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第102話 魔獣騒動の原因は

わたしが引き寄せ、ロリアンさんとディアさんが仕留め、村の男衆が逃さないように囲み、逃げようとした魔獣をパパが狙い撃つ、という形が完成し、デヴォアインプは数を減らしていく。


最後の一匹。

わたしの目の前。飛びついてくる。

右に引いていた加州清光を横薙ぎに振り抜く。

振り抜いた姿勢で、目だけで様子をうかがう。

デヴォアインプが地面に落ち、一瞬の遅れの後、黒い煙とともに魔石を残して消えた。


大きく一息。

血と汗、砂埃で汚れた加州清光を布で柔らかく拭い、鞘に収める。

大丈夫、まだわたしは、平常心でいられてる。


歓声を上げる村人達。

皆、満面の笑みを浮かべてお互いの健闘を讃え合っている。


魔石を拾いにわたし達のところまでくると、何故か皆、表情を固めてわたしを凝視している。


なに?なんかおきてんの?わたし実は大怪我してるとか?

身体みまわしても、そんな感じはないけど。


「あ〜、えっとな、嬢ちゃん。見た目、やべえ」


ロリアンさんがそう言った途端、ディアさんがロリアンさんを蹴り飛ばす。


「淑女に向かって、見た目やべえとはなんですか!……ルナさん、貴方は今、返り血を浴びて、その……見た目がやばいことになってます」


ディアさん!同じ!ロリアンさんと同じこといってるって!


差し出された手鏡を覗き込む。っていうか、この手鏡、どこに持ってたの?


……、あ〜やばいね、これ。

月明りを受けて青白く染まる肌が、返り血で彩られている。涙の後に沿って血が線を引き、ちょっとしたホラーだ。

ゾンビハザード的なゲームなら、即ヘッドショットされても文句は言えない。


パパが建物から降りてくるのが見える。

ちょっと、顔、引きつってない?いや、あれは……怒ってる……。


「ルナ?クラウディアさんに、ちゃんとお礼を言ってね?それから、後でお説教ね?」


あああ、怒ってるパパも好き……、じゃない。

「ごめんなさい……。ちょっと周りが見えなくなってた……」


手鏡を返しながら、ディアさんにも。

「ディアさん、助けてくれてありがとう。考えなしに突っ込んじゃった。止めてくれてなかったら危なかった」


ディアさんは手鏡をスカートの中にしまう。

そこに?!

「いえ、そもそもルナさんをここに立たせている男達が不甲斐ないのです。……後で、しゃがんでた者は前にでなさい。存分に見せてあげます」


ディアさんは、村の男衆を見回して、軽く地面を蹴る。鈍い音に男衆は顔を青くする。

ちょっと揺れたよ?それで蹴ったら死ぬから。



「そ、そそ、それよりも、エルクライン、これだけの数が出てくるのはおかしい。何かこの辺りで異変はなかったか?」


ロリアンさんが、妙に吃ってる。

何?ロリアンさんもスカートの中見たの?


「確証はないですが、一月半程前に大雨で、あの辺りの山が崩れました。その影響かもしれません」


パパの指差す先。

暗くてよくわからない。土砂災害で生息地が崩壊したなら、そういう事もあるのかな。

それならば、近隣の村でも同じ事が起きてるかもしれない。


ディアさんを見ると、にっこり笑って、水で濡らした布でわたしの顔を優しく拭ってくれる。


「ルナさんが心配してることは、何となくわかります。顔に出過ぎですよ?

日が昇ったら周辺と、森の中の調査、近隣の村に使いを出すべきですね。それと、領主様に動いてもらいましょう。こんな時くらい、ちゃんと仕事をしてもらわなければ」


ディアさんが優秀すぎる。

何だろう、クラリッサ様といい、ディアさんといい、グラナド伯爵家は、女達で成り立っているに違いない。


子供の食べこぼしを拭われているかのように、わたしはなす術なく、ディアさんに顔を拭かれ続けながら、未来のクリストフの健闘を祈った。


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