第116話 メンタルおばあちゃんの嘘
「ミラ?レイティシア殿下のお付の者に対して、随分失礼だよ?以前、お会いしたことがあるのかな?」
エルディーン王子のごもっともな突っ込み。
お忍びで護衛を巻いてカンギルの街を彷徨ってたことは王子は知ってるのかな?
ちらりとフェンドールの方を見ると、あちゃー、っていう声が聞こえそうなくらい、手で顔を覆ってる。
あんたも顔や仕草に出ちゃうタイプだね。
「ルナアスカ?ミラナリア殿下と面識があったの?」
おおっと、マイボス、レイティシアちゃんから、こっちに振られちゃったよ。皆の視線が一気に集まる。見ないで欲しいなぁ…走馬灯が仕事し始めるから。
正直に言ってもいいけど……、あの様子だと、誤魔化してるんだよね、あの二人。
メンタルおばあちゃん的には、誤魔化しに付き合ってやるか。
「以前、カンギルの街を、恥ずかしながら食べ歩きしながら散策していたところ、ミラナリア殿下が、身分を隠して『護衛の方を引き連れて』視察されているところに遭遇しました。気さくに街の事を教えて欲しいと言われましたので、少しお話をしたくらいですね。その時、肉の串を持っていたので、その印象が強かったのかもしれません。
……あの時は、ミラナリア王女とは気づかず、大変失礼いたしました」
どうだっ!真実を織り交ぜつつ、都合の悪いところを嘘で塗り固めてやったぜっ!
ほら!フェンドールも表情が戻った!
「そうなのかい?ミラ?」
エルディーン王子、お願いだから、納得してあげて!
「……う、うん。お肉貰った…」
言うんじゃねぇよ。半分台無しじゃないか。
見知らぬ誰かから肉貰って食べるとか、王族としてアウトだよ!ほら〜、フェンドールがせっかく持ち直してたのに、肩落としてんじゃん!
「か、カンギルの屋台が珍しかったようで、『新たに購入』した肉串を、そちらの騎士様に『毒見』をして頂いた後に、召し上がって頂きましたぁ!」
く、苦しい……!
でも、こうでも言わんと、お茶会が叱責大会になってしまう。
わたしのために争わないで!!
なんちって。
すっと、マリーちゃんがわたしの背後にまわり、わたしにだけ聞こえるように囁いた。
「嘘よね?」
はい、その通りです。さすがマブ。
「……まぁ、そういうことにしておこうか。レイティシア殿下、そちらの、ルナアスカさん、だったかな?紹介してただけるだろうか」
フォローするわたしの空気を察してくれたらしい。この件は、ひとまず棚上げになった。
フェンドール、お前が弁明するんだよ、働けよ。
「ええ、もちろん。その為のお茶会でもありますから」
レイティシアちゃんはわたしに前に出るように促してから、続ける。
「先日、学院を史上最年少で卒業した、ルナアスカ・ヒノモトですわ。頭が良いだけではなくて、剣の腕前もなかなかなものですのよ?教官の話では、文才もあるとか。輿入れの際は、わたしの護衛も兼ねて侍女としてつれて行きますの。ルナアスカ、ご挨拶してくださる?」
随分と、経歴が盛られてしまった……。
いや、嘘はないんだけど……。
「ルナアスカ・ヒノモトと申します。この度、レイティシア様の侍女として、侍ることとなりました。ベルカイト王国の風土や仕来りには疎いのですが、精進していきますので、お見知りおきを……」
出来ればフェンドールには、忘れて欲しい。
「うむ、よろしく頼むよ、ルナアスカ。私はエルディーンだ。こちらは、もう知っているようだが、妹のミラナリア。それから……」
エルディーン王子が一人一人、側仕えの人達を紹介していく。さすが王子の側近だけあるね、みんな優秀そう。
そして、最後に……。
「彼は、フェンドール・ジルタナ。ミラナリアの護衛を務めてもらってる。知らないかな?ベルカイト最強の黒騎士なんて呼ばれてたけど。実際、凄く腕が立つんだ。ルナアスカも腕に覚えがあるなら、立会ってみるとよくわかるよ」
いやいや!物騒な提案はやめて?
なんか、斬られる想像しかできてないんだから!
「フェンドール・ジルタナだ。その…、カンギルでは、世話になった。礼を言う。たいそうな二つ名がついているが、たいした物ではない。君も、その身のこなし、相当な使い手のようだ。楽しみだよ」
何が楽しみなんだよ!!
不穏だよ、不穏!楽しませるようなことは何もないからね!
さっき誤魔化した真実を暴露しちゃうぞ?フェンドール!




