表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
98/106

第97話 悪役貴族、考察する ②

「でも、まったく関係ないってわけじゃない。ラストエリクサーは、霊薬の材料のひとつだと思う」

「というと?」

「村の記録には、アルヴェリスの深部に霊薬があると書いてあったんだろ? だけど実際は置いてなかった。となれば、霊薬そのものじゃくて、材料が置かれてるって考えることもできないかな?」


 訝しげに目を細めるブリジット。


「随分と都合の良い解釈に聞こえるが……続けてくれ」

「アルヴェリスの最下層。あれはどう見ても、誰かが意図的に作った場所だ」


 玉座の間。

 その奥に配置された宝箱。


「ラストエリクサーと、緋々色の騎士。あの二つが材料だと睨んでる」

「階層主が霊薬の材料だと?」

「うん。正確には、あいつの血ね」

「わからん。それがなぜリサの血を採ることに繋がる?」


 ちょうど二人は、リサのいる天幕の前に辿り着く。

 足を止めたマルスは、ブリジットに顔を寄せてそっと耳打ちした。


「あのボス、ヴァーミリオンの血筋だ」


 ブリジットの目が大きくなる。


「玉座の裏に刻まれてた家紋。それが証拠」

「……たしかに、筋は通っているが。いや、しかし」


 困惑するブリジットを横目に、マルスは鼻を鳴らした。


「見える。聖国の闇が見えるぞぉ。こいつぁ、いろいろ掘り下げられそうだ」


 ヴァーミリオン侯爵家は、建国当初から聖王家を陰で支えてきた古い功臣の家門だ。それだけに、表に出せない暗部だって数え切れぬほど抱えているだろう。


「要するに、こうだ。ヴァーミリオンの血と、ラストエリクサー。この二つが揃って、はじめて霊薬になる」

「ラストエリクサーを飲んだリサの血なら、その条件を満たしている……と」

「そういうこと」


 マルスは天幕を見上げ、短く息を吐く。


「あと、霊薬にはたぶん消費期限がある。じゃなきゃ、わざわざ分けて置いておく意味がない。使えるタイミングが限られてるから、ああいう形で残されてたんだと思う」


 ふむ、と顎を押さえるブリジット。

 騎士団長として、マルスの話を鵜呑みにするわけにはいかない。

 だが、もし本当にスージーを救えるのならと、信じてみたいという思いもあった。


「荒唐無稽だと一蹴するのは簡単だが……そなたの話には、不思議と説得力がある」

「そう? 俺もわりと無茶なことを言ってる自覚はあるよ?」

「それでも、試す価値はあるのだろう?」

「もち。俺の勘もそう言ってる」

「ならば、そなたの直感を信じよう」


 マルスに微笑みかけたブリジットは、すぐに頬を引き締め、天幕の布に手をかける。


「問題は……リサだな。あの子を説き伏せるのは骨が折れるぞ」

「説得してみせるさ。人の命がかかってるんだ」


 ことさらに異端を嫌う彼女のことだ。

 いくらスージーのためとはいえ、自らの血を差し出すことには強い抵抗を示すに違いない。


 リサがラストエリクサーを摂取してから、すでに数時間が経過している。

 霊薬の消費期限がどれほどかは定かでないが、もはや一刻の猶予もないことだけは確かだ。


 どう説明するか。

 どう言えば、リサは頷いてくれるのか。


 知恵を絞り出しながら、マルスは天幕の布をくぐった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ