第59話 驚愕のクリストフ
再びのグラナド邸。
凄く久しぶりな気がするよ、まったく。
1日お泊りしただけだというのに、出かける前と後で変わってしまったものだね。
あ、家人が総出で待ち構えてるわぁ……
「おかえりなさいませ、旦那様、奥様、ルナ様」
名前、並べないで、マクスさん……
剣士の皆さんも勢揃いだ。
グラッドさん、ロリアンさん、ノーマンもいる。あそこには近づくまい。碌なことにならないのは、勘でわかる。
そして……、クリストフが御立腹だ。
なんで?君に怒られる謂れはないぞ?
「ルナ!昨日は何で帰ってこなかったんだ!ルナは僕の従者だぞ!」
あ、無断外泊に怒ってんのか。
別に何もないというのに……無くはなかったのか?
暗殺未遂事件に巻き込まれて、不可抗力だったのだけど、言っちゃダメだよね、これ。
王宮内で刃傷沙汰とか、やばいスキャンダルだ。真相も聞かされてないしね。
ダイア・セイクムの件なんて、レイティシアちゃんの言葉を借りれば、ちょっとした騒動だ。
「申し訳ありません、クリストフ様。なんだか色々ありまして。王宮で留め置かれてしまいました」
当然、納得しないクリストフ。ほら、領主様も何か言ってよぅ。
「それに、出かけたときとドレスが違うじゃないか!」
ドレス、把握してたのか。細かい男だなぁ。
そういうの良くないぞ?ストーカー予備軍だよ?
「お茶会で少し、粗相してしまいまして。クララ様に持ってきていただいて着替えたのですよ」
嘘ではない。
話をだいぶ端折ってるだけ!
「やめなさい、クリストフ。大きな声では言えないが、ルナはお茶会にて功績をあげたのだ。中等部を終えたら、レイティシア王女殿下に召し抱えられることになっているのだよ」
領主様の言葉に、唖然とするクリストフ。
バカな、信じられない、僕のルナが、とか色々言葉が漏れてる。
お前のじゃないからね?
なんかこの世界、所有欲強すぎない?みんな。
「そんなこと納得できません!そもそもルナは平民ではないですか。王女殿下に召し抱えられるのは、貴族家の者と決まって……」
あ…、そこ、触れちゃう?
領主様がクリストフの耳元に顔を寄せて言う。
「まだ公にはできんが、ルナは中等部を終えた後、叙爵することが決まったのだ。騎士爵だがな。この意味がわかるか?」
言っちゃうのね、領主様。
まぁ、やいやい言われ続けるのも面倒いからいいけど。
そう、私は独り立ちすることになるのだよ、クリストフ。たぶん学院在籍中もレイティシアちゃんに金魚のフンの如く付き従うことになるのだろう。もう君の従者ではいられないのだ。
さらば、クリストフ。婚約者候補と仲良くやってくれ。
「父様…!それは……、私がルナを娶る事ができる、ということですね!」
違ーーーうッ!
お前はそろそろ、わたしから離れろ!
婚約者候補の事を気にしなさいよ!
ほら領主様もズッコケてるじゃんか!
クラリッサ様、ほらちゃんと解説してあげて!!
「クリス、あなたは次男としてグラナド家を支えて行かねばなりません。ルナに負けないように、勉学に励み、剣と魔法を修め、一廉の人物と成りなさい。旦那様はそうおっしゃっているのですよ」
え?!クリストフって次男?と言うこと兄が別にいるってこと?
それと、君、魔法使えるのか!!いいなぁ〜。




