表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/136

第106話 撃退と追悼の宴

いつの間にか、広場は村長が中心となって、宴の準備が進められていた。


魔獣に畑を荒らされて、これから大変だろうにそんなことする余裕あんのかね?という疑問には、パパが答えてくれた。

こういうことには、ケジメが必要なんだと。


普段起きないような魔獣災害がおきて、

犠牲もでて、

一カ月にも及ぶ問題がひとまず解決したならば、


それをちゃんとした形で終わったということを村の中に示してあげないといけないんだって。

そうじゃないと、日常に戻るきっかけが掴めないから。


まだ全てが解決したわけじゃないんだろうけど、夜眠っていいよっていう宣言なのかもだね。


村長が大量の食材とお酒を用意している。

ディアさん曰く、クラリッサ様の権限で、税の一部免除をしたそうだ。その分がここに並んでいると。なんだかんだで、グラナド伯爵家の統治下は恵まれてるのかもしれない。

野心深い領主様だけど、慈悲深さも共存してる。わたしを学院に送ったのがその典型だね。


日が山の稜線にかかった頃、大きな焚火が灯され、宴が始まる。

村長が宴の開始を宣言する。


「この度の魔獣の襲来。皆と、領主様の御力で何とか、撃退することができた。

だが、犠牲もでてしまった。バンドンの息子、バッツが失われた。まずは、バッツの魂がこの地を巡り、そして新たに世界の一部となる事を祈ろう」


そうだ。

子供が一人、亡くなったのだった。

この規模の魔獣襲来の犠牲として少ないのかどうかはわからないけど、かけがえの無い家族やこの村の一人だったはず。


みんな、沈黙して頭を垂れている。


……思い出した。

バッツって、小さい時にわたしに絡んでた男の子だ。確か、蛙くれた子。


思い出した途端に、目元が熱くなる。

親しかったわけじゃないけど、知った人が死んでしまったことに、胸が押し潰されそうになる。


もっと、早くここにきてたら。

半年前の試験で卒業してたら。

魔獣なんて、近寄らせなかったのに。

どうにもならない後悔。


「ルナのせいじゃないから。今はただ、バッツの事を祈ってあげなさい」


パパ…。

また変な方向に思考がとんじゃってたらしい。

最近、情緒不安定だな。


小さかった頃の面影しか知らないけど、もし生まれ変わるなら、日本とかお勧めしとくよ、異世界だけど。

生まれ変わった先では、元気に、幸せになって。

トラックには気をつけてね。


ここにいる皆が、それぞれの想いでバッツに祈る。

この世界の死生観は厳しいけど優しい。




そして、宴会が始まる。

苦難の終わりと日常の始まりの区切りの宴。


エールや、クラリッサ様が供出したワインが振る舞われている。料理も保存が効かないものを中心に、お腹いっぱい食べれるくらいの量が作られていた。


子供達の顔も晴れやかだ。

笑う顔に影がない。


そして今、わたしは戸惑っている。

ムサイ男達に囲まれ、エールが差し出されているのだ。感謝の言葉とともに。


え?アルコール?

10歳だよ?飲ませたりしてたら、ディアさんに蹴られるよ?


と、思ってたのだけど、同年代くらいの子達が平然と飲んでる!!

さすがにルカとレナちゃんはヤギのミルクだけど。


果実水とかないの?……、ってそうだ。

村レベルだと、水が信用できないんだった。

そらそうだよね、浄水場とかないし。川の水なんて、何が含まれてるかわかんないもんね。

村にいた時は、わたしもヤギのミルクばっかり飲んでたし、学院では魔道具から水、出してたしね。


でも……アルコール……。

前世でも、飲んだことないよ。エールってビールの仲間だっけ?


ためらっていると、周りの男達が飲め飲めと煽ってくる。近くに助けを求められる人がいない。

パパもママもクラリッサ様もディアさんもロリアンさんも、自分達の事に夢中だ。


仕方ない、これも経験だ。

受け取って、一気に呷る。

視界の端で、アマテラスが笑った。


……。

…………。うげぇ〜!美味しくない!!


前世も含め、人生初のアルコールは、苦くてかび臭かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ