第132話 護衛騎士は憧れる
レイティシアちゃんの輿入れまで、あと一月となった。
準備は慌ただしくも順調に進み、いくつかの荷物は先行してベルカイトに運ばれていく。
わたしは身軽な身の上なので、加州清光と南泉一文字、木刀の和泉守兼定、それから着替えがいくつかのあればいいや、くらいの気分でいたら、マリーちゃんとタルおばちゃまに捕まって、裸にひん剥かれて、採寸されるという辱めを受けた。
服、作るんだって。ドレスも。
まあ、グラナド家で貰ったドレス、もう着れないしね。育ったもんだ。身長も、胸も。
ウエストあたりを採寸されてるときに、マリーちゃんがボソッと、『私も剣術始めようかしら…』なんて呟いたのが聞こえた。
やめといた方がいいよ?マリーちゃん。
十分細いし、素振りしてると、ゴリラ教官でてくるかもしれないから。
運動なら、ピラティスとかヨガとかをおすすめしとくよ。トレーナーはいないかもだけど。
そんな日々を過ごしていた、ある日、来客が訪れる。背の高い女性。肩くらいに切り揃えた赤い髪を一つに纏めている。
引き締まった身体に剣士服。
あ!もしかして!やっと配属決まったんだね!
「お久しぶりです!レイティシア殿下!皆様!本日より、侍女兼護衛騎士となります、シーナリーナ・ジャルジェです!名前、長いのでシーナとお呼び下さい!」
おお!元気だ!そして、この人がシーナさんか。
名前と存在は知ってたけど、こうやって面と向かうのは、初めてだね。
「よろしくね、シーナ。もう知ってるとは思うけど、改めて紹介するわね。タルシェン、マリアンヌ、ルナアスカよ。ベルカイトに一緒に付いてきてくれるのは、これで皆揃ったわね」
シーナさんは騎士の礼を取る。
凄いね、キビキビしてる。体育会系女子って感じ?
「はい!皆さん!よろしくお願いします!」
順番に目礼を交わしていくシーナさん。
んん?わたしを見る目が、なんか……ある。
走馬灯を早めると、少し伝わってきた。
敬意…、憧れ…、好意…、それから、愛玩?!
なんで?
過去の接点、7歳の時のお茶会事件の時だけよね?しかも、話してもないし。
「ル、ルナアスカさん……。あの!私、その…」
シーナさん?落ち着いて?!そんなモジモジしないで?
わたし、告白されちゃうのかな?
「お礼を言わなきゃと……」
おおう、ビックリした、そっちか。
いらん想像して、変な汗かいちゃったよ。まったくもぅ!焦らせてくれるよね!
「お茶会事件の時のことなら、気にしなくてもいいですよ〜」
「いえ!そうではなくて…」
あれ?違うの?否定されるのも、何かちょっと、恥ずかしいね。
「可愛い……」
ん?んんん!?
「か、可愛い女の子のっ!近衛礼装、で!ダ、ダンス、見れるなんて!感謝しか、なっ…なくて!もう!なんてっ、言って、いいかッ!」
タカラジェンヌだと思ったら、ヅカファンだったか……。
そっちか!そうなのか、シーナさん!
ということは、マリーちゃんは娘役ってことか。
はい、そこ、笑い転げないで!マリーちゃん!
淑女が、はしたないですよっ!
「え…、ええと、ありがとうございます…?」
もう、やり過ごすしかないよ。
これから、大丈夫かな……。癖を明らかにしておかないと、何がトリガーになってポンコツになるか、わかんないんじゃん?
まあでも、姿勢、筋肉の付き方、重心のバランスの取り方なんか見ると、相当の腕前である事は間違いないだろう。
近衛離れるのも、惜しまれたって聞いてるし。
これなら、少しくらい、時間をもらって、出かける事も出来るだろう。
ベルカイトの情勢聞いてから、どうしても離れることに抵抗あったんだよね。
王宮に近衛はいても、レイティシアちゃんとマリーちゃんを守る護衛騎士はわたししかいなかったんだから。
ベルカイト行きのギリギリのタイミングだけど、やっと会いにいける。
学院に!リーンさん、元気にしてるかな!




