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第110話 召喚令状

グラナド伯爵領、領都カンギル。

この街は少しだけ特殊だ。

初めて来たときは、毎日お祭りみたいな街だな、って思ってたけど、それはこの街だけのことだった。


王都の学院で知り合った人たちの誰に聞いても、こんな街は他になかった。

道の両端を露店が埋め尽くし、広場には芸を見せることを生業にしてる者たちが、歓声を浴びている。これが毎日なんてことは、ローゼリア王国内では、聞いた限りではこの街だけだった。


「まさか、カンギルが交易の結節点だなんて、思いもよらなかったよ、ロリアンさん」


今日も街歩きのオトモは、ロリアンさんだ。

ノーマンが必死にアピールしてきたけど、丁重にお断りした。


「学院で習わなかったかい?北部のベルカイト王国と、東部のメルナダ王国の街道が交わるのがここだからね」


ロリアンさんが肉串を差し出してくる。


「物が集まれば、人も集まる。人が集まれば、その人たちを相手にした商売も始まるってことだよね、ロリアンさん」


予め買っておいたパンと野菜。

パンに野菜と、ロリアンさんが買ってきた肉を挟む。この肉は甘辛いタレがついてるから、多分合うはず……。

ロリアンさんに出来上がったのを渡す。


「そうさ、嬢ちゃん。加えて、グラナド領は村によって特産物が違うから、いろんな食材や素材がここに集まってきて、それもまた他国に流れていく。それで街が潤って、毎日がお祭りってことさ。

……うまいね、これ?!」


そうでしょう、そうでしょう!

単体で食べたらクドいタレも、野菜とパンを合わせると、あら不思議〜、てな具合ね。

うん、美味しい。これは、いけるんじゃないかな。屋台アレンジ飯レシピとして、本にしてみるか……。


「こうするとタレが絶品だね……。ちょっとお肉が硬いけど。ミンチ肉だったらなぁ。領内でそんなに特産物が違うって、珍しいんじゃないの?学院で聞いた時は、そんなに沢山特産物があるとこなんて、他になかったよ?」


ロリアンさんは、あっという間に食べ終わる。

食いしん坊だな。


「そこはね、領主様の手腕。昔、この地方で作物の病害があったらしくてね、先代の頃かな。その時から、種類を沢山増やせばいいだろうって、だいぶ頑張ったらしいよ?

領主邸の料理人にミンチ肉で作ってもらおうか」


グラナド伯爵は先代から、優秀だったんだな。逆境をバネにしてここまで栄えさせたんだから。

わたし達は、ミンチ肉のサンド、すなわちハンバーガーを食べるべく、領主邸に戻った。



領主邸に戻ると、領主様がわたしを呼んでるとのことで、そのまま、応接に向かった。

なんだろ?呼び出しくらうことなんて……、まあいろいろあるけど、それは一通り説明してるけどな。

他の領の状況でも入ってきたのかな?


「ルナ、来たか。そこに座りなさい」


応接には、領主様の他にクラリッサ様しか居なかった。使用人の人が一人もいないなんて珍しい。

ソファに座ると、スッとテーブルに手紙のような物が置かれる。


「お手紙?何でしょう、これ」


手に取ると、わたし宛である事を示す名前、裏には何も書かれていない。蝋で封がされ、蝋の上からスタンプが押されている。

あ、これ、わたししか開けちゃダメなやつだ!

しかも、この印、王家の紋章。


「ルナ宛だから、私達には開けられない。何が書いてあるか、ここで読んでもらえるか?」


なるほど、だから使用人さんたちがいないのか。いても空気読める人達だから大丈夫な気もするけど、領主様としては、そういう訳にはいかないのだろうね。


一緒に渡されたペーパーナイフで封を開ける。

中には1枚の紙。

なになに……


「召喚令状。グラナド家預かりルナ、彼の者は下記に定めし日時に王宮へ来ること。日時は……」


意外とすぐだぞ?

二、三日の間にはカンギル出ないと、ギリギリになりそうな日程。


「だそうです。召喚令状って、なんですか?」


顔を上げると、領主様が慌ててる。

クラリッサ様はもう使用人さん達を呼び集めてる。あ、そんなに急ぎなの?


「ルナ、それは王の命令書だ!準備を急げ、それに遅れると処罰されかねん!!」


ええ!?命令書?なんで?

まだ叙爵されてないのに?

王都で何があったのさ!!


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