表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
90/106

第89話 悪役貴族、因縁を見る ③

《え? 喋った?》

《いや気のせいだろ》

《人語を解すモンスターなど聞いたこともないぞ》


 マルスの脳内で、何かが噛み合っていく。


「……はは。なるほどね」


 謎に包まれた緋々色の騎士は、考察勢からは不人気だった。

 〝俺〟も動画をいくつか作ったが、作中で語られる情報が少なすぎて深掘りのしようがない。

 他の考察勢は、物語の本筋と無関係として取り上げなかったり、僅かな情報から妄想じみた拡大解釈をしたりするばかりで、核心を突く内容には至らない。


 そんな中、出所不明のある噂がまことしやかに囁かれていた。

 ブリジットとリサをパーティメンバーにした状態で緋々色の騎士にエンカウントすると、特殊イベントが発生する、というものだ。

 眉唾ものであった。誰も実際に目にしていないし、証拠の動画もない。


 そもそもブリジットとリサが同一パーティになる期間は極めて限られており、そのタイミングでランダムエンカウントの緋々色の騎士に出会う確率は宝くじに当たるより低いと言っていい。

 けれど。


「ガチだったってわけだ」


 こんな状況だというのに、口角が上がってしまう。

 人生をかけていたゲームの隠された設定を垣間見て、〝俺〟は興奮していた。

 喜びも束の間、騎士の肩がかすかに動く。


(来る――)


 瞬きする間もない攻撃モーション。

 踏み込みからの横薙ぎを、マルスは『鍔競り』で受ける。


 ――バチィッ!


 火花が弾け、両者が一瞬で押し合いの静止画に変わった。

 しかし今度は、大剣を押し込んでこない。むしろ逆。わずかに引く感触がある。


(引いた? なんで)


 緋々色の騎士がほんの僅かに体勢を変える。その意識はマルスではなく、リサの方へ向こうとしている。


(こいつ、俺を倒す気がないな。邪魔だからどかしたいだけだ)


 つまり、最初から一貫してリサを狙っている。

 緋々色の騎士の喉奥から、再び音が漏れた。


〈ヴァーミリオン……!〉


 今度は、はっきりと。

 ブリジットの顔色が変わる。


「……なぜ、リサの名を」


 緋々色の騎士は答えない。だが、鍔競りの圧が変わった。怒りが混じる。感情の熱ではなく、凍りつく憎悪のような冷たい怒り。


(岩みたいに重い。けど、さっきとは違う)


 押し潰しに来ない。力の流れが、ほんの僅かに外へ向いている。マルスを崩し、リサへ斬りかかるつもりだ。


「つれないなぁ……! お前の相手は俺だって言ってるだろっ!」


 マルスはエリマルくんを捻り上げるように持ち上げた。接点を支点にし、騎士の大剣をわずかに跳ね上げる。

 緋々色の騎士の上体が崩れ、ほんの僅かに浮いた。


 がら空きの胴を狙って、エリマルくんをフルスイング。

 だが崩されて尚、騎士は防御の反応を見せる。


(だよな)


 重々分かっている。ただ崩しただけで攻撃を喰らってくれるほど、甘い相手じゃない。

 だからフルスイングはフェイントだ。胴を狙うと見せて、マルスはそのまま身体を一回転。


 『とどめの一撃』。


 エリマルくんは軌道を変え、騎士の防御をすり抜けて顔面に直撃した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おかえり! リサの反応がこの世界の一般的で、丸の戦闘は異端と言われても仕方ない戦闘能力なんだよな。懐疑的だったのがエリシア、鰤が馴染みすぎるんだよww ヴァーミリオン関係はこれから掘り下げて行くんだろ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ