第117話 お茶会って忙しい
挨拶したらお開き、ってことには当然ならない。
レイティシアちゃんは、エルディーン王子と親しげに話してる。政略結婚って聞いてたけど、きっかけがそれなだけで、ちゃんとお互いを尊重する間柄になっているらしい。なんなら、ちょっと甘い空気。
爆散……はしないで。
お茶会はローゼリア側開催だから、こちらの側仕えがテキパキと給仕をする。
マリーちゃんはそれには参加せずに、レイティシアちゃんの側で何かメモをとっている。
「マリー、何書いてるの?……ブッ!」
覗き込んでビックリした。
会話の流れで、エルディーン王子だけじゃなくて、話題に出てきた人の全てを分析している……。
プロファイラー・マリー……、いつの間にそんなこと出来るようになってたの?
あ、これは、あの数学の授業の応用だ!
なるほど、こういう事にいかされるのか……。侍女すげぇよ。
ウン、負けないように、今日は護衛頑張る。
そう意識すると、前のお茶会の時、何で護衛の人はわたしを注目するのかなって思ってたけど、護衛の立場になると、よくわかる。
あの時、あの場では、グラナド家預かりとはいえ、平民上がりのわたしが一番の不確定要素だったのだと。
今、わたしが警戒しないといけないのは誰か。
まだ姿の見えない、いるかどうかわからない暗殺者ではない。
このお茶会の面々だ。
エルディーン王子に紹介された中では、特に
護衛の、ジェイクス、プラナリア、そして、フェンドール、この3人。
向こうにとっても、そうなのだろう。
わたしを値踏みするような仕草。
走馬灯が、彼、彼女の仕草を、捉える。
うん、めっちゃ面倒い!
一人に絞ってくれないかな?ほら、こっちには、タカラジェンヌもいるじゃん?なんでわたしに全集中?何の呼吸だよ!
フェンドールが手を動かしたかと思えば、プラナリアが一歩前にでる。
それに反応して、足先の方向を変えると、ジェイクスが軽く腰を落とす。
お前ら、失礼極まりないないぞ?
ベルカイトでは皆そうなのかい?
とは言え、護衛の立場としては、レイティシアちゃんに手を出させる訳にはいかない。
エルディーン王子は……、手に触れるくらいは許そう、気にしてる余裕ないから。
「ねぇ、フェンドール、何、ソワソワしてるの?」
空気を読んでるのか読んでないのか、忖度無しの素直なミラちゃんの突っ込み!そうだよね!気になるよね!
ポンコツお姫様かと思ってたけど、やるじゃん!
「いえ…、周囲の警戒をと……」
「そう!なら仕方ないわね!」
待て待て、そこで引き下がらないで?
ウザいとか、気になるとか、キモいとかあるでしょ?
少なくとも、わたしは神経すり減らされてるから、やめさせてもらえる?
「プラナリア、どうしたんだい?いつも冷静な君らしくもない。ジェイクスも落ち着きがないね。ここは安全だよ?何を気にしてる?」
エルディーン王子のフォローではない詰問!
わたしのせいにされると、それはそれで困るんだけど……。
ジェイクスさんが重い口を開く。
「いえ、その……。美女が揃っているので、落ち着かなかっただけであります!」
言うに事書いて、それかよ。
続いてプラナリアさんから言葉がもれる。
「……とても好みだったので……。強そうだし、可愛いし……。殿下、あの子、抱きしめていいですか?」
ん?んんんん?!ちょっとまて、プラナリアさん!?
何か変な方向に行ってない?さっきまで、動きの読み合いしてたじゃん?何?わたし、押し倒されそうになってたん?百合は勘弁よ?
いや、言い訳だな。目に好意的な気配はないし。
ボケと見せかけて油断させようだなんて、やるじゃないか、ベルカイトの衆よ!
ちょいと釘を刺しておこう。
「ジェイクス様、プラナリア様。わたしを除いて美女揃いなのは否定しませんが、口説くなら、ちゃんと雰囲気を作ってからにしてくださいませ?」
何たって、『王都学院恋物語』の読者だからね!かなり難易度高めの設定になってしまっているよ!ローゼリア女子は!
「ならば、雰囲気を作ろう、ルナアスカ。私と立会って貰えぬか?」
フェンドール、お前、危険な馬鹿だな?
それで靡く女子はいないと思うぞ?
あ、目を煌めかさないで、レイティシアちゃん。それから、プラナリアさんも!
お茶会だよ?今!
こういう展開は、違うと思うんだ!?




