第58話 静かな控室
謁見が終わった。
なんとか、トンデモ出世ルートを回避して、侍女ルート内定を貰った。
ちなみに、一部功績譲りをしたグラナド伯爵家への沙汰も、結構いい結果だったらしく、グラナド伯爵がニコニコしている。
まぁ、あのポッチャリマンの親を見てたら、ズラなんとか侯爵家、危なそうだよね。
ポッチャリマン、頑張れ。
そしてクリストフも頑張りなさいよ?
せっかく絶妙なトスをあげたんだから、しっかり決めなさいよ?
そして戻ってきた部屋の前。
また、クラリッサ様に、重い愛情を示されるのかなぁ……とか思いながら扉を開けると意外と中は静かだった。
誰もいないのか?と思ったら、みんな机に座って、書類読んだり、書き写したりしてる。
こんな時にもお仕事なんて、みんな熱心だね。
グラナド伯爵が屋敷に戻ると告げると、はっとして我に返り、慌ただしく動き出す。
通りすぎるシヨウニン1stに、静かにでも確かに声をかけられ、指先だけ、肩に添えられる。
それだけで動けない。
驚いたわたしのビクつきさえ、指の細かな動きで封じられる。
なに?この人、きっと、特殊能力の持主だ。わたしの動きを封じて、あとでとてつもなく強いキャラクターとしてでてくるパターンのやつ!!
耳元に口を近づけてくる。
ナチュラルカラーのリップで彩られた唇が、艶かしく囁くように、言葉を紡ぐ…。
「私は、首席の高慢な生徒がいいわ。彼を謝恩会のパートナーにしてちょうだい」
………。
……ん?何を、おっしゃって……
間に入る、シヨウニン2nd。
「入学したばかりのカワイイ系猫耳男子に決まりよね?違うなんてゆるさないわ」
あれれ?なんでそれを?
2人を必死に捌く、シヨウニン3rd。
「先輩方、何を言っているんですか。ルナさんがお困りですよ?」
おお!常識人がここにいた!!
「担任の、大人の魅力を発揮する先生こそ至高です。他の人物を言われても、困りますよね!ルナ先生!」
あ、この人もいかれてるわ。
ていうか、皆さんいったい何をおっしゃっているのか……
……王都学院恋物語、読まれてる、そして写本が進んでるわ……
ほんの謁見の間だけだったのに……。
ついうっかりして、机の上に出したまんまだったわ。読んだのね皆して。そして複製が作られつつあると……
あ、クラリッサ様がやってくる。もちろん無表情で。
何か言われる?叱られちゃう?
「ルナさん、登場人物の感情表現の書き分けが単純すぎます。もう少し複雑にした方が深みがでるでしょう。例の詩集を読むことを許可します。勉強なさい」
まさかの編集目線!!
そして、禁書開示!!
いやいやいや!個人の趣味扱いのシロモノにそこまでしなくても。
詩集は読むけれども。




