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第120話 叙爵に向けて

今日はついに叙爵の日。

王都グラナド伯爵邸のドレスルームで、昨日王宮から届いた服を見据える。


「これ……わたし、着るのでしょうか」


てっきり、普通にドレスが来るもんだと思ってたのよ。わたしも、クラリッサ様も、ディアさんも。女性への叙爵はそういうもんって聞いてた。

だから、コルセットも覚悟してたんだけど……


「騎士服ですね。しかも近衛礼装仕様」


ディアさん、ありがとう。やっぱりそうなのね?

え〜と、侍女になるんではなかったのかなぁ…。百歩譲って、騎士服はわかる。

召喚されたときに、剣持ってこいって言われて、叙爵のときに使うって言われたから。


でも、近衛礼装ってなん?


「ルナさん、お茶会の時になにかやらかしましたか?」


お茶会の時?フェンドールに絡まれたくらいだよ?怖かった。


「ベルカイトの護衛の人に立会いを所望されたのを、護衛だからって断ったくらいですよ?あ、あとエルディーン王子に名前聞かれたくらいです」


沈黙するディアさんとクラリッサ様。


「……。何かをやらかしたっていうことはわかりました。それが王に伝わったのでしょう。破格の措置ですね」


ディアさん、わたし、やらかし前提なの?


ん、クラリッサ様?何?

ズンって両肩に手を置かれた!


「誇らしいわ……ルナ」


え、ええ?クラリッサ様が言葉に詰まっておるよ?!なんなら無表情なのに、目が潤んでる!

いや、ほんとに、何がどうなってこんなことになったのか、教えてほしい!


「取り敢えず、時間がなくなりますので着替えましょう。はい!皆さん、出番ですよ!」


ディアさんが手を打ち鳴らすと、一斉に使用人さん達に囲まれる。

あぁ!また、服を剥かれるぅぅぅ!えっちぃ〜!


今回は下着までとられた。

恥ずかしい……


そして、肌触りのいい素材の下着をつけられて、服を着させられる。

こっちの世界にも、勝負下着ってあるんかな?いや、脱がないけど!……脱がないよね?


「この刺繍は、王女殿下の手製……でしょうか……」


肩口の刺繍をみて使用人さんの一人が言う。

花の模様の刺繍。

レイティシアちゃんの?


「そうでしょうね。古い風習ですが聞いたことがあります。戦に赴く想い人の無事を祈って刺繍を入れる風習ですね」


他の使用人さんが答える。

お茶会から、2週間くらい、仕立てからだから、そんなに時間なかったのに刺繍までいれてくれたのかね、レイティシアちゃん。

わたし、戦にはいかないよね?ていうか想い人?


「ルナさん、剣はどちらを持って行くのですか?」


ディアさんが、加州清光と南泉一文字を指す。

ん〜、メイン武装のほうがいいんだろうけど、見てもらったのは南泉一文字だからなぁ……


「無難に確認済みの、こちらにします」


南泉一文字を手に取り、剣帯に差す。

うん、整った。いつでも行けるかな。


準備が整ったところで、領主様が顔を出した。


「準備はいいな?そろそろ行こうか」


叙爵の場所は、王宮の謁見の間だ。

馬車で王宮に行くと、沢山の馬車が整然と並んでる。

馬車を降りて、領主様に続いて歩いていくと、途中で、同じように叙爵を受けるのか、上司と思しき人に連れられた剣士が合流してきた。

みんな一斉に叙爵されるみたい。都度やってたら大変だもんね、ナーキアルが。


領主様に連れられるわたしを見ると、みんな一様に驚いた顔をする。

うん、言いたいことはわかる。

でも、言わないで。同じ疑問をわたしも持ってるんだから。


謁見の間の大きな扉。

ゆっくりと開かれ、中の様子が目に飛び込んでくる。

広間に真紅の絨毯が王座まで引かれ、左右に沢山の貴族達がならんでいる。

正面の王座には、ナーキアル王が座り、その隣に猫好きの王妃様、さらに知らない男女が並んでいる。

その中にレイティシアちゃんもいる。

なるほど、側室、王子、王女、勢揃いってわけだ。

さらに後ろにマリーちゃんも控えてる。

目が合った、目だけ笑ってる。


領主様とともに、付き添いの貴族たちが、横の列に加わっていく。領主様はシュライン伯爵の隣だ。相変わらずジュード・ロウだな。


叙爵される者たちが足並みを揃えて進んでいく。

これは儀式なのだ。

建国記念の一環で、功績を挙げた者たちを称える儀式。


わたしみたいな存在は異質だ。

10歳、女、騎士服(ていうか近衛礼装)、組み合わせがおかしい。


みんなの注目が集中する。

やめて?走馬灯回っちゃうから。


そんなわたしの想いをよそに、膝をついたわたし達に、ナーキアルの声が響いた。


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