。
「ん〜と、おや?ルナじゃないか。やっぱり君とは縁があるんだね」
ダイアかよぉ!
まあ、そうだろうよ!他に想像できないよね!
精霊を飼い慣らすとか!
しっかり躾とけよ!
「さてさて…、どうしたの、ルナにしがみついて。……うんうん、なるほど、え?……へぇ〜…」
いや、そこだけで納得されても……。
とりあえず頭から下ろしてください。
あ、ペシペシしないで、猫ちゃん。
リーンさんは、相変わらずの正座スタイルで、こちらの様子を見てる。たすけて?
「じゃあ、そろそろ俺のルナから離れてね?ほら、そんな事言わないの。はい、いくよ?昨日はおやつあげてないから、何か食べたいだろ?」
いや、何度も言うけど、お前のじゃねぇからな?
ていうか、猫ちゃん何も話してないけど、意思疎通できてんの?
あ、猫ちゃんがダイアに抱きかかえられた。
いたたた!頭皮にしがみつかないで……!引っ掻かれるぅ……
「とりあえず、連れて帰るよ。ルナ、また後で説明するからね〜」
ダイアがそのまま部屋からでていく。
猫ちゃんはこっちを見ながら連れ去られていく。
説明にこなくていいよ……もう、来ないで居てくれるなら。
乱れた髪を整えながらリーンさんを見る。
「ふぅ……、リーンさ…」
あー、めっちゃ溶けてるわぁ……、ごめんねぇ。
「ルナちゃん……、お疲れ様……。後で説明するから……、とりあえず授業に……、始まるから…」
もうそんな時間か。
溶けてるリーンさんを尻目に部屋を出る。
その前に。
「これ、書いてみたので、良かったらどうぞ……」
多少の気晴らしになればいい。
王都学院恋物語、使用人による写本だけど。原本は手元に置いておく。
扉を閉じる音とともに、部屋の中からページをめくる音がした。




