第127話 第三王女の護衛騎士
「……迷惑な話ですね。たかだか11歳になるかならないかの女の子が関わっていい話じゃないですよ?」
ほんの些細なきっかけ。
わたしでなくても、成り立ってしまう話。
たまたまあの場所に居合わせてしまっただけなのに、ほんと、勘弁してほしい。
ベルカイト王国の情勢まで気にしてらんないよ、自分とこで完結させなよ…。
「本当にね。でも、その受け止め方自体がただの『11歳の女の子』ではない証明でもあるけどね。泣き出すくらいは覚悟してたんだけど」
あ、そっか。こんなん聞かされたら取り乱す方が自然だよね。なんか、呆気にとられて何の反応もできなかったよ
「まぁ、それも君らしいってことかな。君を取り巻く情勢はとても興味深い。しばらくは、諜報の者が周りにいるから、上手く使うといいよ。……それでは、ヒノモト卿。ダンスにお付き合い頂き、ありがとうございました。とても楽しい時間を過ごせましたよ。また、お会い出来る時を楽しみにしております。……おそらくは違う姿になってますが」
そう言い残して、アウレリア様は、あっという間に人混みに紛れてどこにいるのかわからなくなった。
「違う姿……ね」
再会しても見た目ではわからない。
でも、たぶん、そう遠くない場所にいるのだろう。わたしは、監視対象なのだろうから。
「ルナ、こんなところに居たのね?探したわよ。誰かと踊ってたのかしら?」
マリーちゃんにも、踊ってたことすら気づかれていない。とんでもない人だ、まったく。
「ええ、マリー。グラナド家に縁がある方と、少しだけ。王太子殿下とのダンスはいかがでした?なんなら、側室なら狙えるんじゃないです?マリー」
さっきまでの、重さを振り払うように戯けた話題を切り出す。
「もぅ、ルナったら。魅力的な話だけど、そうしたら、レイティシア様やルナと一緒にいれないじゃない。ルナこそ、素敵な殿方どころか淑女も選り取り見取りにできるんじゃないかしら?」
いいね、このやり取り。
こんな気楽なやり取りを、ずっと続けられると思ってた。
「あと10年くらいたったら、考えます。その時に出会った素敵な方を捕まえますから!」
「それじゃ、行き遅れよ?ベルカイトで捕まえなさい?私もだけど」
二人で、あははっ!と笑いながら、ダンスフロアを後にする。その時、なぜか、アウレリア様の顔が脳裏を過ぎった。
舞踏会はその後何事もなく終わった。
貴族の中で領地持ちのものは、領地へ赴き、建国の祝いを自領で行うのだろう。
グラナド伯爵もクラリッサ様とともに、カンギルへ帰って行った。
私は王都に残っている。
ルナアスカ・ヒノモト騎士爵となり、グラナド家の預かりではなくなったから。
寝泊まりする場所も変わった。
これから、また新しい生活が待っている。
一時の寂しさと心細さが、わたしの心を占める。
この世界に来て、はじめて、ひとりぼっち。
でも、それもここまでだ。
王宮の奥、華美ではないが上品な扉を開け、跪く。
「ルナアスカ・ヒノモト騎士爵、参上仕りました。今この時から、任を免ぜられるか、命消えるその時まで、精一杯、お仕えいたします」
仰々しい、お決まりの口上に、目の前で座るレイティシアちゃんと、その側に控えるマリーちゃんが、優しく微笑んでくれた。
おまたせ、レイティシアちゃん、マリーちゃん!




