第104話 危険物の取扱
「おねーたん、おうぞさま?」
ん〜、だいぶ端折ったね、レナちゃん。ついでに微妙に不敬になりそうだなぁ、王女じゃないからね?ナーキアルの娘じゃないよぉ〜。あなたと同じくエルクラインの娘だよ?
でも、これくらいの子供に伝えるのは難しいな!
「王女様じゃないよ、レナちゃん。王女様のお友達」
「おともらち?」
うん。まあこの歳ならこんなもんでいいだろう。
そうだよ〜ってレナちゃんを膝に載せて頭を撫でる。髪の毛が柔らかくて気持ちいい。
「ルナ、叙爵って……なにしたの?」
おっと、ママ、再起動完了?
それ聞いちゃうか、そうだよね。でも説明しづらい。
「王女様にお茶会に誘われて、王宮の庭園にいったら……」
暗殺者に襲われて、王様と王女様を守りました、何て言ったら、パニックになりそうだよね。
「叙爵されることになった、てへっ!」
「省略しすぎ!!わかんないわよ、それじゃ」
うん、そうだよねぇ。でも、公になってないから、これ、話せないんだよなぁ。
「しっかりお仕えしてたら、王様に褒められて…、何か褒美って言われたから、領主様と相談して、決まった………みたいな?」
ママのジト目。ママもするんだね、それ。
いや、もう、説明はこれが精一杯よ?
「その、『お仕え』っていうのに何かあるのね、まあいいわ。偉くなるのね、凄いわ、ルナ」
ママは、察してくれたようだ。
偉くなりたいわけじゃないけど、喜んでくれるのは嬉しい。レナちゃんも、きゃっきゃっとはしゃいでる。
その声に、パパも再起動完了。
「ところで、ルナ?その武器は一体何?前に作った木剣みたいな形だけど、昨夜の事を考えると、相当な業物なんじゃないのかな?領主様からお借りしてるの?」
今度はこれね?加州清光。
やっぱり、男の人は気になるよね、こういう見たことのない武器。拵からして、目を引くし、高価そうだもんね。
「これは、わたし用に作ってくれたの。領主様のところの鍛冶師さんと細工師さんが。領主様からの褒美ってことでいいのかな?ディアさん」
振り向くとディアさんがゆっくり頷く。
「ルナさんの体格や剣の扱い方に合わせて、当家の職人が、意地と執念と趣味で、実用性、切れ味、丈夫さ、王宮映え、持ち歩きのコーディネートにこだわり抜いた、ルナさんだけの一品です。グラナド伯爵様より下賜された形になっております」
妙なこだわりも足されてない?
腰から鞘ごと抜いて、パパにわたす。
「触っただけで、切れちゃうから、中見るなら気をつけてね」
パパが刀を半分くらい抜く。
真剣な表情のパパ。
イケメン、超イケメン。ママもうっとりしてるし。ルカもあんなふうになるのかな。
「…………」
何か言わない?落ち着かないんだけど。
パパ、刀を鞘に納めて、大きくため息ついた。
なんか、既視感。
あ、初めて加州清光見たわたしと同じ反応だわ。
「ルナ、これのせいだね。昨日、あんなふうになったのは」
心臓の音が大きくなった気がした。
息が止まる。
やっぱり、パパにはわかっちゃうんだな……
「強くなった。そんな風に思ったんだね?これは、ルナの剣の使い方に恐ろしく噛み合うんだと思う。だから夢中になってしまう」
パパは、拵を宝物を見つめるような瞳で見分してる。
「これを作った職人さんは、本当にルナが使う事を考え抜いて、作り上げたんだと思うよ。……でもね」
パパは、綺麗な布で触ったところを拭ってから、わたしに刀を返してきた。
「これを抜くのは、もう少し心が大人になってから。それか、その時、どうしても守らなければいけないものがあるときだけにしなさい」
心が大人……
前世含めると、27歳。走馬灯換算なら、もうおばあちゃんだけど……。
でも、この世界ではわたしは子供なんだ。
身体に引き摺られてるのか、前世が温すぎたのかはわからないけど、この世界の大人はわたしが考えていたよりも、ずっと厳しい。
「うん、ありがとう、パパ。全部、お見通しだね、凄いよ。……うれしい」
ちゃんと見て貰えてるってことだから。
「おねーたん、いじえられたの?よしよし」
いつの間にか涙がでてたらしい。
レナちゃんが、一緒に泣きそうな顔になって、あやしてくれてる。
不甲斐ないお姉ちゃんだね、ふふっ!
ほんのちょっとだけ、レナちゃんに抱きついて甘えさせてもらった。




