第123話 ダンスプラクティス
舞踏会、ダンスパーティー、夜会。
色んな言い方がされるけど、つまりは、広間でパートナーを変えながら踊り、社交するのだ。
前世でいうなら、ROUND1でボーリングしながら親交を深めるって感じ?まあ、そんなリア充イベント無かったけど。
ここに参加できるのは、叙爵された面々と男爵以上の貴族家と、そのエスコート役の人。
今回叙爵された人、この状況は場違いすぎていたたまれないんじゃない?と思ってたけど、それなりにコネは有るらしくエスコートする女性もいるし、知り合いもいるのか、ほとんどの人が親しげに会話を楽しんでいる。
わたしがマリーちゃんをエスコートして、一緒に会場に入場すると、ちょっとしたざわめきが広がった。
噂になってしまっていたようだ。
みんな噂広めるの早いね。
なんたってマリーちゃんは、美しくて可愛いのだ。魔法適性関係のしがらみがなければ、男性陣は殺到していただろうっていうのは、レイティシアちゃんの談。
不人気適性でも群がれ、男ども。いやだめ、やらん。
青いドレスに身を包み、ハーフアップで髪を整えた姿は女性のわたしからしても目を奪われる美しさだった。
そしてその隣にいるのがわたし。
白の近衛礼装、左肩に金糸の刺繍。
黒塗蒔絵の刀を差し、髪を高い位置で束ね、控えめながら髪飾りをつけている。
もちろん顔はディアさんの作品。
日々身長が伸びてるのか、いつの間にかマリーちゃんを追い越し、ペアとしてはバランスが取れるようになった。
女性同士のペア。
極めて異例。
でも、好意的、いや、すこし変な妄想が混じった視線を感じる。女性たちの視線がおかしい。
走馬灯が狂いそう。マリーちゃんの手が離せない。
「マリー、前にも言ったけど、わたしダンス下手くそだよ…。大丈夫かな…」
そう、これも不安。
結局、まともに踊りきれたのは、クリストフと踊った卒業試験の一回のみ。
走馬灯が早くなると絶対無理。
「大丈夫よ、ルナ。私に任せて、騎士様は堂々となさって?ふふっ!」
普通の舞踏会は、主催者のダンスから始まるらしい。今回は叙爵・陞爵者とそのパートナーが最初に踊る。
つまりわたし達。
注目される。
早まる走馬灯。
マリーちゃんの手が軽くわたしの手を撫でる。
緩む走馬灯。
マリーちゃんは今まで、ずっと、わたしの支えだったしね、安心するよ。
音楽が鳴る。
指と、マリーちゃんの呟きがリズムを刻む。
動きの指示の先出し。
動く重心が自然に次の動きを促す。
どっちがエスコートされてるんだか、わかんない。
これはもう、ダンスプラクティスだ。
すごいな、頼りになる。
こんなお姉ちゃんいたら、素敵だろうな。
もう、周りの視線は気にならない。
マリーちゃんに委ねてると動きにぎこちなさが消える。たぶん、わたしが踊りやすいように、何も考えなくてもいいようにしてくれてる。
楽しい…
曲の最後の一節。音が消える。
マリーちゃんが優雅にカーテシー。
あ、男性は最後、どうするんだっけ!!
頑張れ、走馬灯!思い出せ、前世の雑学!
巡る記憶、今世と前世の知識、映画、アニメ…。
…………!!
一瞬の遅れで、ボウ・アンド・スクレープ。
思い出せたぁ……!
ニヤッと笑うマリーちゃん。
「さすがルナね、男性の礼式も知ってるなんて」
控え目に差し出される手。
でも握られてる。
もう、いじわるだな。わかってたな?最後の最後に焦るって。
「間違ってなかった?もう、焦ったよ……」
控え目にグータッチしてから手を取る。
レイティシアちゃんが笑顔で拍手してくれてる。でも、表情にちょっと嫉妬が混じってる?
誰に嫉妬してんの?ふふっ!
ファーストダンスを終えた者たちへの拍手の中、わたし達は主の元へ歩んでいった。




