第108話 静けさ、そして嵐
あれ?ここ家だ。
何してたんだっけ?
宴が始まって、オジサマ達に囲まれて、エール飲んだ。美味しくなかった。
うん、ここは憶えてる。
それから……、クラリッサ様に甘い飲み物貰って…、ディアさんが何か言ってて…、ロリアンさんと話したような……。
その後、ん〜、女の子達…、なんか話した。
それから…。
あ……、歌ったんだ。
調子にのって。それから……の記憶がない。
「んん〜、いつの間に眠っちゃったのかなぁ。今どれくらいの時間なんだろ。まだ宴は続いてるのかな?」
まだ窓が閉じられているから、朝にはなってないのだろう。足音をたてないように、部屋の扉を開く。
静かだ。そして暗い。
誰もいる様子はない。微かに隣の部屋から、寝息が聞こえる。ルカとレナだろう。
まだ夜中で、宴が続いてるらしい。
もうこのまま眠ってしまってもいいのかもしれないけど、お腹が激しく抗議をし始めている。
何も食べてないのだから当然だ。まだ何か残ってるんだったら、食べさせて貰おうと家を出る。
広場の方にはまだ火が灯ってる。
そちらに歩いていくと、男達の陽気な笑い声が聞こえてきた。まだ続いてるみたい。なら、少しくらいは食べるもの残ってるだろう。
「おお!わが村の歌姫じゃねぇか!また歌ってくれんのか!?」
ふぇ?何?歌姫って。
わわわ!ワラワラ寄ってきた!やめんか!少女に群がる酔っ払ったムサイ男衆なんて、絵面が犯罪だぞ!
とりあえず、逃げる!
パパ、ママ、それから食べ物はどこだ〜。
って!追ってくるなし!怖いから!
子供の群れに飛び込もうにも、もう帰宅させられたのか、一人もいない。
パパもママも家には居なかったから、ここにいるはずなんだけど……、いた!!
「パパ、助けて!追われてるの!それからお腹すいた。何か食べるものない?」
パパのいたところには、ママもクラリッサ様もディアさんもロリアンさんもいた。
なんだよう、みんなまとまってたのね。
アマテラスも。何よ、そのニヤニヤした表情は。
「ルナ、目が覚めたんだね。びっくりしたよ?急に倒れたと思ったら、寝始めたから」
なぬ?そんなダイナミックに就寝したのわたし?のび太くん並だな!
「ルナはお酒はダメそうだね。エールはともかく、ワインは子供には早いしね。まあ、ルナは知らずに飲んだみたいだから、お説教はしないけど、どんな飲み物も一気に呷ったらだめだよ?」
エールはそもそも飲み物としてダメじゃないかな?みんなあれ、よく飲めるよね。クラリッサ様がくれたのはワインだったのか。甘くて美味しかったけど、アルコール、強いんだろうな。
「それからね……、あの歌、今、王都で流行ってるのかな?とてもいい歌だね、それにルナがあんなに上手に歌えるなんて知らなかったよ。バンドンが泣き崩れて、あとでルナにお礼が言いたいって」
パパがわたしの頭を撫でてくれる。
何か照れくさい。フワフワして変な感じだよ。まだアルコールが残ってるのかな、そういうことにしとこう。
バッツのお父さん、少しは整理できたかな。
いくらこういう世界だからって、実の子供を失ったらつらいもんね。
救いになったのかはわからないけど、何か残るものがあったなら、歌った甲斐があるってもんだね。
「あの歌は、王都の歌姫が作ったのではなく、ルナさんが作った曲が広まって、歌姫が歌い始めたと調べがついております。ですよね?ルナさん」
ディアさん?!何暴露しちゃってんのよ!
ほら!今、こう……しんみりした空気だったじゃん?おいこら、周りの男衆!拍手すんな!
ちょっと、ディアさん、ワインを傾けながら言わないで?
「おそらく……まだあると思うんですよね……歌っていただけませんか……?」
いや、その、スカートの端持ち上げて、黒光りするやつ見せないで?それ脅迫だから!
男衆!しゃがむな!まだディアさんはペチコートを脱いでいない!
ディアさんも、調子に乗ってスカート持ち上げないで?!そんな妖艶な表情で!酔ってんの?!
「皆さん、少しお黙りなさい」
おお!ここでクラリッサ様!
ありがとう!皆を静まらせて!解散させて!
「静かにならないと、ルナさんが歌えません。ほら、座りなさい。はい、そこ!手は伸ばさないように。そちら、詰めなさい、まだ座れます」
救世主かと思ったらイベンターだったよ……
はい、どうぞ、じゃなくてね?クララ様?
あ、ワインはもういいです〜。
なんでパパもママも、楽しそうなんだ?娘が晒し者になってるんだよ?
もぅ!アマテラスもいつの間にか、最前列にいるし!!
……娯楽なんだね。これは。
土着の民謡とは違うのが楽しいのか。そうかも知れない。わたしがこの世界の本を読んだときと同じ感覚が、わたしの歌った歌で芽生えてしまったのかもしれない。
仕方ない、一曲くらいは歌ってあげようか。
といっても、アニソンかアイドルソングしか、レパートリーないけど。
何がいいかな……、即興でこっちの言葉で歌えそうなやつ……。女の人も、夫婦もカップルもそれなりにいるから、恋歌がいいのかな?クラリッサ様も好きだよね。
なら……
百年先も愛を誓っちゃおうかな!!




