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第111話 再び王都へ

「嬢ちゃん、慌ただしいなぁ。故郷から戻ったと思ったら、もう王都行くのか」


わたしもそう思ってるよ、ガゼムさん。

本当ならあと1週間くらいはゆっくりできたのに。


「そうなんだよね。だから、大急ぎで、これ手入れして欲しくて。また暫く戻って来れないと思うんだ」


腰の加州清光を軽く叩いて、腰から鞘ごと引き抜く。


「魔獣だけじゃなくて、獣も斬っちゃったから……」


ガゼムさんは、受け取ると鞘から抜いて刀身を見つめる。


「ナンセンイチモンジは、嬢ちゃんの手入れで、問題なかったぜ?これも、脂巻いてるわけでもねぇし……ああ、ちょっと斬った跡があるか。これくらいならすぐ仕上がる。明日までにやっとくさ」


また鞘に収めると、ガゼムさんは傍らに置いてある、布に包まれた物を渡してきた。

なにこれ?あ、南泉一文字か。

包んだ布を取ると、思わず息を飲んだ。


「お爺さん…、また本気だしちゃったの?」


拵が作り直されてる……。

柄は加州清光とお揃いで、黒糸、紅糸、金糸が巻かれている。鍔は、お爺さんの本領発揮なのだろう。素材がわからない金属で編み込まれるようにして、繊細な花の模様が描かれている。

そして、圧巻なのは鞘だ。


「蒔絵……だよ、これ……」


鍔の花から繋がるように、金と銀の粉で漆黒の鞘に描かれた花と蔓。華美すぎず、繊細、そして、確かな存在感。

村に行ってる短期間になんてものを仕上げてんのさ!


「マキエ?爺さんは金装飾って言ってたぜ?なんか、前のやつが気に入らんって言ってな。他の仕事ほっぽり出して、それ仕上げてたさ」


いや、もう、これ国宝じゃね?

なに?この世界の職人はこのレベルのもの、ポンポン生み出せんのかね?

ていうか、本来の仕事して?怒られなかったのかな。


「嬢ちゃんへの、叙爵の祝いだってさ。受け取ってやってくれよ」


そんなこと言われたら、受け取るしかないじゃないか!国宝級を普段遣いとか怖すぎるけど!

お爺さんのとこにダッシュして、思いっきり抱きついて、お礼を言った。


わたし、出会う人には恵まれてんな……。



翌日、手入れが終わったら加州清光を受け取って、王都へ出発。

なにぶん、急な出立だったこともあり、領主様もクラリッサ様も、後からくるとのこと。

同行するのは、ディアさんと、……ノーマンだ。


「やぁ!美少女剣士、久しぶりだね!会いたかったよ!野宿、楽しみだね!グッ!」


何か重いものがぶつかるような音と共に、ノーマンが堪えるような声をだす。


……え?ディアさんの蹴りを止めたの?


「チッ!…ノーマン、野宿はしません。あなたは宿についたら、外で見張りをしてなさい」


「急にびっくりするよ……もっと蹴ってもいいけど。急ぎなんだよね?クラウディア。一回野宿挟めば、2日で着くよ?」


久々に目の当たりにしてしまったよ、変態ぶり。

ディアさんが苦々しい顔をして無視しようとしてる。


「ルナさん、馬車へ。すぐ行きましょう。アレは直視しては行けません。予定通り、途中で宿をとりながら、3日かけて、王都へいきます」


うん、わかってる、そうして!

ていうか、ノーマン王都に放って大丈夫かな……。マリーちゃんとかレイティシアちゃんにちょっかいだそうもんなら、わたしが責任もって斬ろう。局中法度だ。


馬車は王都へ向けて進んでいく。




旅は魔獣にも賊にも遭遇することなく、順調に旅程をこなしていく。

一番の危険はノーマン。いや、害があるわけじゃないんだけど……、なんか、こう……、メンタル削られるんだよなぁ……。

ディアさんもそうみたいで、ノーマンと話す度に汚物を見るような顔をしてる。

ディアさん、それ、多分ご褒美になってるよ……。


そんな苦難の3日間が過ぎ、王都のグラナド伯爵邸に入った。

邸宅では、マクスさんが出迎えてくれたよ。カンギルで見ないなと思ったら、こっちに詰めてたんだね。


「マクスさん、わたし宛に召喚令状が届いたんですけど、何か心当たりありますか?」


マクスさんなら、知ってるかもね。

少し考えてる……。思い当たる節はないみたい。


「いえ……ただ、今王都には、レイティシア殿下

の婚約者のエルディーン王子と、その妹君のミラナリア王女が滞在されています。可能性としては、レイティシア殿下の侍女となるルナさんとの、顔合わせをしたいのではないかと……」


ミラちゃんも結局、お忍びではなくなったか。まあ、そりゃそうだよね。じゃないと王都には入れないだろうし。


顔合わせ……か。

お互いの側近同士のって意味合いかなぁ。

でも、わたしまだ11歳にもなってないのに。侮られないかな?わたし自身は構わないけど、レイティシアちゃんが。


それに、ミラちゃんが居るってことは、あの人も居るんだよね……。


フェンドール・ジルタナ。

なぜか、真剣で立ち会うことを想像させられてしまう人。

できることなら、会いたくない。


そんな想いを知ってか知らずか、フードの中でアマテラスが鳴いた。


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